DESIGN
佐藤オオキが解説! nendoと伝統工芸の化学反応が楽しめる展覧会。
January 19, 2022 | Design, Travel | casabrutus.com | text_Katsura Hiratsuka editor_Keiko Kusano, Housekeeper
「nendo×京都の匠」という対照的にも思える組み合わせの展覧会が京都の〈二条城台所・御清所〉と〈清水寺西門・経堂〉で開催される。伝統工芸の職人との協働はいかに? 展覧会の見どころや制作プロセスをnendo代表の佐藤オオキに聞いた。
nendoが京都の伝統工芸の職人や工房7組とコラボレーションした展覧会「NENDO SEES KYOTO」が京都ではじまった。主催は「nendo×京都の匠展実行委員会」。参加者は主催者の一員である京都市教育委員会の紹介などから決定されたもので、千家好みの茶道具を制作する「千家十職(せんけじっしょく)」の茶碗師、釜師、塗師や七代目小川治兵衛の直系となる庭師、江戸時代創業の老舗など、京都屈指の歴史を誇る、多岐にわたる分野の職人や工房が揃う。
本展では長く受け継がれてきた技術や場所をnendoが解釈し、外から新たな「視点」をもたらすことで、新たな表現に挑戦したという。最前線で課題解決に取り組むデザイン事務所と、何百年もつづく伝統を継承しながら創作に励む職人。いかにも異色の組み合わせだ。果たしてどんなものづくりが展開されたのだろう。
本展では長く受け継がれてきた技術や場所をnendoが解釈し、外から新たな「視点」をもたらすことで、新たな表現に挑戦したという。最前線で課題解決に取り組むデザイン事務所と、何百年もつづく伝統を継承しながら創作に励む職人。いかにも異色の組み合わせだ。果たしてどんなものづくりが展開されたのだろう。
nendo代表の佐藤オオキは職人との協働を「意外にロジカルで、現代の技術を前向きに受け止めてくださいました」と振り返る。
「たとえば樂さん(十五代 樂吉左衞門 樂直入氏)の樂茶碗は手捏ねで肉厚、土質がやわらかく焼成温度も低いので多孔質です。そこで焼成後の茶碗に色を吸わせることを提案しました。伝統的な方法とは違うので怒られるかと思いきや面白がってくれて、翌週から焼成温度や土の種類を細かく変えたサンプルを焼いて送ってくださり、まるで学術的な研究開発のように論理的に進みました」
nendoは3Dプリンターを9台備えるなど機材の充実をはかり、デザイナーのみならず素材や製作技術の研究開発を担当するスタッフを揃えるなど、ものづくりを自社で完結させる仕組みを備えている。この体制は、伝統工芸と対峙する上でも生かされた。
香老舗 松栄堂と制作したお香《yuikou》では「nendoが社内の3Dプリンターで作成した型を京都にお送りして試作していただくことを繰り返しました。乾かすことで出る歪みを解消するために型を微調整したり、乾かすための治具を制作したり」(佐藤)という細やかな協業を経て実現された。再現性が高い技法に到達できたため、今回の発表作品で唯一、商品化に向けて動いているという。
「たとえば樂さん(十五代 樂吉左衞門 樂直入氏)の樂茶碗は手捏ねで肉厚、土質がやわらかく焼成温度も低いので多孔質です。そこで焼成後の茶碗に色を吸わせることを提案しました。伝統的な方法とは違うので怒られるかと思いきや面白がってくれて、翌週から焼成温度や土の種類を細かく変えたサンプルを焼いて送ってくださり、まるで学術的な研究開発のように論理的に進みました」
nendoは3Dプリンターを9台備えるなど機材の充実をはかり、デザイナーのみならず素材や製作技術の研究開発を担当するスタッフを揃えるなど、ものづくりを自社で完結させる仕組みを備えている。この体制は、伝統工芸と対峙する上でも生かされた。
香老舗 松栄堂と制作したお香《yuikou》では「nendoが社内の3Dプリンターで作成した型を京都にお送りして試作していただくことを繰り返しました。乾かすことで出る歪みを解消するために型を微調整したり、乾かすための治具を制作したり」(佐藤)という細やかな協業を経て実現された。再現性が高い技法に到達できたため、今回の発表作品で唯一、商品化に向けて動いているという。
小嶋商店と制作した提灯《hyouri》は、京提灯の竹ひご同士のつなぎ目に「関節」のような可動性を加えたもので、一部分を飲み込ませるように畳むと入れ子状になる。「提灯は、小嶋商店さんにアドバイスや素材提供をいただきながら社内で手づくりしました。リモートワーク期間に自宅で提灯をつくったデザイナーもいて、日本一アナログなリモートワークだったかも(笑)」(佐藤)と、nendo側があたかも職人のように手を動かし実現した作品だ。
伝統工芸とデザイナーが協働する場合、一般的にデザイナーの役割は形の提案にとどまる。技術面の負担が伝統工芸側にかかることで、2者の関係に歪みが出ることもあると聞く。しかし本展では互いが真摯にものづくりと向き合いキャッチボールを繰り返した。
「自ら手を動かしたり、解決策をこちらで探したりする体制があるからこそ、職人さんに信頼いただくことができたのかもしれません」(佐藤)
伝統工芸とデザイナーが協働する場合、一般的にデザイナーの役割は形の提案にとどまる。技術面の負担が伝統工芸側にかかることで、2者の関係に歪みが出ることもあると聞く。しかし本展では互いが真摯にものづくりと向き合いキャッチボールを繰り返した。
「自ら手を動かしたり、解決策をこちらで探したりする体制があるからこそ、職人さんに信頼いただくことができたのかもしれません」(佐藤)
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