Good TOOLS For Me|愛用のうちわを教えてください。

3人のゲストに愛用の日用品を教えてもらうコーナー。今回はうちわ。思い出話にも花が咲きました。

祇園祭の山鉾のうちわ。

山鉾によって、うちわの絵柄や素材は様々。「月鉾」なら兎と月の浴衣柄、「長刀鉾」は鉾の絵に竹製の柄、と集めるのも楽しい。

祭り囃子の練習が路地のあちこちから聞こえだす初夏の夕刻がとても好きだ。鉾町に住む人々は小学生時分からお囃子を継承するために囃子方に入り、祭り間近の夜に山鉾町会所などでコンコンチキチンと練習をし始める。私はお囃子が聞こえてくると、今年も始まったな! と嬉しくなり、町内の山「保昌山」のうちわを出して店内に飾るのが夏の恒例だ。

うちわは山鉾にちなんだ柄や形、素材でできている。保昌山は“恋物語の山”といわれ、平井保昌が恋する和泉式部に紅梅の枝を手折って捧げ、成就したことから、うちわには縁結びの梅が描かれ、ちまきにも町内のおばあちゃんたちがせっせと手作りした紙の梅が付く。うちわは小さめの丸形で、勝手に「乙女うちわ」と呼んでいるのだが、浴衣姿の女性たちが満開の梅うちわを帯に差して歩く後ろ姿は愛らしい。

暑い京都に生まれ育った祖母はうちわや扇子をよく使い、外でも家でも風が止んだらそれで風を起こした。この夏は祖母を真似てちょっと小ぶりな梅うちわを竹籠に忍ばせて持ち歩こう。

林 七緒美

はやしなおみ 京都生まれ京都育ち。烏丸松原にて器と道具・喫茶室〈木と根〉を営む。生活をちょこっと豊かにする日用調度品、作家物を主に扱う。催し情報はinstagramで。