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青野尚子の「今週末見るべきアート」|回転すればあなたもアートに!? しりあがり寿ワールドへようこそ!
| Art | casabrutus.com | photo & movie_Kenya Abe text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
回転するものは美術になり得るか? そんな現代美術の命題に挑む(?)のが本展だ。見ていると自分も回りたくなってくる不思議な展覧会を動画でレポートします。
マルセル・デュシャンの作品に《自転車の車輪》というものがある。椅子の上に自転車の車輪を載せたオブジェだ。後に既存のものを組み合わせた「レディメイド」というジャンルの先駆けとなったエポックメイキングな作品だが、デュシャンは当初、美術の一大ムーブメントを作ろう、などとは思わず、暇なときに車輪を回しては壁に影を映して楽しんでいたのだそう。回転は現代美術における重要なファクターといえるかもしれない。ちなみにこの作品は東京都美術館で9月22日まで開催中の『ポンピドゥー・センター傑作展』で展示されている。
しりあがり寿がデュシャンのこの作品を意識したかどうかはわからないが、いろんなものが回転しているのが今回の個展だ。展示室に入る前、ロビーですでに巨大な赤いネジが回転している。回っていても床に潜ってはいかず、抜けもしない奇妙なネジだ。
1階の展示室は回転しないセクション。しりあがり寿のこれまでの漫画の原画や、近年手がけている巨大な墨絵が並ぶ。短編や4コマ漫画などはちゃんとオチがついているので会場で普通に読んでしまう。美術館の展示なので、シュールで笑える漫画の傍に美術史の教科書みたいな真面目なキャプション(説明)がついていて、そのギャップがまたしりあがりの世界をよく現している。
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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