CULTURE
【本と名言365】柚木沙弥郎|「いつからだって、どんな対象だって…」
September 24, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Mariko Uramoto illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。日本を代表する染色家であり、100歳を超えた今も精力的に活動を続ける柚木沙弥郎。布だけにとどまらず、版画や人形の制作など幅広いジャンルに取り組む円熟の表現者が伝えたいメッセージとは。
いつからだって、どんな対象だっていいんだよ。僕だって物心ついたのは80歳になってからなんだから
柳宗悦主唱の民藝運動をきっかけに芹沢銈介に師事し、染色の道へ。20代半ばより作家活動を始め、70年以上にわたり日本における型染の第一人者として制作を続けている柚木沙弥郎。デジタルや量産製品にはない、自然や日常の風景が独特の模様と色彩によって描かれた世界は、時代や国境を超えて多くの人の心を捉えている。
柚木は染色家としてだけでなく、教育者としての顔も持っている。女子美術大学の工芸家の設立に参画、長きにわたって学生の指導に努め、1987〜91年までは学長を務めた。染色家として実用的な生地やのれん、風呂敷を作りながら、教鞭に立つ日々はどんなに忙しかっただろう。
柚木が言う「物心がついた」というのは自我の意識だ。絶えず届くオファーに応えながら教鞭をとる日々に立ち止まる時間は十分になかった。すると、自分は何者か、どんなものが好きで、どんな立ち位置で表現するのか意識することが難しくなっていた。還暦を過ぎた時、染色をやり尽くしたと感じた柚木はアメリカのフォーク・アートと出会い、気づいた。「まだやれることはあるじゃないか」。そこから、商品ではなく、「作品」を創るようになったという。80歳で制作活動一本になった時、自分の好きなことや立ち位置を意識した。そして、それを意識していかないと、仕事はいい姿で世に出ていかないのだと気付いたのだ。
100歳を超えてなお衰えない豊かな創造力。その根源には「ワクワクしなくちゃ、つまらない」という気持ちがある。誰かが決めた「いい」ものを鵜呑みにすることではない。自分は何に心が揺れるのか感じるということ。そして、ワクワクするためには、贅沢や特別なことをするのではなく、生活を楽しむことなのだと柚木の作品は私たちに語りかける。
柳宗悦主唱の民藝運動をきっかけに芹沢銈介に師事し、染色の道へ。20代半ばより作家活動を始め、70年以上にわたり日本における型染の第一人者として制作を続けている柚木沙弥郎。デジタルや量産製品にはない、自然や日常の風景が独特の模様と色彩によって描かれた世界は、時代や国境を超えて多くの人の心を捉えている。
柚木は染色家としてだけでなく、教育者としての顔も持っている。女子美術大学の工芸家の設立に参画、長きにわたって学生の指導に努め、1987〜91年までは学長を務めた。染色家として実用的な生地やのれん、風呂敷を作りながら、教鞭に立つ日々はどんなに忙しかっただろう。
柚木が言う「物心がついた」というのは自我の意識だ。絶えず届くオファーに応えながら教鞭をとる日々に立ち止まる時間は十分になかった。すると、自分は何者か、どんなものが好きで、どんな立ち位置で表現するのか意識することが難しくなっていた。還暦を過ぎた時、染色をやり尽くしたと感じた柚木はアメリカのフォーク・アートと出会い、気づいた。「まだやれることはあるじゃないか」。そこから、商品ではなく、「作品」を創るようになったという。80歳で制作活動一本になった時、自分の好きなことや立ち位置を意識した。そして、それを意識していかないと、仕事はいい姿で世に出ていかないのだと気付いたのだ。
100歳を超えてなお衰えない豊かな創造力。その根源には「ワクワクしなくちゃ、つまらない」という気持ちがある。誰かが決めた「いい」ものを鵜呑みにすることではない。自分は何に心が揺れるのか感じるということ。そして、ワクワクするためには、贅沢や特別なことをするのではなく、生活を楽しむことなのだと柚木の作品は私たちに語りかける。
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