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NIGO®と片山正通が語るNOT A HOTEL。
『カーサ ブルータス』2025年2月号別冊付録より
January 16, 2025 | Architecture, Design, Travel | PR | photo_Satoshi Nagare text_Takahiro Tsuchida
ファッションとインテリアというそれぞれのジャンルにおいて、同時代的に東京のシーンを牽引してきたNIGO®とWonderwall®/片山正通。彼らの活動の延長線上に、NOT A HOTELの新プロジェクトはある。
■ 音楽の趣味が同じだから、コラボレーションが始まった。
1990年代後半に出会い、専門とする領域を超えて充実したコラボレーションを行ってきたNIGO®と片山正通。それぞれにキャリアを積み上げてきた二人が、ほぼ同時期にNOT A HOTELを手がけることになった。互いの創造性は、今もなお刺激になっているようだ。
── お二人が最初に出会ってから、もう四半世紀が経っていますよね?
片山 初めてNIGO®さんに依頼されたショップ〈NOWHERE〉の完成が1998年なので、最初に会ったのは97年ですね。僕がWonderwall®を始める前、H.Design Associatesという会社だった頃です。
NIGO® 当時始めたブランドをもっと本格的にやろうと思い、内装を専門のデザイナーに頼むことにしたんです。海外の方や大御所の方も候補でしたが、片山さんの事務所に打ち合わせに行ったら、僕が持っていた〈バング&オルフセン〉のオーディオに、自分と同じようなCDが山積みになっていた。これくらい趣味が同じなら話も伝わりやすいと思ってお願いしました。
片山 僕の数少ない仕事を見て、声をかけていただいたのを感謝しています。あれが自分の本格的なキャリアのスタートになりました。その頃の僕は「デザインしたい」欲に溢れていて、とにかく自由に作りたいんだけど、そんな仕事なんてなかった。そんな中でNIGO®さんは自由にやらせてくれました。とてもうれしかった反面、やがて自由であることの恐ろしさに気づき、なかなか進められず、パニックに陥りかけたのですが、振り切って突き詰めたデザインを提案したところ、気に入ってもらえたんです。あのときはうれしかったですね。現在の自分を支えてくれる座標軸のような仕事になっています。
NIGO® 僕も人に仕事を頼むのに慣れてなかったんです。だから提案してもらったデザインの通り「お任せでお願いします」って。施工中に現場に行くこともなかったけど、完成したのを見て、感動しました。
片山 打ち合わせでよく覚えているのは、「たとえ商品が並んでいなくても、お客さんに来たことを後悔しない空間にしてほしい」という言葉です。プレッシャーでしたが、デザイナー冥利に尽きました。お店はすごい人気で、実際にそういう空間になった。ラックにTシャツが3枚しか掛かってなかったり(笑)。
NIGO® それも素人だったからです(笑)。その後も僕からはアイデアをちょっと投げるだけで、それを元にできるだけ自由にやってもらいました。
片山 NIGO®さんのお店は国内外で60軒以上もデザインしてきました。そのたびに喜んでほしかったし、やがて世間が真似をするようになってきたので、毎回新しいことにも挑戦していきました。
1990年代後半に出会い、専門とする領域を超えて充実したコラボレーションを行ってきたNIGO®と片山正通。それぞれにキャリアを積み上げてきた二人が、ほぼ同時期にNOT A HOTELを手がけることになった。互いの創造性は、今もなお刺激になっているようだ。
── お二人が最初に出会ってから、もう四半世紀が経っていますよね?
