
DESIGN
中川政七商店×スタジオジブリが広げた、『となりのトトロ』と工芸の可能性。
March 10, 2023 | Design | casabrutus.com | photo_Kazumasa Harada text_Kana Umehara © Studio Ghibli
中川政七商店がスタジオジブリと初のコラボレーションを企画した。両者を繋いだキーワードは「手仕事への愛」だ。アニメーションと工芸品。それぞれ生み出すものは違えど、こだわりを持ち、ものづくりに真摯に向き合う姿勢が共鳴し、今回の企画実現へと至った。第一弾は「となりのトトロ」。25種登場したアイテムの中でもひとつ大きな目玉となるのが富山県南砺(なんと)市井波地区で生産される井波彫刻による「くすの木のトトロ」だろう。今回、愛くるしいトトロがどのようにして生まれたのか工房へ話を聞きに伺った。
中川政七商店が今回、手がけたのは『となりのトトロ』と自然との触れ合いを楽しむことができる暮らしの道具。型染の宝箱や焼き物のどんぐり皿や一輪挿しなど全国の工芸産地の職人と手を組み、トトロたちが主人公の工芸品を生み出した。ぽってりとしたフォルムが魅力的なトトロが棲むくすの木を使ったトトロの木彫り人形は、この企画の構想段階から作りたかったものなのだ、と教えてくれたのは中川政七商店の商品デザイナー榎本雄さんだ。
「10年以上前ですが、宮﨑駿さんの講演会に伺う機会があり、鉛筆1本から生み出すものづくりへの熱意に感銘を受けたんです。それでどうしてもスタジオジブリと仕事をしたいと考えるようになりました。最初は問い合わせ先もわからずに手紙を書いて気持ちを伝えることからはじめました。その時に“こういうものが作りたいんです”とお送りしたのが、試作品のトトロの木彫り人形です」
「10年以上前ですが、宮﨑駿さんの講演会に伺う機会があり、鉛筆1本から生み出すものづくりへの熱意に感銘を受けたんです。それでどうしてもスタジオジブリと仕事をしたいと考えるようになりました。最初は問い合わせ先もわからずに手紙を書いて気持ちを伝えることからはじめました。その時に“こういうものが作りたいんです”とお送りしたのが、試作品のトトロの木彫り人形です」
スタジオジブリから「一度お会いしましょう」と返事がきたものの、そこからの話は一筋縄ではいかなかったと言う。
「スタジオジブリのみなさんは、当然ですがアニメーション、作品の世界をとても大事にされています。スタジオジブリにとってキャラクター商品は“ただ売るもの”ではないんです。物語の世界を、さらに一歩深めてくれるものでないといけない。だとしたらどういうものを提案すべきなのか、僕たちは考える必要がありました」
とはいえその考え方は、中川政七商店が得意とするものでもあった。
「僕たちは“日本の工芸を元気にする!”という旗印のもとでものづくりをしている。職人の技術や産地の文化を100年先に繋いでいくためには、何を残し、どう活かせばいいのかを常に考えています。その考え方とスタジオジブリの商品開発の発想は、とても近いところにあると感じました」
木彫りのトトロも、ただの“置物”ではいけない。日本の工芸を背景に持ちつつトトロらしさを表現するために、作り手探しにとことんこだわった。偶然、出会ったのが富山の井波彫刻だった。
「スタジオジブリのみなさんは、当然ですがアニメーション、作品の世界をとても大事にされています。スタジオジブリにとってキャラクター商品は“ただ売るもの”ではないんです。物語の世界を、さらに一歩深めてくれるものでないといけない。だとしたらどういうものを提案すべきなのか、僕たちは考える必要がありました」
とはいえその考え方は、中川政七商店が得意とするものでもあった。
「僕たちは“日本の工芸を元気にする!”という旗印のもとでものづくりをしている。職人の技術や産地の文化を100年先に繋いでいくためには、何を残し、どう活かせばいいのかを常に考えています。その考え方とスタジオジブリの商品開発の発想は、とても近いところにあると感じました」
木彫りのトトロも、ただの“置物”ではいけない。日本の工芸を背景に持ちつつトトロらしさを表現するために、作り手探しにとことんこだわった。偶然、出会ったのが富山の井波彫刻だった。
「井波彫刻は、江戸時代から神社仏閣の装飾や日本家屋の欄間などの彫刻を手がけてきた歴史ある伝統工芸です。200本以上のノミや彫刻刀を使い、立体的で躍動感のある木彫りを生み出します。今回、映画も何度も見返して改めてトトロってどういう生き物なんだろうと考えました。動物かもしれないし、神様や精霊のような存在かもしれない。寺社の装飾や獅子舞を手がける井波彫刻の技術なら、そんなトトロの神聖さと生き物としての存在感をどちらも見出してくれるのではないかと思いました。とくに今回、制作を依頼した木彫と漆の工房『トモル工房』の田中孝明さんは、伝統的な作品だけでなく自身の表現を形にするアーティスト活動もされている。新しい発想でトトロを彫ってくださるのではないかと思いました」
富山市内から車で1時間ほど。富山県西部に位置する南砺市井波地区は瑞泉寺という古刹の門前町として栄えた。寺から続く石畳の八日町通りや本町通りには昔ながらの町屋が並び、その多くが木彫刻の工房で、通りを歩いているとトントンと木槌の音が響き、ガラス戸の向こうで木を削る職人たちの姿をみることができる。なんと、人口約8000人のうち200人が木彫り職人なのだという。町そのものが、ジブリの映画の世界のようで胸が踊る。
富山市内から車で1時間ほど。富山県西部に位置する南砺市井波地区は瑞泉寺という古刹の門前町として栄えた。寺から続く石畳の八日町通りや本町通りには昔ながらの町屋が並び、その多くが木彫刻の工房で、通りを歩いているとトントンと木槌の音が響き、ガラス戸の向こうで木を削る職人たちの姿をみることができる。なんと、人口約8000人のうち200人が木彫り職人なのだという。町そのものが、ジブリの映画の世界のようで胸が踊る。
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