ART
鉄と格闘するアーティスト、青木野枝が湖と美術館のために作った光と水の柱|青野尚子の今週末見るべきアート
October 27, 2023 | Art | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano 撮影:本多康司 提供:市原湖畔美術館
千葉の〈市原湖畔美術館〉で開かれている青木野枝の個展『光の柱』。場との関係性を色濃く漂わせる会場には酷暑の中、鉄の“溶断”を続けてできあがった傑作が並びます。
〈市原湖畔美術館〉は1995年に〈水と彫刻の丘〉としてオープンし、有設計室(現カワグチテイ建築計画)によるリノベーションを経て2013年に再開館した美術館。円形の広場を中心に弧を描く展示室が並び、壁の一部が湾曲した吹き抜けや、大きな窓から外が見える三角形の小部屋などがあるクセの強い建築だ。この個性的な空間に、彫刻家・青木野枝はこの場所のために考え抜いて作った3点の作品を設置、あわせて昨年制作した旧作を2点セレクトした。青木は鉄を溶断したパーツを溶接した彫刻や、石鹸を使ったオブジェなどで知られる。鑑賞者を包み込むような鉄のオブジェなど、軽やかさとダイナミックさを併せ持つ作品が特徴だ。
新作のうち《光の柱 I》は鉄の輪を溶接した高さ9mの柱が3本、立っているというもの。吹き抜けの上から見下ろしたり、吹き抜けの下から柱の合間を縫うように歩きながら見上げることもできる。
「地から立ち上がっていくような感じです。ここはダムでできた人工湖のそばに建つ美術館です。その水が上昇し、また下降して降りそそぐ中で人が生きている。光の柱、水の柱の中で上下に動いている、そんなものを自分で作りたいと思った」(青木)
「地から立ち上がっていくような感じです。ここはダムでできた人工湖のそばに建つ美術館です。その水が上昇し、また下降して降りそそぐ中で人が生きている。光の柱、水の柱の中で上下に動いている、そんなものを自分で作りたいと思った」(青木)
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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