青森 “人情グルメの旅” 野辺地編|行くぜ、東北。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

青森 “人情グルメの旅” 野辺地編|行くぜ、東北。

青森県・下北地方の入口にある小さな町・野辺地(のへじ)町で訪れたいのは、絶品「茶粥定食」を出す〈松浦食堂〉。一見普通の食堂に、わざわざ食べに行きたい味がある。青森グルメの底力を感じさせてくれる店です。

創業明治の百年食堂。「茶粥定食」を供する貴重な店だが、佇まいは実に楚々としている。
下北半島の付け根部分に位置する野辺地町は、陸奥湾に面した小さな町。オホーツク海気団から吹く北東風・やませの影響で1年中冷涼。冬は雪国青森県でも有数の豪雪地帯として知られる。古くからホタテの養殖が盛んで、貝殻を器にして焼く「味噌貝焼き」は、一帯に伝わる郷土料理のひとつ。近年は夏に旬を迎える「野辺地葉つきこかぶ」の産地としても注目を集めている。
青い森鉄道の野辺地駅までは、八戸駅からも青森駅からも約45分。
〈松浦食堂〉は、青い森鉄道野辺地駅の駅前にある。入口にメニューの食品サンプルが並ぶ様子は、地方の町でたびたび出会う古い大衆食堂と同じだが、よく見ると「郷土料理 茶粥定食が食べられる店」と書かれた貼り紙が目に入る。この「茶粥定食」こそ、他ではなかなか食べることができない店の名物。評判を聞きつけた旨いもの好きが、青森や八戸から一歩足をのばして訪れる。

漆器の御膳に所狭しと並ぶのは、食前酒のたまご酒にホタテの刺身と味噌貝焼き、豆腐の磯部揚げ、南部町の菊花で作る酢の物など、野辺地の伝統料理の数々。上方の精進料理にルーツがあるため、特産品のホタテ以外、生ものを使わないのが特徴だ。作り方は、女将の松浦リツさんが、先代の女将から受け継いだ。小柄できびきびと動くリツさんは、80歳と聞けば驚く若々しさで、笑顔がとてもチャーミング。
茶粥定食1,435円。前日までの要予約。2階の座敷でゆっくり味わうことができる。
茶粥を炊く「草茶」は、カワラケツメイというマメ科の植物で、野辺地では古くから薬草として親しまれてきた。かつては自生していたが今は少なくなったので、〈松浦食堂〉では茶粥のために栽培し、その日に使う分だけを焙煎して使用している。茶粥は人数分が土鍋で供される。お茶の香りが香ばしく、ゴマ塩を加えると甘みとだしの優しい旨みがより豊かに感じられ、たっぷりの量がするりとお腹に収まる。
女将の松浦リツさん。茶粥定食のおかずはすべてリツさんの手作り。茶粥に使う草茶も販売している。
創業100余年の店だが、地域に暮らす人々の“日々の食事の場”としてまだまだ現役。仕事の合間の昼食を済ませたり、仕事あがりにビールを飲みながらささっと食事をしたりする人々がひっきりになしに訪れる。木札の品書きに並ぶのは中華そば、ざるそば、カレーライスにオムライス……。そんな“野辺地の素顔”ともいえる光景を垣間見つつ、ここでしか出会えない美味を堪能するのは、旅における最高の贅沢だ。

松浦食堂

青森県上北郡野辺地町上小中野39-7
TEL 0175 64 3004。11時~19時。日曜休。

アクセス

東京駅から東北新幹線で八戸駅まで約2時間50分。青い森鉄道に乗り換えて約45分の野辺地駅前。
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