ニッポンのお宝、お蔵出し|早春の梅が香る光琳デザイン。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ニッポンのお宝、お蔵出し|早春の梅が香る光琳デザイン。

季節に応じて床の間の軸を替えるように絵や彫刻を愛でる。今回は尾形光琳の《紅白梅図屏風》を紹介します。

国宝 尾形光琳《紅白梅図屏風》18世紀。紙本金地著色 二曲一双。各 156.0×172.2㎝。心浮き立つ金地の屏風は春の始まりにふさわしい。
国宝 尾形光琳《紅白梅図屏風》18世紀。紙本金地著色 二曲一双。各 156.0×172.2㎝。心浮き立つ金地の屏風は春の始まりにふさわしい。
日本美術、特に絵画は傷みやすいため、西洋美術と違って限られた期間にしか公開されません。ルーヴル美術館の《モナ・リザ》のようにいつもそこにあるわけではないので、展示されるチャンスを逃さないようにしたいもの。本連載では、今見るべき日本美術の至宝をご紹介!

◾️今回のお宝:尾形光琳《紅白梅図屏風》
◾️お宝ポイント:意匠化された梅、「たらし込み」による木の幹の質感や苔の表現、S字型にカーブする水流。技法や素材については未だ謎多き国宝。
◾️公開期間:2018年1月26日〜3月13日
◾️公開場所:〈MOA美術館〉


華やかな金地に描かれた、他の花に先駆けて春を知らせる梅の木。国宝《紅白梅図屏風》は尾形光琳の晩年の傑作だ。二曲一双(二つ折りの屏風を2つ、対にしたもの)の屏風に紅梅と白梅、その間に水流が描かれる。
国宝 尾形光琳《紅白梅図屏風》(部分)。後に「光琳梅」と呼ばれるようになった、愛らしい梅の花。
梅の花は意匠化されて、5枚の花びらがひとまとまりにして描かれる。後に「光琳梅」と呼ばれる、光琳独特の描き方だ。それに対して木の幹は具象的だ。光琳が俵屋宗達に学んだ「たらし込み」(絵の具が乾ききらないうちに他の色を載せ、自然なにじみや混色を作り出す)という手法によって、ごつごつした感じや苔などを表現している。枝は大胆にトリミングされて、屏風の外への広がりを感じさせる。水流は完全にデザイン化され、墨流しのような紋様になっている。
国宝 尾形光琳《紅白梅図屏風》(部分)。「たらし込み」によって木の幹の質感や苔が表現されている。
シンプルな構図だが、技法や素材については謎も多い。背景の金地には縦横の線が見えるが、以前は金泥を塗って金箔のように見せているとの説もあった。が、所蔵する〈MOA美術館〉の協力で行われた近年の研究では金箔を使ったとの結論が出ている。水流には銀箔を貼り、ドーサ(礬水。にかわとミョウバンを混ぜた水)か類似の物質で流水紋を描き、硫化(硫黄との化合)させたと考えられている。ドーサなどを塗ったところはマスキングされて銀色が残り、塗っていないところは硫黄分によって黒くなるという仕掛けだ。
国宝 尾形光琳《紅白梅図屏風》(部分)。銀箔が使われたと考えられる水流。S字型にカーブする水流は「光琳波」とも呼ばれる。
この説が正しければ、制作当時は水紋の銀が今よりも白く輝いていたことだろう。金と銀のコントラストが紅梅、白梅の対比を引き立てたはずだ。光琳は呉服屋の子として生まれ、自らも着物のデザインを手がけたとされる。独特のデザイン感覚は今も新しい。

この絵では図像学的解釈も試みられている。2本の梅の木が男性、水流が女性を表すとして三角関係を読み取るもの、光琳がリスペクトしていた俵屋宗達の《風神雷神図》の二体の神を梅の木に置き換えたと考えるもの、壺型の水流が御造酒で紅白梅は水引を象徴するというものなどさまざまだ。どれが正しいのか、それとも正解はまったく違うものなのか、天国の光琳に尋ねてみたくなる。

参考文献:『国宝 紅白梅図屏風』東京文化財研究所情報調整室、MOA美術館・編、中央公論美術出版

●見目麗しい「紅白梅羊羹」も期間限定で登場!

会期中は、館内の〈茶室 一白庵〉にて、半田松華堂製の「紅白梅羊羹」もいただける(数量限定/お抹茶とセットで700円)。

所蔵 名品展 尾形光琳 国宝「紅白梅図屏風」

〈MOA美術館〉

静岡県熱海市桃山町26-2
TEL 0557 84 2511。1月26日〜3月13日。9時30分~16時30分。1600円。木曜休。