片山 初めてNIGO®さんに依頼されたショップ〈NOWHERE〉の完成が1998年なので、最初に会ったのは97年ですね。僕がWonderwall®を始める前、H.Design Associatesという会社だった頃です。
NIGO® 当時始めたブランドをもっと本格的にやろうと思い、内装を専門のデザイナーに頼むことにしたんです。海外の方や大御所の方も候補でしたが、片山さんの事務所に打ち合わせに行ったら、僕が持っていた〈バング&オルフセン〉のオーディオに、自分と同じようなCDが山積みになっていた。これくらい趣味が同じなら話も伝わりやすいと思ってお願いしました。
片山 僕の数少ない仕事を見て、声をかけていただいたのを感謝しています。あれが自分の本格的なキャリアのスタートになりました。その頃の僕は「デザインしたい」欲に溢れていて、とにかく自由に作りたいんだけど、そんな仕事なんてなかった。そんな中でNIGO®さんは自由にやらせてくれました。とてもうれしかった反面、やがて自由であることの恐ろしさに気づき、なかなか進められず、パニックに陥りかけたのですが、振り切って突き詰めたデザインを提案したところ、気に入ってもらえたんです。あのときはうれしかったですね。現在の自分を支えてくれる座標軸のような仕事になっています。
NIGO® 僕も人に仕事を頼むのに慣れてなかったんです。だから提案してもらったデザインの通り「お任せでお願いします」って。施工中に現場に行くこともなかったけど、完成したのを見て、感動しました。
片山 打ち合わせでよく覚えているのは、「たとえ商品が並んでいなくても、お客さんに来たことを後悔しない空間にしてほしい」という言葉です。プレッシャーでしたが、デザイナー冥利に尽きました。お店はすごい人気で、実際にそういう空間になった。ラックにTシャツが3枚しか掛かってなかったり(笑)。
NIGO® それも素人だったからです(笑)。その後も僕からはアイデアをちょっと投げるだけで、それを元にできるだけ自由にやってもらいました。
片山 NIGO®さんのお店は国内外で60軒以上もデザインしてきました。そのたびに喜んでほしかったし、やがて世間が真似をするようになってきたので、毎回新しいことにも挑戦していきました。
■ 香港の〈HUMAN MADE®〉で8年ぶりのコラボレーション。
── 2010年にスタートした〈HUMAN MADE®〉は、NIGO®さんがインテリアを手がけた店舗も多いですよね。18年に自身のアトリエをデザインした頃からでしょうか。
NIGO® そうですね。でも基本的にこれといったデザインはしていません。お店ならレジの位置を決めて、壁はこうしよう、床はこうしようという感じ。空間を作り込む店が主流な時代だったので、あえて本来の空間をそのまま残すスタイルにしました。今は時代が変わって、みんながそういうふうになってきましたね。
片山 NIGO®さんは初めて会った頃から何度も引っ越して、そのたびにイームズ、プルーヴェ、ジャンヌレなど次々に収集していました。そうした経験をすべて“筋肉”にして、それが積み重なった上で空間を作っている。だから自分で作るものも、僕らに提案することも、リアルなんです。「こういうものがいい」っていう言葉に誰も真似できない説得力がある。
── 昨年オープンした香港の〈HUMAN MADE REPULSE BAY〉は、片山さんが久しぶりにNIGO®さんのブランドのショップをデザインしました。
NIGO® 前のブランドの経験もあって一から始めた〈HUMAN MADE®〉が成長して、僕も成長して、改めてどなたかに空間をお任せしたいタイミングになりました。オンラインで買うのが主流の時代、逆に実店舗はとても重要だと思っています。自分以外で〈HUMAN MADE®〉の店をデザインするとしたら、片山さん以外は思い浮かびませんでした。
片山 NIGO®さんのお店のデザインは約8年ぶりで、僕にとってはまたプレッシャー。最初の時のような恐怖を感じました。僕自身の知見も広がりましたが、それをさらに超える成果を出したいし、NIGO®さんにも喜んでもらいたい。〈HUMAN MADE®〉が入るのは、レパルスベイにあるかつてホテルだったコロニアル様式の建物で、古き良き香港らしさを色濃く残しています。その雰囲気からインテリアを発想していきました。
NIGO® 商売を優先して考えるなら香港の中心部のほうがいいんですが、〈HUMAN MADE®〉は今までも古い建物の中でやってきたので。
