熊彫りとして生きた、アイヌの翁の作品群。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

熊彫りとして生きた、アイヌの翁の作品群。

『カーサ ブルータス』2017年11月号より

民芸品である木彫り熊を作り続ける藤戸竹喜。作品を自然の中で写した『熊を彫る人』が出版されました。

−熊を彫り始めたのは、いつ頃からですか?
藤戸 11歳の頃。親父が熊彫りであちこちを旅しながら熊を彫って暮らしていたから、その木っ端を使って見よう見まねで始めたのが最初。彫って、親父に渡しても、気に入らないものはストーブに焚べてしまう。そうやって少しずつ彫れるようになっていったの。もう80歳を超えたけど、ずっと彫っている。


−アイヌにとって熊を彫ることはどんな意味があるのでしょう?
藤戸 アイヌのお祭りに使うイクパスイ(捧酒箸)や頭にかぶるサパンペっていうものにずっと昔から熊が彫り込まれていたの。熊は、アイヌの言葉でカムイ。カムイっていうのは神様っていう意味だ。カムイのためにずっと作っていたものを、観光の土産物としても彫り始めたっていうのかな。旭川には陸軍の第七師団とか、戦後には進駐軍が来て、アイヌのエカシ(翁)と写真を撮ったり、アイヌが使っている祭祀のためのものをお土産に持って帰ったりしていたからね。八雲(南部・渡島半島に位置する町)が北海道の木彫り熊の発祥と言っている人がいるけど、それは違う。アイヌは昔から熊を彫っていたんだから。


−狼の作品も多くありますが、特別な思いがあるのでしょうか?
藤戸 17歳のときに北大の植物園に親父に連れて行かれた。そこにエゾ狼の剝製があって、そのオンボロ狼がジッと俺のことを見てた。そのときに、いつか狼を作りたいって思った。親父に狼を彫りたいって言ったら、「お前、熊彫りだべ? 熊も一人前に彫れないくせに何を言ってるか!」ってものすごく怒られた。でも、いつかはってずっと思ってた。アイヌにとってはもちろん狼もカムイ。オンルプシカムイっていう呼び方をする人もいて、それは狩りをする神様っていう意味だ。狼が生態系を守っていたことをアイヌはわかっていたんだよ。狼を彫る埋もれ木って、土に埋まっていたタモとか、そういう古い木には土の色が染み込んで灰色なんだ。そうやって、絶滅してしまった狼を蘇らせたかったのかもしれない。
藤戸竹喜
ふじとたけき 1934年北海道美幌町生まれ。旭川で育ち、15歳で阿寒湖に。64年に独立して民芸店〈熊の家〉を構え、その世界観を確立していく。12月17日まで、札幌芸術の森美術館にて個展を開催中。来年には、大阪の国立民族学博物館での展示が予定されている。

『熊を彫る人』

藤戸竹喜の作品を阿寒湖周辺の自然の中で写し、丁寧にまとめた写真集。四季を通した風景と一人の熊彫りの人生、そしてアイヌの哲学が渾然と記されている。質感のある装丁は、田中義久が担当。写真:在本彌生、文:村岡俊也。2,300円(小学館)。

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