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〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉で開催中。垂れ幕と映像に導かれる、謎めいた家族の物語。
『カーサ ブルータス』2025年2月号より
January 15, 2025 | Art, Fashion | PR | photo_Makoto Ito text_Mari Matsubara Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris
オペラや古典悲劇の様式と映像を組み合わせた展示が話題のドイツ人アーティスト、ウラ・フォン・ブランデンブルクの個展が、〈エスパス ルイ・ヴィトン大阪〉で開催されています。
合理主義を疑い、人間性の回復を願う夢幻劇を体験。
今回展示された2点の作品はどちらも垂れ幕と映像を組み合わせたインスタレーションだ。会場に入ると、まず《ジングシュピール(歌芝居)》と名づけられた作品へ。白、黒、ブルー、ピンクの布をはぎ合わせた背の高い垂れ幕で仕切られた通路をたどると、スクリーンといくつもの形の異なる椅子が置かれた空間に出る。映し出されたモノクロ映像はル・コルビュジエの代表作〈サヴォワ邸〉を舞台に繰り広げられる家族の物語だ。無声映像で、俳優の口の動きに合わせて、アーティスト自身が歌うオペラ風の歌声が重ねられている。
もう一つの作品《コーアシュピール(合唱劇)》も白地に黒で自然の風景が描かれた螺旋状の垂れ幕の先にスクリーンが現れる。森の中で3世代4人の男女がテーブルや寝椅子と共に過ごしているところへ、一人の旅人が現れる。モノクロ映像にはギリシャ悲劇のコロス(合唱隊)のような美しい歌声が重なる。両作品ともストーリーは不明瞭なのだが、幻想的で謎めいた感慨が迫ってくる。
「幕というのは鑑賞者を現実世界から作品の中へと移送するための装置」だと、舞台美術を学んだ後にアートの道へ進んだウラ・フォン・ブランデンブルクは語る。
「幕というのは鑑賞者を現実世界から作品の中へと移送するための装置」だと、舞台美術を学んだ後にアートの道へ進んだウラ・フォン・ブランデンブルクは語る。
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