ARCHITECTURE
水戸芸術館の展示室が藤森照信のカフェに! 縄文建築でくつろげます。
March 29, 2017 | Architecture | casabrutus.com | photo_Manami Takahashi text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
屋根に草や木が生えていたり、壁に炭や茶碗のかけらが貼られている。そんな不思議な「縄文建築」をつくっている藤森照信の個展が水戸芸術館で開催中! 会場で本人を直撃しました。
「藤森照信のつくる建築は伽の国の魔女の栖のようにみえるけれど、これはまっとうな建築史研究者が、ある日突然、気が狂ったようにつくりはじめたモノだ、ということに注意してください。」展覧会の最初によくテキストが書かれているけれど、磯崎新が藤森に捧げた文章はいきなりこんな調子で始まる。そんなに危険な建築なのか? とおそるおそる中をのぞくとまるで座る人の個性がそのまま形になったような可愛らしい椅子や、色とりどりのモザイクタイルがつけられた“すだれ”が。「魔女の栖」と言っても、とって食われることはなさそうだ。むしろもっと楽しそうな、「魔法の国」的なスペースが広がる。
藤森照信は建築史家として『丹下健三』や『昭和住宅物語』などの著書を発表する傍ら、「建築探偵」として近代建築を観察し、赤瀬川原平らと「路上観察学会」を立ち上げて道端のヘンなものを収集してきた。彼が〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビューしたのは1991年、45歳の時のことだ。以来四半世紀、木や土、草など自然素材を中心に、懐かしいけれど見たことのない建築物を生み出している。「野蛮ギャルド」「縄文建築」と呼ばれるその建物は人々を驚かせながらも静かに増殖を続け、進化を遂げてきた。水戸芸術館の個展では彼の建築がどんなふうに自然をとりこみ、周囲に溶け込んでいるのかを見せてくれる。
最初の展示室は藤森いわく「美術館とか公共建築とか、普通の建築を集めました」というスペースだ。普通の、と言われてついふんふんと聞き流してしまいそうになるが、もちろんあまり普通ではない。〈多治見市モザイクタイルミュージアム〉には屋根に大きな穴が空いているし、〈ラムネ温泉館〉のとんがり屋根からは木が生えている。鉄とガラスとコンクリートでできた近代建築から時代を逆戻りしている。でも、それがかえって新しい。椅子は全国のフジモリ建築から集めてきたもの。実際に座って、座り心地を確かめながら展示が見られる。
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