片山 〈HUMAN MADE®〉の活動をずっと見ていて、あえて面倒くさいことに価値を見いだすという考え方がとても素敵だと感じていました。古いものと新しいものの融合に未来があるというのがブランドのコンセプトで、これはディテールやマテリアルに限定されない概念。それをレパルスベイの歴史に重ねない手はないので、この場所に100年前〈HUMAN MADE®〉があったというコンセプトを考えました。NIGO®さんも「これがいいです」って。
NIGO® 僕には絶対にできないデザインです。オープン後は驚くほど皆が「すごくいいね」って言ってくれています。
片山 満足してもらってよかったです。NIGO®さんとの仕事はやっぱり気が引き締まります。
NIGO® 久しぶりの片山さんとのプロジェクトとして喜んでくれる人も多いんです。このタッグを知らない人も増えたけど、昔のことまで調べてくれて、また今やっているのが面白いらしい。
片山 NIGO®さんファンのスタッフがいるんですが、また僕が一緒に仕事をすると聞いて胸熱ですと訴えてきたんです。ジェネレーションを超えて、繋がりが生まれるのはうれしいですね。
── 2010年にスタートした〈HUMAN MADE®〉は、NIGO®さんがインテリアを手がけた店舗も多いですよね。18年に自身のアトリエをデザインした頃からでしょうか。
NIGO® そうですね。でも基本的にこれといったデザインはしていません。お店ならレジの位置を決めて、壁はこうしよう、床はこうしようという感じ。空間を作り込む店が主流な時代だったので、あえて本来の空間をそのまま残すスタイルにしました。今は時代が変わって、みんながそういうふうになってきましたね。
片山 NIGO®さんは初めて会った頃から何度も引っ越して、そのたびにイームズ、プルーヴェ、ジャンヌレなど次々に収集していました。そうした経験をすべて“筋肉”にして、それが積み重なった上で空間を作っている。だから自分で作るものも、僕らに提案することも、リアルなんです。「こういうものがいい」っていう言葉に誰も真似できない説得力がある。
── 昨年オープンした香港の〈HUMAN MADE REPULSE BAY〉は、片山さんが久しぶりにNIGO®さんのブランドのショップをデザインしました。
NIGO® 前のブランドの経験もあって一から始めた〈HUMAN MADE®〉が成長して、僕も成長して、改めてどなたかに空間をお任せしたいタイミングになりました。オンラインで買うのが主流の時代、逆に実店舗はとても重要だと思っています。自分以外で〈HUMAN MADE®〉の店をデザインするとしたら、片山さん以外は思い浮かびませんでした。
片山 NIGO®さんのお店のデザインは約8年ぶりで、僕にとってはまたプレッシャー。最初の時のような恐怖を感じました。僕自身の知見も広がりましたが、それをさらに超える成果を出したいし、NIGO®さんにも喜んでもらいたい。〈HUMAN MADE®〉が入るのは、レパルスベイにあるかつてホテルだったコロニアル様式の建物で、古き良き香港らしさを色濃く残しています。その雰囲気からインテリアを発想していきました。
NIGO® 商売を優先して考えるなら香港の中心部のほうがいいんですが、〈HUMAN MADE®〉は今までも古い建物の中でやってきたので。
片山 〈HUMAN MADE®〉の活動をずっと見ていて、あえて面倒くさいことに価値を見いだすという考え方がとても素敵だと感じていました。古いものと新しいものの融合に未来があるというのがブランドのコンセプトで、これはディテールやマテリアルに限定されない概念。それをレパルスベイの歴史に重ねない手はないので、この場所に100年前〈HUMAN MADE®〉があったというコンセプトを考えました。NIGO®さんも「これがいいです」って。
NIGO® 僕には絶対にできないデザインです。オープン後は驚くほど皆が「すごくいいね」って言ってくれています。
片山 満足してもらってよかったです。NIGO®さんとの仕事はやっぱり気が引き締まります。
NIGO® 久しぶりの片山さんとのプロジェクトとして喜んでくれる人も多いんです。このタッグを知らない人も増えたけど、昔のことまで調べてくれて、また今やっているのが面白いらしい。
片山 NIGO®さんファンのスタッフがいるんですが、また僕が一緒に仕事をすると聞いて胸熱ですと訴えてきたんです。ジェネレーションを超えて、繋がりが生まれるのはうれしいですね。
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