DESIGN
20世紀構成主義のポスター展をアール・デコの館で鑑賞する|青野尚子の今週末見るべきアート
February 18, 2021 | Design, Art | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
アール・デコの装飾が美しい〈東京都庭園美術館〉で”構成主義”にスポットをあてたポスターの展覧会が開かれています。「ビジュアルコミュニケーションは可能か?」とのサブタイトルにさまざまなことが読み取れる企画です。
ポスターは消耗品だ。通常は何かを告知するために短期間使用され、そのあとは捨てられてしまうことも多い。でもポスターを作る側はそのメッセージを強く、広く訴えたいと思うから、一枚の紙にできる限りのエネルギーとクリエイションを注ぎ込む。『20世紀のポスター[図像と文字の風景] ――ビジュアルコミュニケーションは可能か?』展は紙の専門商社、竹尾のポスターコレクションからセレクトしたもの。1920年代から90年代までのものが中心だ。
ポスターが重要な役割を果たすようになったのは産業化、都市化が進み、多くの人々が都市に集中し始めた時代に重なる。産業革命によって可能になった大量生産・大量消費の時代にポスターというメディアはぴったりだった。街にはポスターがあふれるようになり、ポスター貼り職人といった職業も登場する。パリではポスターを貼るための円柱が立てられ、オペラの人気の演目を伝えるポスターなどが貼られた。大量のポスターが貼られた街並みは汚いと非難されることもあったが、佐伯祐三のようにその風景を叙情的に描いた画家もいる。
この展覧会では「構成主義」と呼ばれるデザインにフォーカスがあてられる。構成主義とは要素の組み合わせによって画面を構成するものを言う。とくに円や四角形、三角形といった幾何学的形態が好まれた。構成主義のルーツは「ロシア構成主義」(ロシア・アヴァンギャルド)にある。ロシア構成主義は同時代にヨーロッパ各国で発生したデ・ステイル(オランダ)、バウハウス(ドイツ)などに波及し、相互に影響し合って発展していった。この動きは戦後、1950〜60年代にスイスを中心に世界中に広がった「インターナショナル・スタイル」と呼ばれるものにつながる。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。