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〈NONFICTION DAIKANYAMA〉がオープン。創業者チャ・ヘヨンに聞く“リチュアル”の哲学。

April 1, 2025 | Fashion, Design, Food | PR | photo_Kazufumi Shimoyashiki text_Ku Ishikawa

韓国発のライフスタイルビューティーブランド〈NONFICTION〉が、2025年3月、東京・代官山に日本初となる店舗をオープン。「〈NONFICTION〉は、ふと立ち止まり、自分自身と向き合い、自分を大切にするために生まれたブランドです」と、創業者のチャ・へヨン。だからこそ、選んだのが代官山。歩くスピードが自然と緩むこの街は、彼女が20代の頃によく訪れていた、静けさと余白のある場所でした。

店舗デザインにおけるポイントは、「リチュアル」と「クラシック」。入って左側の売り場では、〈NONFICTION〉の香水の全ラインナップが並ぶ。

実際にハンドソープを試せるのは旗艦店ならではの体験。ロゴの入ったハンドタオルも。

〈NONFICTION〉で定番的に使われている美しいアートワークは店内の壁にも。

プレゼントに添えるメッセージカードを用意した、レタールーム。カードは「happy birthday」「congratulations!」「thank you」の3種。

代官山駅前、白く静かな２階建ての建物。歩いていたときに偶然出会ったというこの建物は、へヨンに東京との結びつきを思い出させた。

「20代の頃、東京の街にどっぷりと浸っていた私にとって、代官山は特別な空気と思い出を持つ場所。比較的人の流れが少なく、静かな雰囲気の中に個性的なショップが点在し、日本で少し息抜きをしたいときに訪れる街でもありましたね」

街の過ごし方が、ブランドのコンセプトともぴったり合い、代官山は日本初の店舗を構えるのにふさわしいと感じたという。改装にあたっては、シンプルな建物の魅力をできる限りそのまま残した。ドアノブやフレーム、光の入り方まで。

「日本での最初の店舗として、伝統的な日本の要素を取り入れた東京らしいデザインにするべきか、それともソウルのシグネチャーストアと同様に、温かく、心地よく、落ち着ける空間をそのまま表現するべきか、慎重に検討しました。〈NONFICTION〉はまだ創業5年の若いブランドなので、まずは韓国と一貫したお店の雰囲気を大切にし、クラシックな雰囲気を基調とすることに。木材をメインに、白い壁を組み合わせることで、ミニマルな空間を演出しています」

1階の右手はルームスプレーや、セレクトされた生活雑貨が並ぶ “ホームリチュアル “。左手は香水やヘアケア、ボディケアのアイテムが置かれた “ボディリチュアル” のスペース。すべてが「リチュアル」というキーワードでつながっている。

2018年にロエベ財団クラフトプライズのファイナリストに選出された、韓国のテキスタイルアーティスト、チャン・ヨンスンによる壁付けのオブジェ。

ニューメキシコ州アルバカーキ出身アーティスト兼デザイナー、マデライン・コーヴェン。ヤギ革を使用したシェードは手縫いで仕上げられている。

「East Smoke」というスタジオを主宰し、陶芸の新たな可能性を探求するチョ・ヒジン。手捻りで成形されたこの紋様は、韓国の伝統建築に用いられる瓦から想起されたそう。カップ 11,660円、プレート 14,300円。

韓国の伝統的な紙・ハンジを使用した団扇は、手作業で紙を漉き、一枚ずつ深い緑色に染めたあと、アクリル絵の具を散らしている。4,950円。

これまで30mlと100mlのみの展開だったフレグランスだが、50mlのボトルは新発売。各16,500円。棚にあるオブジェは、伝統的なシルクを用いるテキスタイルアーティスト、チョン・ヒョンジの作品。

ガラス繊維の天板を使用したテーブルはミンジェ・キムが手がけた。NYのインテリアデザイン事務所「ジャンカーロ・ヴァレ」出身で、遊び心溢れる家具づくりを得意とする。

店の空間には、アートやクラフトへの深い敬意がにじんでいる。へヨンが最も気に入っているのは、ウィンドウに飾られた、ミンジェ・キムが手がけたファイバーグラス製のテーブル。ブランドのために制作された一点もので、日が落ちると内部のランプが淡く光り出す。アーティスト自身が “ランプのふりをしたテーブル” と呼ぶこのオブジェは、機能と芸術の境界線を曖昧にする。

入口に一歩足を踏み入れるとすぐに目に入る、照明アーティスト、マデライン・コーヴェンの作品もまた、整った空間に遊び心のあるノイズを与えるアクセントとして存在する。天然繊維のアバカを藍染めしたチャン・ヨンスンのテキスタイルは韓国の伝統技法であり、5年間にわたって〈NONFICTION〉の店舗什器を支えるユン・ラヒのアクリル作品やディスプレイもそこかしこに。パッケージのスペックル柄とリンクする、キム・ヒョンジュの団扇には、韓国伝統の紙・ハンジが使われている。

こだわりは、2階のトイレにまで及ぶ。花びらのような照明は建築家ニック・ポーの作品。へヨンは「トイレもまた、自分自身をケアするための神聖な時間を過ごす場所」と語る。