FASHION
吉田実香のNY通信|セーターブランド〈リンガフランカ〉を知っていますか。
| Fashion, Culture, Travel | casabrutus.com | photo_courtesy of Lingua Franca text_Mika Yoshida & David G. Imber
ハリウッド俳優やTVパーソナリティ、モデルといったセレブがこぞって支援するセーターのブランドがある。新・社会派ムーブメント、〈リンガフランカ〉とは。
〈リンガフランカ〉のセーターには、胸元に一言メッセージが刺繍されている。「Fight the Power」とか、「Don't believe the hype」とか……どこかで聞いたことがあるような? そう、パブリック・エネミーのヒット曲だ。1980-90年代、ブラックキッズが「権力に立ち向かえ」「メディアに踊らされるな」と猛々しく叫んだメッセージ。これが上質カシミアのセーターに手刺繍という、いわば「異文化」に収められることによって、ことばの次元はぐっと深まる。2019年の今、同じ文面でも着る人次第で「打倒トランプ政権」「マスコミやSNSを鵜呑みにしちゃダメ」というニュアンスに変わり得るのだ。
メッセージTシャツならぬ「メッセージ・カシミアセーター」のブランド、〈リンガフランカ〉。創設者はラシェール・ラスカ・マクファーソンという女性である。ふと思いたって古いセーターに刺繍をほどこしてみたのが2016年のこと。幼い頃、故郷ネブラスカで祖母と一緒に刺繍を楽しんだのを懐かしく思い出しながら、ヒップホップの歌詞を縫ったという。アメリカ人なら誰でも知っている政治スローガンや、ロックの歌詞、時の人物の問題発言などあらゆることばが胸元を飾る、社会意識の高いセーターブランドがここから誕生した。
ラシェールは長年、ハイエンドなパーティイベントを扱うデジタルメディア会社〈Guest of a Guest〉を経営してきた起業家だ。NYファッション/ソーシャルシーンの女王とも呼ばれる彼女が始めたこの「しなやかな社会派ムーブメント」に、多くのセレブティが賛同する。LGBTQ、女性の地位向上、トランプ政権、ミートゥー、多様性の肯定といったテーマのスローガンがさらりと描かれたセーターを、セレブたちがこぞって着ては世間にアピールするのである。
「I miss Barack(バラクに会いたい)」、「fake president」(フェイク大統領)といった直球の政治ネタもあれば、「being human(人間であること)」などシンプルだけにいくらでも深読みできるフレーズも。
ウィットとユーモアをこっそりしのばせたセーターで社会を変える、という発想自体そもそも楽しいし、自分も「共犯者」になりたくなる。エレンやジミー・ファロンといった人気トークショーの司会者が番組で紹介するかと思えば、メリル・ストリープやトム・ハンクス、マーク・ラファロといった俳優たちが刺繍セーターを着こんでTVやイベントに登場する。ゴールデングローブ賞のレッドカーペットに〈リンガフランカ〉で現れた女優もいた。歌手のピンクやカーリー・サイモンも〈リンガフランカ〉仲間というから、その波及効果は図りしれない。
メッセージTシャツならぬ「メッセージ・カシミアセーター」のブランド、〈リンガフランカ〉。創設者はラシェール・ラスカ・マクファーソンという女性である。ふと思いたって古いセーターに刺繍をほどこしてみたのが2016年のこと。幼い頃、故郷ネブラスカで祖母と一緒に刺繍を楽しんだのを懐かしく思い出しながら、ヒップホップの歌詞を縫ったという。アメリカ人なら誰でも知っている政治スローガンや、ロックの歌詞、時の人物の問題発言などあらゆることばが胸元を飾る、社会意識の高いセーターブランドがここから誕生した。
ラシェールは長年、ハイエンドなパーティイベントを扱うデジタルメディア会社〈Guest of a Guest〉を経営してきた起業家だ。NYファッション/ソーシャルシーンの女王とも呼ばれる彼女が始めたこの「しなやかな社会派ムーブメント」に、多くのセレブティが賛同する。LGBTQ、女性の地位向上、トランプ政権、ミートゥー、多様性の肯定といったテーマのスローガンがさらりと描かれたセーターを、セレブたちがこぞって着ては世間にアピールするのである。
「I miss Barack(バラクに会いたい)」、「fake president」(フェイク大統領)といった直球の政治ネタもあれば、「being human(人間であること)」などシンプルだけにいくらでも深読みできるフレーズも。
ウィットとユーモアをこっそりしのばせたセーターで社会を変える、という発想自体そもそも楽しいし、自分も「共犯者」になりたくなる。エレンやジミー・ファロンといった人気トークショーの司会者が番組で紹介するかと思えば、メリル・ストリープやトム・ハンクス、マーク・ラファロといった俳優たちが刺繍セーターを着こんでTVやイベントに登場する。ゴールデングローブ賞のレッドカーペットに〈リンガフランカ〉で現れた女優もいた。歌手のピンクやカーリー・サイモンも〈リンガフランカ〉仲間というから、その波及効果は図りしれない。
セーターはフェアトレードの材料を使い、健全な労働環境のもと、地元NYの女性達の手によって一針一針刺繍が施される。グリニッジヴィレッジに開いた小さなブティックには、アメリカ史に刻まれる偉業を為した女性たちの写真が飾られているのも印象的だ。収益の一部はさまざまな活動団体に寄付されており、その数は現在約230団体にものぼるという。
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吉田実香
よしだ みか ライター/翻訳家。ライター/インタビュアーのパートナー、デイヴィッド・G・インバーとのユニットでNYを拠点に取材執筆。『Tokyolife』(Rizzoli)共著、『SUPPOSE DESIGN OFFICE』(FRAME)英文執筆、『たいせつなきみ』(マイラ・カルマン 創元社)翻訳。
