ART
記憶を巡る風景 森本美絵写真展:去りながら
October 29, 2015 | Art | casabrutus.com | text_Keiko Kamijo editor_Akio Mitomi
いつか見た風景。しかし、誰の記憶なのか、物語の中なのか、頭の中の妄想なのか──。写真家・森本美絵の個展「去りながら」が、キヤノンギャラリーSで開催中だ。
どこの国なのか、いつの時代かすらわからない。そんな風景を森本はスナップの手法で撮り続ける。今回は近作を中心とした構成になるという。会場には、場所や時代を示すキャプションなどはなく、鑑賞者は写真を見ながら自由に想像を巡らせていた。6×6。すべて正方形で風景は切り取られている。
普段の森本の写真は、いわゆるホワイトキューブと呼ばれる普通のギャラリーや美術館、“白い”空間の中で展示されることが多い。しかし、今回は真っ黒い壁の中にポンと風景が浮き出てきたような感じだ。また、過去に展示してきた中で一番広い空間になるのだという。今回の展示について森本はこう語った。
「自分の写真には白い壁が合うとずっと思っていました。でもギャラリーを見た時に、もともとある空間を生かしたいと思ったんです。選ぼうと思えば壁の色は選べたのですが、空間全体を明るく見せるというよりはそのままの壁の色である、黒にしようと。額装に関しても、全部額に入れると少し窮屈に思えたので、ワンオフで厚みのある水貼りを、サイズも変えて数種類作りました」
プリントはそのまま壁に貼られているわけではなく、厚みのある土台に回り込ませる形で絵画のような物質感がある。それがある種独特な浮遊感を醸し出している。そこに写っているのは誰で地名はどこなのかという名前に縛られない、現実から一歩浮いて、記憶の中の風景を探っているような感覚になる。
森本は普段からフィルムで撮影をしている。今回の展示では、キヤノンのギャラリーで新たな挑戦をしたいという意味もあり、フィルムを自身でネガスキャンし、そのデータをキヤノンの大判プリンターで出力した。最近は雑誌や書籍などの仕事はデータ入稿が基本なので、ほとんどの写真家がデジタルカメラを使っているが、フィルムで撮影をする写真家も少なくない。その場合、写真家がフィルムを現像してプリントを入稿し、それを印刷会社や業者がデジタル化するという工程がとられる。デジタル化の工程を自身で行うことは、写真と向き合うことに時間を費やすということなのかもしれない。この工程は森本にとって新鮮だったという。
「自分の写真には白い壁が合うとずっと思っていました。でもギャラリーを見た時に、もともとある空間を生かしたいと思ったんです。選ぼうと思えば壁の色は選べたのですが、空間全体を明るく見せるというよりはそのままの壁の色である、黒にしようと。額装に関しても、全部額に入れると少し窮屈に思えたので、ワンオフで厚みのある水貼りを、サイズも変えて数種類作りました」
プリントはそのまま壁に貼られているわけではなく、厚みのある土台に回り込ませる形で絵画のような物質感がある。それがある種独特な浮遊感を醸し出している。そこに写っているのは誰で地名はどこなのかという名前に縛られない、現実から一歩浮いて、記憶の中の風景を探っているような感覚になる。
森本は普段からフィルムで撮影をしている。今回の展示では、キヤノンのギャラリーで新たな挑戦をしたいという意味もあり、フィルムを自身でネガスキャンし、そのデータをキヤノンの大判プリンターで出力した。最近は雑誌や書籍などの仕事はデータ入稿が基本なので、ほとんどの写真家がデジタルカメラを使っているが、フィルムで撮影をする写真家も少なくない。その場合、写真家がフィルムを現像してプリントを入稿し、それを印刷会社や業者がデジタル化するという工程がとられる。デジタル化の工程を自身で行うことは、写真と向き合うことに時間を費やすということなのかもしれない。この工程は森本にとって新鮮だったという。
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