ART
千葉・市原の小さな電車とアートの旅へ|青野尚子の今週末見るべきアート
November 27, 2021 | Art, Travel | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
クリーム色と赤のカラーリングがかわいい小湊鐵道沿線で開催中の『いちはらアート×ミックス2020+』。電車とからむアートがもっと遠くへ旅をさせてくれる芸術祭です。
『いちはらアート×ミックス2020+』が開かれている市原市は千葉県のほぼ中央、房総半島を横切るような形の場所だ。芸術祭の主役はもちろんアートだけれど「アート×ミックス」とあるのがミソ。アートと食、音楽、芝居、ダンスなどさまざまなものがミックスされて楽しみが倍増する。
中でも準主役級の活躍を見せるのが「小湊鐵道」だ。1925年開業、単線で2〜3両編成の車両が18の駅を行き来する。無人駅も多いが、国の登録有形文化財となっている開業当時の姿を残す木造の駅舎群も見逃せない。
中でも準主役級の活躍を見せるのが「小湊鐵道」だ。1925年開業、単線で2〜3両編成の車両が18の駅を行き来する。無人駅も多いが、国の登録有形文化財となっている開業当時の姿を残す木造の駅舎群も見逃せない。
●貴重な蒸気機関車にアートがからむ〈五井機関区〉
そんな旅心満載の芸術祭でのアート・トリップは〈五井機関区〉から始めるのがおすすめだ。たくさんの機械や工具類が並ぶ建物の中で、アーティストが”心臓”と呼ぶ赤いオブジェが上下運動を続けている。作者はロシアのアレクサンドル・ポノマリョフ。作品には《永久機関》というタイトルがついている。ここは現役で車両の整備のために使われている場所だ。鍛冶屋場もあり、補修などが自前で行える体制になっている。ポノマリョフはその”職人魂”にも感銘を受け、この作品を作った。彼はここに保存されている蒸気機関車展示を舞台にしたインスタレーションも制作している。
●駅舎に西野達のホテルが登場!〈上総久保駅〉
旅といえば列車にホテル。というわけで〈上総久保駅〉にはホテルが出現した。といってももちろん普通のホテルではない。バス、トイレがついた客室があるのは駅のホーム、駅舎に続くスペースだ。作者はアーティストの西野達。もちろん中に入ることもできる。ダブルベッドが置かれた客室は線路に向かって全面がガラス張りになっていて、外の景色がよく見える。普段は電車を待つ間だけ滞在する駅のホームが、田園風景や電車をじっくり眺める特別な場所になる。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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