DESIGN
土田貴宏の東京デザインジャーナル|名作の血統を継ぐグルチッチの《OK》。
| Design | casabrutus.com | text_Takahiro Tsuchida
コンスタンティン・グルチッチの新作ランプ《OK》が日本フロスのショールーム〈FLOS SPACE〉で展示されている(~2月20日)。その特徴は、ワイヤーを使った独特の構造の継承にある。
1972年、イタリアの照明ブランド〈フロス〉は、アキッレ・カスティリオーニがデザインしたランプ《パレンテージ》を発売した。これは天井から吊るしたワイヤーに湾曲させたパイプを組み合わせ、光源の位置や向きをフレキシブルにした画期的なペンダントライトだった。ドイツ人デザイナーのグルチッチが新たに手がけた《OK》は、その個性的な構造を受け継ぎながらLEDを採用し、現代的にアップデートしたものと位置づけられる。360°回転するディスク状の光源によって同様の機能をスマートにまとめ上げ、調光機能を加えた。また《パレンテージ》は天井高に合わせてワイヤーをカットする仕組みだが、《OK》はワイヤーに数十cmの余裕を持たせられるため、設置場所を変えても支障が起きにくい。
なお天井にワイヤーを固定するローゼットというパーツは《OK》も《パレンテージ》のものを流用。そんなところもオリジナルを尊重するグルチッチの配慮を感じさせる。そもそも1980年代半ば、木工家具を学んでいたグルチッチがデザイナーを志したのは、姉から贈られたカスティリオーニの展覧会カタログに感銘を受けたのがきっかけだったという。また生前のカスティリオーニも、自身の数少ない精神的後継者としてグルチッチを高く認めていた。そんな人間関係と、両者と縁の深い〈フロス〉というブランドの柔軟な姿勢から、この新しくも歴史をふまえたプロダクトが生まれた。他者には踏み込めない領域にあるデザインとも言える。
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土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。
