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芸術的セルフポートレートの魔術師、シンディ・シャーマン展が今秋、パリで開催。

| Art | casabrutus.com | text_Chiyo Sagae   Courtesy of the Artist and Metro Pictures, New York © 2019 Cindy Sherman

1970年代より、自身を被写体としたセルフポートレートを撮り続ける女性写真家、シンディ・シャーマン。彼女の大規模な回顧展が、今秋再開するパリの〈フォンダシオン ルイ・ヴィトン〉で開催される。未発表の新作を公開するほか、シンディの協力のもとセレクトした財団所有作品の企画展が話題を呼んでいる。

『無題 #582, 2016』137,2 X 178,4cm
『無題 #582, 2016』137,2 X 178,4cm
9月末、パリ〈フォンダシオン ルイ・ヴィトン〉が約半年ぶりに再オープンする。復活後初となる展示は、70年代から独自のテーマでセルフポートレートを撮り続けるアメリカ人アーティスト、シンディ・シャーマンの回顧展だ。1,500平方メートルの広大な会場に、1975年〜2020年までの170作品、計300点以上の写真が一堂に会すまたとない機会となる。

70年代に鮮烈なデビュー作となった『Untitled film stills』で、白黒映画のノスタルジー溢れるヒロインに扮したシンディ。その後も、男性雑誌のピンナップガールやデザイナーズブランドのファッションモデルに扮したシリーズ『Fashion』で、女優のように早変わりする自身のポートレートを撮影し続けた。80年代半ば以降には、おとぎ話のモンスターに扮した『Fairy Tales』、腐敗した廃棄物にまみれた『Disasters』などで、現代人の深層心理の中のホラーを表現。西洋絵画の登場人物になりすます『History Portraits』も知られている。

