ART
モチーフは暗闇に浮かび上がるシャンデリア。小野祐次の個展が六本木で開催へ。
| Art | casabrutus.com | text_Yoshio Suzuki editor_Keiko Kusano (c)Yuji Ono, courtesy of ShugoArts
暗闇に浮かび上がるシャンデリア。かつてこのように撮られた写真は見たことがない。これはどのようにして捉えられたものなのか。どのような意味をもって発想し、いかなる手段によってこのフォトグラフィ(=光画)を得、いま我々の目前に届けられているのであろうか。この写真家は見えない絵画、輝かないシャンデリアを写真作品にしてきた。
シャンデリアというものは本来、華麗に煌き、部屋を照らすものである。しかし、この写真はどうも様子が異なる。単に被写体としてシャンデリアを撮影したのではなく、それを媒介として、写真にとって光とはなにかを考え、指し示してくれる作品になっているのだ。その際、「写真」というより、「フォトグラフィ(photo=光、graph=画)」として考えるとより明解である。
作者の小野祐次は1963年、福岡県生まれ。大学卒業後、渡仏。現在もパリを拠点に活動を続けている。この「ルミネソンス」と並行して制作している「タブロー」シリーズでは16世紀から印象派までの名画を自然光のもとに大判カメラを使い、モノクロームで撮影し、絵そのものではなく作品が反射する光を見るという大胆な表現を行っている。そこでは、絵画の主題、色彩などはほとんど隠れ、画家が選んだマテリアル、画家が残した筆跡が主張をすることになる。
作者の小野祐次は1963年、福岡県生まれ。大学卒業後、渡仏。現在もパリを拠点に活動を続けている。この「ルミネソンス」と並行して制作している「タブロー」シリーズでは16世紀から印象派までの名画を自然光のもとに大判カメラを使い、モノクロームで撮影し、絵そのものではなく作品が反射する光を見るという大胆な表現を行っている。そこでは、絵画の主題、色彩などはほとんど隠れ、画家が選んだマテリアル、画家が残した筆跡が主張をすることになる。
この「ルミネソンス」ではシャンデリアを自光させず、自然光もなく、あえて小野が計算し、巧んだ光のみを当てて撮影している。「タブロー」シリーズが繊細な光の反射に着目し、その粒子をフィルムに写し取ろうしたものであるのに対し、「ルミネソンス」シリーズはシャンデリアの一つひとつのパーツに光が透過し、その結果、すべて違う表情を見せる光となって、フィルムを感光させている。反射と透過。
撮影されたシャンデリアはヴェルサイユ宮殿やシャンティイ城、あるいはパリの礼拝堂などのもの。史実として語られる出来事が起こったとき、それを照らしていたものであり、歴史上の人物たちに注いだ光の源であったのだろう。あるいは礼拝堂なら、人々の祈りとともにあった光を放ったものであろう。それを銀塩写真によって留めた、なにより理屈抜きに美しい作品群となっている。
撮影されたシャンデリアはヴェルサイユ宮殿やシャンティイ城、あるいはパリの礼拝堂などのもの。史実として語られる出来事が起こったとき、それを照らしていたものであり、歴史上の人物たちに注いだ光の源であったのだろう。あるいは礼拝堂なら、人々の祈りとともにあった光を放ったものであろう。それを銀塩写真によって留めた、なにより理屈抜きに美しい作品群となっている。
小野祐次 Luminescence
〈シュウゴアーツ〉東京都港区六本木 6-5-24 complex665 2F。2021年4月24日〜6月19日(会期延長)。※5月31日まで臨時休廊中。12時〜18時。土・日・祝休。TEL 03 6447 2234。
