DESIGN
モダンな焼き締めに釘付け! 鮫島陽 展@OUTBOUND|輪湖雅江の器とごはん
September 20, 2020 | Design, Food | casabrutus.com | photo_Keisuke Fukamizu text_Masae Wako
器は料理を盛ってこそ!ということで、人気作家の最新作を発表する個展に合わせて、作家本人にも料理を作ってもらっちゃおう…という無茶ぶり企画6回目。「炭化焼成」という手間のかかる技法でモダンな焼き締めのうつわをつくる若手作家、鮫島陽の工房を訪ねました。うつわ中心の500点が並ぶ個展は、10月2日から東京・吉祥寺の〈OUTBOUND〉で開催。
つるんとした石のような質感と、縄文土器みたいに豊かな丸み、そして水墨画を思わせる灰色のグラデーション。静かで毅然としたうつわが、ほくほくの温野菜サラダやスープたっぷりの水餃子を盛った瞬間、急にイキイキとしはじめる。手触りはどこまでもなめらか。ほどよい重みと色っぽい曲線があって、何度でも触ったり両手で持ったりしたくなる!
「炭化焼成」という技法で焼き締めのうつわをつくる鮫島陽(さめじま・みなみ)は、25歳の若手作家。小柄で細身だけど、アスリートみたいにキビキビしていて非常にカッコいい。「私、格好つけ気味というか、たぶん、格好つけるのが好きなんです。暑くても涼しい顔をしていたい。緊張してても正座で足がしびれてても平気なふうに見せたい。うつわの形が少し不安定でも、オタオタしないで平然と使いたい。そういうちょっと背伸びしがちなところが、私のうつわにもあるかもしれません」と真剣な顔で言う。カッコいいけど隙があって、実はおおらかで面白い。うつわと作り手、確かによく似ているかも。
多くの人気作家を輩出している岐阜県の〈多治見市陶磁器意匠研究所〉で陶芸を学び、昨年、夫で陶芸家の成田周平とともに名古屋の隣にある豊明市へ移ってきた。土間と土壁のほの暗い工房は、古い2階建てを自分たちで改築したもの。奥に2人で料理ができるさっぱりと気持ちのいいキッチンがある。
「炭化焼成」という技法で焼き締めのうつわをつくる鮫島陽(さめじま・みなみ)は、25歳の若手作家。小柄で細身だけど、アスリートみたいにキビキビしていて非常にカッコいい。「私、格好つけ気味というか、たぶん、格好つけるのが好きなんです。暑くても涼しい顔をしていたい。緊張してても正座で足がしびれてても平気なふうに見せたい。うつわの形が少し不安定でも、オタオタしないで平然と使いたい。そういうちょっと背伸びしがちなところが、私のうつわにもあるかもしれません」と真剣な顔で言う。カッコいいけど隙があって、実はおおらかで面白い。うつわと作り手、確かによく似ているかも。
多くの人気作家を輩出している岐阜県の〈多治見市陶磁器意匠研究所〉で陶芸を学び、昨年、夫で陶芸家の成田周平とともに名古屋の隣にある豊明市へ移ってきた。土間と土壁のほの暗い工房は、古い2階建てを自分たちで改築したもの。奥に2人で料理ができるさっぱりと気持ちのいいキッチンがある。
鮫島のうつわは “炭化焼成” という技法でつくった焼き締めだ。まず、ろくろで成形したうつわを本焼きして硬く焼き締める。次にそのうつわを、サヤと呼ばれる陶製の鉢に詰め、もみ殻を入れて密封する。サヤごと窯の中で低温焼成するともみ殻が焼け、うつわの表面に炭素が吸着してグレーのまだら模様ができるのだ。「ある程度コントロールはするけれど、ほぼ、偶然うまれる美しさです」と鮫島。
多治見の研究所時代から炭化焼成を始め、卒業してからはこの技法一筋だ。「窯と火に委ねられるところが好きなんです。私にとって焼くということは、うつわをいったん知らない世界へ送り出すこと。そこに人は立ち入れないし、たとえうつわが少々変わった様子で出てきても、まずはちゃんと受け止めます」
とは言うものの、例外もあって。「ある時、焼き上がりの色に納得がいかなくて、ふと、もう一回窯に入れて表面の炭素を焼き飛ばしてみようと思いついたんです。そしたらうつわがピンク色になって出てきて、“わあ、奇跡だ!” ってびっくりしました」。さらに、それじゃあ……ともう一回窯に入れて焼いてみたら、なんと白いうつわが現れた。「白いものはまだ家族にしか見せていないんですけど、真っ白な石のようでとても気に入っています。これで急須をつくったらきれいだろうな」。
多治見の研究所時代から炭化焼成を始め、卒業してからはこの技法一筋だ。「窯と火に委ねられるところが好きなんです。私にとって焼くということは、うつわをいったん知らない世界へ送り出すこと。そこに人は立ち入れないし、たとえうつわが少々変わった様子で出てきても、まずはちゃんと受け止めます」
とは言うものの、例外もあって。「ある時、焼き上がりの色に納得がいかなくて、ふと、もう一回窯に入れて表面の炭素を焼き飛ばしてみようと思いついたんです。そしたらうつわがピンク色になって出てきて、“わあ、奇跡だ!” ってびっくりしました」。さらに、それじゃあ……ともう一回窯に入れて焼いてみたら、なんと白いうつわが現れた。「白いものはまだ家族にしか見せていないんですけど、真っ白な石のようでとても気に入っています。これで急須をつくったらきれいだろうな」。
「形やサイズは、使い勝手のよさよりも、つくりたい気持ち優先で決まる」と話す鮫島の原点は、意外にも古い土器。「縄文土器や須恵器(すえき)が好き。あの姿を眺めていると、用途よりも想いのほうが強かったんだろうなという気がします。祀りごとのためだけにつくられた器とか、あきらかに用途のない装飾とか。私がつくるうつわも、何にでも使える便利な形ではないことが多いので、土器を見ると “そういうものであって良い” と励まされている気がして、安心できるんです」。
「それに、あの豊かな丸みには敵わないなーって思います」。鮫島が使うろくろの前には、いったん挽いて削って成形したうつわを置いて、“真横からのフォルム” を見るための棚がある。真横から見た時のシルエットがいいことが、自分の中のルールのひとつ。焼きの具合がどれだけきれいでも、丸くあるべき腰のラインが落ちてしまっていたらガッカリ。そういう時はもう一度作り直すこともいとわない。
「それに、あの豊かな丸みには敵わないなーって思います」。鮫島が使うろくろの前には、いったん挽いて削って成形したうつわを置いて、“真横からのフォルム” を見るための棚がある。真横から見た時のシルエットがいいことが、自分の中のルールのひとつ。焼きの具合がどれだけきれいでも、丸くあるべき腰のラインが落ちてしまっていたらガッカリ。そういう時はもう一度作り直すこともいとわない。
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illustration Yoshifumi Takeda
Masae Wako
わこ まさえ 編集者・ライター。インテリアと手仕事と建築と日本美術にまつわる雑誌の仕事が中心。カーサブルータス本誌では〈かしゆか商店〉番頭。
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