常に意外性に溢れ、多彩なセルフポートレートを展開した彼女は、現代美術における「セルフポートレート」の分野を確立した特異なアーティストと言えるだろう。本展ではこうした彼女の歴代の代表作に加え、2010年以降の新しい作品群や、男性に扮したカップルという最新シリーズも公開する。シンディが半世紀近く取り組んできた、自身で作り上げるセルフポートレートによるアイデンティティの操作。それは現代の「自撮り」の世界的な流行を予言するかのようだ。その軌跡に今、再注目したい。
『アンタイトルド・フィルム・スティル #13, 1978』シンディ・シャーマンの代表作の一つ。モノクロのノスタルジー溢れる映画のヒロインに扮したこのシリーズで、1977年に鮮烈なデビューを果たした。
『アンタイトルド・フィルム・スティル #13, 1978』シンディ・シャーマンの代表作の一つ。モノクロのノスタルジー溢れる映画のヒロインに扮したこのシリーズで、1977年に鮮烈なデビューを果たした。
『無題 #92, 1981』モノクロからカラーに移行した80年代にも、映画やドラマの1シーンを思わせる、ストーリー性溢れるセルフポートレートで話題作を多く手がけた。
『無題 #92, 1981』モノクロからカラーに移行した80年代にも、映画やドラマの1シーンを思わせる、ストーリー性溢れるセルフポートレートで話題作を多く手がけた。
『無題 #414, 2003』コスチュームからメイクまで、毎回入念に作り上げるシンディ。ピエロも、シンディが長年扮し続けるシリーズの一つ。
『無題 #414, 2003』コスチュームからメイクまで、毎回入念に作り上げるシンディ。ピエロも、シンディが長年扮し続けるシリーズの一つ。
『無題 #465, 2008』歴史的肖像画のシリーズ作品より。イタリア式庭園を思わせる背景でのセルフポートレート。
『無題 #465, 2008』歴史的肖像画のシリーズ作品より。イタリア式庭園を思わせる背景でのセルフポートレート。
『無題 #584, 2018』2010年代初頭から最近にかけての作品に重点を置く今回の展覧会。まるで姉妹が並ぶかのような近年の作品も、興味深い。
『無題 #584, 2018』2010年代初頭から最近にかけての作品に重点を置く今回の展覧会。まるで姉妹が並ぶかのような近年の作品も、興味深い。
『アンタイトルド・フィルム・スティル #13, 1978』シンディ・シャーマンの代表作の一つ。モノクロのノスタルジー溢れる映画のヒロインに扮したこのシリーズで、1977年に鮮烈なデビューを果たした。
『無題 #92, 1981』モノクロからカラーに移行した80年代にも、映画やドラマの1シーンを思わせる、ストーリー性溢れるセルフポートレートで話題作を多く手がけた。
『無題 #414, 2003』コスチュームからメイクまで、毎回入念に作り上げるシンディ。ピエロも、シンディが長年扮し続けるシリーズの一つ。
『無題 #465, 2008』歴史的肖像画のシリーズ作品より。イタリア式庭園を思わせる背景でのセルフポートレート。
『無題 #584, 2018』2010年代初頭から最近にかけての作品に重点を置く今回の展覧会。まるで姉妹が並ぶかのような近年の作品も、興味深い。
もう一つの見どころは、財団の所蔵作品の中から選ばれた世代、分野、国籍の異なるアーティスト20人の約60作品を展示する企画展『Crossing Views』だ。展示作品は「ポートレート」というテーマを軸に、シンディと協力のもと財団の所蔵作品からセレクト。その中には、クリスチャン・ボルタンスキー、ルイス・ブルジョワ、ダミアン・ハースト、アンディ・ウォーホール、ヴォルフガング・ティルマンス、ザネレ・ムホリなど、そのほとんどが財団での初展示となる貴重な作品群が含まれる。こうした形で所蔵品を展示するコレクション展も、財団初の試みとして興味深いポイントだ。
アンディー・ウォーホル『Ladies & Gentlemen, 1975』©The Andy Warhol Foundaition for the Visual Arts, Inc / Licensed by Adagp Paris, 2020
アンディー・ウォーホル『Ladies & Gentlemen, 1975』©The Andy Warhol Foundaition for the Visual Arts, Inc / Licensed by Adagp Paris, 2020
ルイス・ブルジョワの造形作品『No exit, 1989』。© The Easton Foundation / Adagp Paris 2020 © Primae / David Bordes
ルイス・ブルジョワの造形作品『No exit, 1989』。© The Easton Foundation / Adagp Paris 2020 © Primae / David Bordes
ヴォルフガング・ティルマンス『Hair Cut, 2007』© Wolfgang Tillmans
ヴォルフガング・ティルマンス『Hair Cut, 2007』© Wolfgang Tillmans
南アフリカを拠点に活動するヴィジュアル・アクティビスト、ザネレ・ムホリの肖像写真シリーズ『Somnyama Ngonyama』より、『Thembekile, Parktown, 2015』。© Zanele Muholi
南アフリカを拠点に活動するヴィジュアル・アクティビスト、ザネレ・ムホリの肖像写真シリーズ『Somnyama Ngonyama』より、『Thembekile, Parktown, 2015』。© Zanele Muholi
アンディー・ウォーホル『Ladies & Gentlemen, 1975』©The Andy Warhol Foundaition for the Visual Arts, Inc / Licensed by Adagp Paris, 2020
ルイス・ブルジョワの造形作品『No exit, 1989』。© The Easton Foundation / Adagp Paris 2020 © Primae / David Bordes
ヴォルフガング・ティルマンス『Hair Cut, 2007』© Wolfgang Tillmans
南アフリカを拠点に活動するヴィジュアル・アクティビスト、ザネレ・ムホリの肖像写真シリーズ『Somnyama Ngonyama』より、『Thembekile, Parktown, 2015』。© Zanele Muholi

『シンディ・シャーマン』展

〈フォンダシオン ルイ・ヴィトン〉
8 Avenue du Mahatma Gandhi, Bois de Boulogne 75116 Paris. TEL +33 1 40 69 96 00。9月23日~2021年1月3日。11時~20時(金曜~21時、土曜・日曜10時~)。火曜休。入館料14ユーロ。

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