エルメスとマルジェラ。伝統と前衛が交差した時代。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

エルメスとマルジェラ。伝統と前衛が交差した時代。

エルメスのデザイナー就任時の創作活動に着目したマルジェラの回顧展はモード史の視点からも必見です。

エルメス2000年のコレクションより。ダブルフェースのノーカラージャケットは丸めて革のベルトで持ち運び可能。 Hermès, L/Z 2000 ‘Le porte vêtement’, Left image: Monica Ho, Right image: Marina Faust
マルタン・マルジェラがエルメスのウィメンズコレクションのディレクターを務めていた1997年から2003年までの期間にスポットを当てた回顧展が、アントワープのモード美術館で開催される。

マルジェラはデビュー以来、自身のメディア露出を徹底して拒否し続け、その素顔は謎に包まれている。それは服の製作においてアノニマス性を重んじ、ロゴやデザイナー自身が前に出るよりも服そのものに語らせること、創作は個人プレーではなくチームワークによって成り立っていること、服作りを支える職人仕事をリスペクトするという彼自身のマニフェストの一環なのだ。最後の一点は特にエルメスの社風-手仕事への敬意-とも一致する。

マルジェラによるエルメスの最初のショーは、エルメスのお家芸ともいえるカラフルなプリントやスカーフも、飾りボタンも革ベルトも排除したモノトーンの静かな印象で、賛否両論巻き起こった。マルジェラはエルメスの伝統を破壊したのだろうか? 
エルメス2001-2002AWコレクション。カシミアシルクのノーカラージャケットとパンツ。 Hermès A/W 2001-2002 Collarless jacket and pants in cashmere and silk, high-neck pullover in cashmere and silk, scarf ‘Losange’ in silk crêpe, Le Monde d’Hermès, Photo: Ralph Mecke
例えばゆったりとしたノーカラージャケットは、身体の自由な動きをサポートし、前身頃をかき合わせる手のしぐさにエレンガンスを宿した。若さに照準を置く他ブランドとは一線を画し、成熟した女性の身体のラインとリアルな活動を尊重したのだ。馬具製作をオリジンとするエルメスの信条“エレガンスとはムーブメント(動き)の中にある”に完全に呼応している。マルジェラはエルメスにラディカルなものを持ち込んだが、根っこのところで両者のDNAは通じていたのだ。