香港にエルメスの新店舗が登場。建築家に聞く、エルメスのコードとは? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

香港にエルメスの新店舗が登場。建築家に聞く、エルメスのコードとは?

香港のショッピングエリアにエルメスの新店舗がオープン。世界のエルメスの店舗デザインを行う建築設計事務所RDAIのドゥニ・モンテルが、設計秘話を明かす。

中国の伝統的な竹の足場をモチーフにしたというファサード。
ラグジュアリーブティックが揃う香港・セントラルの<ランドマーク・プリンス>にエルメスの新店舗がオープンした。コーナーに面した店舗は、吹き抜けの空間が印象的な自然光あふれる空間。設計したのは、世界中のエルメスの店舗デザインを手がける建築設計事務所RDAIのドゥニ・モンテル。モンテルに新店舗のデザインについて話を聞いた。
建築家のドゥニ・モンテル。Photo_Pierre Larose
──まずは、今回の店舗のデザイン・コンセプトを教えて下さい。
〈ランドマーク・プリンス〉という既存の建物の中につくる店なので、元の構造を変えつつ既にそこにあったように見せる必要がありました。角に面した2つのエントランスを生かしながら、店内ではフロア間の連続性を持たせるために、導線をいかにつくるかがポイントでした。

──各フロアが吹き抜けや階段で繋がる縦の導線が面白かったです。開放感がありました。
1階、2階の違いをお客様に認識してもらうのと同時に、もともとの空間の容積が小さく天井も低かったため、広く高く感じさせる必要がありました。そのため、階段をフロアの両サイドにつくるなどして、空間内の動きを作りました。またショーウィンドウを吹き抜けにしたのは今回初めてですが、それも空間の広さを演出するためです。店内の2階のバルコニーからウィンドウディスプレイの背面を見ることができるのも面白いですよね。

──竹を使用したという階段が美しかったです。なぜ竹という素材にこだわったのでしょう?
中国的なコンテクストと対話するために、中国という土地に根ざした素材を使いたいと考えました。竹の使用はファサードから始まったんです。ファサードのデザインは、昔、初めて香港に来た時に見た竹の足場がインスピレーションソースとなりました。内側から見ると大きな窓があるのでたくさんの光が入ってきます。しかし、外からは内部の親密性を保つためにフィルターのような役割を果たすものが欲しいと考えました。そこで思い出したのが、垂直に伸びる竹の足場でした。でも竹そのものをファサードに使うのは香港市の許可が下りなかったので、他の素材を使って竹を見立てたデザインにしました。店内の床や階段、手すりなど様々な部分には、実際の竹を用いています。
竹は階段や手すりにも使われている。
──香港という街の特徴もデザインに影響を与えましたか?
そうですね。香港はとても特殊な街です。過密都市とでもいいましょうか。小さな土地に多くの建物が立ち並んでいて、密度が濃く、ノイジーでもあります。デザインする際に静かな空間を作ろうと思いました。都市の中にある静寂のポケット(隔離された空間)のような。同時にウィンドウはできるかぎり広くしました。周囲の景観が見えるので、建物が隣接している様子や都市のスピードも感じとれます。

──縦に抜けている空間の気持ち良さがありますが、この考え方はこれから他の都市で作られるエルメスの店舗にも応用される可能性もありますか?
私たちは常にテーラーメイドで店を作っています。既存の建物を使うことが多いので、いかにそれを活用するかを考えます。今回は「垂直」がキーワードでしたが、次回はまた違うコンセプトを考えるでしょう。コンテクストが重要です。

──確かに店舗ごとにデザインは異なりますが、エルメスの店舗には共通するものを感じます。それはなんでしょう?エルメスの空間作りで大事にしていることは?
私たちは常に、パリのフォーブル・サントノーレにある第一号店のコードを用います。例えば一階の床のモザイクタイルがそうです。これはフォーブル・サントノーレ店のものと同じパターンですが、色合いは店舗によって異なります。デザインのアプローチも似通っていますよ。同じデザインにはなりませんが、シンプルで暖かみのある空間など同じ哲学に基づいてデザインしています。スケールも重要で、私たちは常に小さな住宅やアパートメントの部屋などを思い起こさせる、人間のスケールにあった空間作りをします。RDAIの設立者であるレナ・デュマの言葉ですが、「同じ音符を使って、いろいろな曲が作れる」のですよ。
オープニングのディスプレイを飾ったのはフランスのアーティストZim & Zou。

〈Hermès Hong Kong Landmark Prince’s〉

10 Canter Road, Central, Hong Kong
。10時30分〜19時30分(日、祝日11時〜19時)。