愛しさが溢れる、犬と人の関係。マイラ・カルマンの絵本が日本に! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

愛しさが溢れる、犬と人の関係。マイラ・カルマンの絵本が日本に!

『カーサ ブルータス』2018年10月号より

ニューヨークを代表するイラストレーター、マイラ・カルマン。彼女の名作絵本に待望の日本語版が登場。犬派も、猫派も必読です!

「マイラ・カルマンの絵は、ニューヨーカーにとっては懐かしさであり、この街を外から眺める人にとっては憧れの象徴なんです」と話すのは、原題『Beloved Dog』を日本語版『たいせつなきみ』に翻訳したデイヴィッド・G・インバーと吉田実香。『カーサの猫村さん』の英語翻訳を担当している二人だ。

例えば日本人が、知らず知らずのうちに和田誠の仕事に親しんでいるように、アメリカ人、ことにニューヨーカーならば一度は目にしたことがあるマイラのイラストレーション。彼女は文芸誌『ニューヨーカー』の表紙絵をたびたび手がけ、『ニューヨーク・タイムズ』等にもイラストやエッセイを長年寄稿してきた。伸び伸びとしたタッチと豊かな色彩。その中に知的で洗練された空気を秘める彼女の絵は、ニューヨークの街そのものとも言えるだろう。
マイラは雑誌や広告の仕事の他に、数々の絵本も発表している。今回の『Beloved Dog』も全米で愛されているベストセラーだ。本の前半にはマイラと愛犬・ピートの物語が綴られている。

マイラの夫・チボーが病に倒れたことをきっかけに家族となったピート。子どもの心を癒すためにと飼い始めた時、実はマイラは大の犬嫌いだったそうだ。それなのに、ピートは瞬く間にマイラの心を掴んでしまう。ピートのいた温かな日々を綴った絵と言葉は、犬を飼ったことのある人ならば誰もが深く共感できるはずだ。

マイラは大学で文学を専攻していた。そんな彼女の言葉のセンスを、日本語でも楽しめるよう試行錯誤したというデイヴィッドと吉田実香。人生への示唆とニューヨーカーらしいウィットに富んだ表現は、自然な日本語へと置き換えられ、繰り返し読みたくなる奥行きある文章になっている。マイラ独特の手書き文字は、イラストレーター赤井稚佳が同じく手書きの日本語で表現。本のサイズもレイアウトも、原書の空気を写し取った仕上がりだ。

物語の中で「今この瞬間を精一杯いつくしみ、無償の愛を伝えることによって、人生は輝きをもたらす。犬は常にそう気づかせてくれます」と綴るマイラ。ページを繰るたび、自分の側にいた犬を思い出し、感謝の気持ちが溢れ出す。犬からもらった大きな愛を世界の人々と分かち合える一冊だ。
マイラ・カルマンから、日本の皆さんへのミニメッセージです!

『たいせつなきみ―犬が教えてくれたこと―』 

前半は愛犬ピートとマイラの自伝的エッセイ。後半は雑誌等の仕事から犬の登場する作品をオムニバスで。ニューヨークの空気を閉じ込めたアートブックでもある。2,000円(創元社)。

このお利口さんが相棒のピートよ!

Maira Kalman 1949年生まれ。イラストレーター、デザイナー。70年代より雑誌等で活躍。デヴィッド・バーンやケイト・スペードなど交流も幅広い。夫と始めたデザイン事務所〈M&Co.〉が生んだ内側に青空を描いた傘《スカイアンブレラ》も有名。