日本と海外を繋いだ阿部展也のモダンアート。
『カーサ ブルータス』2018年10月号より
| Art | a wall newspaper | text_Takahiro Tsuchida
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R-17-ROMA(1965) 蜜蝋と絵の具を調合し、加熱してキャンバスに定着させるエンコースティックで描かれた作品。ローマ在住時の阿部は、多様な質感が表現できるこの古典的技法を好んで多用した。色や質感の異なる歪んだ円の組み合わせは、顔と口がモチーフだという。

妖精の距離ー風の受胎(1937) 詩を瀧口修造が、絵を阿部が手がけて100部のみ出版された詩画集『妖精の距離』の内の1点。阿部の鉛筆素描に触発されて瀧口が詩作した。この詩画集は西脇順三郎がシュールレアリスムの傑作と絶賛し、音楽家の武満徹や彫刻家の宮脇愛子らにも影響を与えた。

R-50(1970) 立体感のある画風は、ヴィクトル・ヴァザルリらのオプ・アートや、ジョセフ・アルバースらの影響が指摘されている。翌年、神奈川県立近代美術館の『戦後美術のクロニクル』展に出品。その館長だった土方定一も阿部の功績を高く認めていた。

R-9-ROMA(1970) アクリル絵の具による最晩年の抽象画。当時、このモチーフは阿部の作品に繰り返し現れた。彼の画風はシュールレアリスムに始まり、キュビスムやアンフォルメルを経て幾何学的抽象へ。アクリル絵の具は、当時の欧米の抽象画家たちが用い始めた新しい画材だった。

R-47 1970-ROMA(1970) トレントのアルジェンターリオ画廊での個展で発表した絵画。画中に「WHITE SHADOW」という語句が見える。この時期の阿部は、幾何学的な型紙を使い、方眼紙の上に描いた素描をもとにした連作を手がけていた。この作品も同様の造形操作から生まれたようだ。