建築家・坂 茂がデザインしました。福島に子供のための施設が完成! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

建築家・坂 茂がデザインしました。福島に子供のための施設が完成!

福島県相馬市。青空のもと女学生が奏でるモーツァルトが響きわたる。7月2日に行われた〈LVMH子どもアート・メゾン〉のオープニングセレモニーでの一場面だ。

相馬市から提供された1,500㎡の敷地の中央に、ドーナツ形の建物が建つ。屋根には太陽光発電パネルが並ぶ。
2011年の東日本大震災は子供たちの心にも大きな傷を残した。このことを目の当たりにした相馬市は、震災直後からPTSD対策に取り組みはじめる。同年秋、その取り組みにルイ・ヴィトンを擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイヴィトングループが賛同、活動拠点建設への全面的な支援を決めた。建物の設計を託されたのは、建築家の坂茂。11年末から設計を開始し13年4月に着工。今年春に完成した。そして施設の構想から約2年半の歳月を経てこの日、グランドオープンを迎えたのだ。

建物は、木造2階建て、延床面積29'㎡の楕円形をしたドーナツ状。中庭を囲み絵本閲覧スペース、読み聞かせコーナー(2階)、多目的研修室、相談室、事務室が配されている。設計した坂にこの建物について尋ねてみた。

−−特徴的なドーナツ状の建物について教えてください。
「線路や倉庫に接した敷地なので、外は閉じつつ、内に開いた別世界を用意してあげようと思いました。中庭を介して子供たちがお互いを意識できますし、自然換気を行うにも有利です」

−−ここで子供たちに体験してもらいたいことは何でしょう?
「家具や柱には紙管を使っています。紙でも建築に利用できることや、見たことのない空間を体験してもらえればと思いました。太陽光発電もメーターで発電量を確認できるので、天候による変化に興味をもってほしいと思います」

−−室内には水耕栽培による野菜工場もありますね。
「子供たちが自ら野菜を育て、料理して楽しむ。そんな行為が子供たちを癒すはずです」

1994年にルワンダ難民キャンプに紙管によるシェルターを携えて駆けつけて以来、被災地での支援を行ってきた坂にとって、これが初めての「復興」建築だという。「仮設と恒久建築は、愛され続けるかどうかの違いです」という坂の言葉どおり、長く使われるべく愛される仕掛けが織り込まれている。そうした坂や支援した人々の思いを聞くと、中庭を囲む建物は子供を見守る大人たちの姿のようだ。中心に植えられたヤマボウシは今はか細く、低い。しかし、大きな可能性をもつ子供たちの成長とともに、すぐに屋根をも越えて育っていくに違いない。
左上/坂茂がデザインした家具が並ぶ絵本閲覧スペース。左中央/楕円形の建物に囲まれた中庭。左下/水耕栽培システム&キッチン併設の多目的研修室。右上/子供たちと言葉を交わす坂茂。右中央/中庭で演奏するエル・システマジャパン相馬子どもオーケストラ。右下/LVMHジャパン社長のシリル・ヴィニュロン氏へ立谷秀清相馬市長より感謝状が授与された。

LVMH子どもアート・メゾン

PTSD対策を担うNPO法人相馬フォロアーチームと一般社団法人エル・システマジャパンによる作曲教室の活動拠点となる施設。将来を担う子供たちの、東日本大震災による心のケア、学力向上、情操教育、芸術活動の場となる。LVMHの支援によって建設され、相馬市が運営する。●

福島県相馬市中村2-2-15
9時~18時。12月29日~1月3日休館。問合せ/相馬市生涯学習課 TEL 0244 37 2187。http://www.soma-ft.org/

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