ART
猪子寿之が語る。水戸〈偕楽園〉で見せる光のアートが持つ意味とは?
March 6, 2021 | Art, Travel | casabrutus.com | text_Akiko Miyaura
茨城県水戸市〈偕楽園〉の「水戸の梅まつり」にあわせ、『チームラボ 偕楽園 光の祭』が開催中。チームラボが継続的に行ってきたプロジェクト《Digitized Nature》の力を結集し、約3000本の梅が咲き誇る庭を光のアート空間に変えています。その展覧会に込めた思いを、チームラボ代表の猪子寿之さんに聞きました。
2015年ごろからチームラボが始めた《Digitized Nature》は、非物質的であるデジタルテクノロジーによって、自然を破壊することなく「自然そのものが自然のままアートになる」というプロジェクト。
これまで京都府の〈下鴨神社〉や山口県の〈ときわ公園〉、佐賀県の〈御船山楽園〉など、日本各地の野外を舞台に展開している。
これまで京都府の〈下鴨神社〉や山口県の〈ときわ公園〉、佐賀県の〈御船山楽園〉など、日本各地の野外を舞台に展開している。
〈偕楽園〉東門からのルートで庭園に入ると、最初に目にするのは広大な庭に広がる梅林。鮮やかな光で照らし出した梅の木は、人が通りかかることで強く輝き、幻想的な音を響かせる。光と音が放射状に梅の木に伝播していく、インタラクティブなこの作品が《生命は連続する光》だ。
また、まるでアートのように剪定された松とつつじを照らす《呼応する松とつつじ》でも、同様のアプローチを展開している。暗闇の中で光と音が生き物のごとく、広がっていく風景は圧巻だ。
梅の木しか見えないような設計を施したことで、この光景が実現しているとチームラボ代表の猪子寿之は話す。
「人間の脳は賢いので、昼間は無意識に周りの建物を認識して、“有限性”を感じちゃうんです。でも、夜という環境の中、梅だけが見える設計にすることで、無限に梅林が続くんじゃないかと感じる世界が生まれる。まるで、梅の森に埋没したかのようなーー。きっとひとりで来たら、戻ってこられないかもと思うほどの無限性が、ここにはあるんじゃないかな(笑)」
また、チームラボの屋内展示ではミラーが多く使われるが、猪子いわく、「ミラーを使わずして、これだけの無限性を設計できたのは僕らも初めて。永遠の彼方から、光がやってきたかのような、不思議な体験をしてもらえると思います」
また、まるでアートのように剪定された松とつつじを照らす《呼応する松とつつじ》でも、同様のアプローチを展開している。暗闇の中で光と音が生き物のごとく、広がっていく風景は圧巻だ。
梅の木しか見えないような設計を施したことで、この光景が実現しているとチームラボ代表の猪子寿之は話す。
「人間の脳は賢いので、昼間は無意識に周りの建物を認識して、“有限性”を感じちゃうんです。でも、夜という環境の中、梅だけが見える設計にすることで、無限に梅林が続くんじゃないかと感じる世界が生まれる。まるで、梅の森に埋没したかのようなーー。きっとひとりで来たら、戻ってこられないかもと思うほどの無限性が、ここにはあるんじゃないかな(笑)」
また、チームラボの屋内展示ではミラーが多く使われるが、猪子いわく、「ミラーを使わずして、これだけの無限性を設計できたのは僕らも初めて。永遠の彼方から、光がやってきたかのような、不思議な体験をしてもらえると思います」
日本三名園のひとつである〈偕楽園〉は、水戸藩第9代藩主・徳川斉昭公によって、江戸時代(1842年)に開園された。梅の花が咲き誇る「陽」の世界と、幽玄の世界のような静けさを感じる「陰」の世界を意図して作られた庭でもある。
今回のチームラボの展覧会も、「陰陽の世界」を生かした設計になっている。先の梅林、つつじと松が咲く「陽」世界を抜け、古めかしい門をくぐると一気に神秘的な「陰」の世界に迷い込む。
この「陰の部分こそが、長い時間を感じられる場所」だと猪子は言う。
「人間って、一昨日が昨日に連続していることも、昨日が今日に繋がっているも知っているのに、自分が生きている時間より長いものに出会うと、突然その連続性が分断して境界ができるんです。江戸時代なんてフィクションと変わらないでしょ?(笑) でも、この偕楽園の歴史も今と続いていて、その上に自分の存在がある。今回の経験を通じて、時間の連続性に対する境界を超える体験を作れたらなと思いますね」
門の先にある大杉林にグリッド状の映像を投影した作品は、《具象と抽象 - 陽と陰の狭間》と名付けられている。人が関与していないときは、林の上に整然と縦横のラインが行き交うが、グリッドに人が入って立ち止まると新しい線の集合が生まれ、立体的な作品になっていく。
また、50年以上前の台風で倒木となった「次郎杉」と、樹齢約800年と言われる巨木「太郎杉」に映し出すのは艶やかな花々の映像。1時間で12カ月の花々が生まれては咲き、やがて散っていくという生命の営みを永遠に繰り返す。果てしない時間を生きてきた杉に映し出される花々の命の循環が、生命の連続性を認識させてくれるはずだ。
この杉に関して、猪子は「長い時間を経たからこその形、テクスチャーですよね。それこそが、時間に対する認識の境界を越えるきっかけになると思うんです」と話す。
今回のチームラボの展覧会も、「陰陽の世界」を生かした設計になっている。先の梅林、つつじと松が咲く「陽」世界を抜け、古めかしい門をくぐると一気に神秘的な「陰」の世界に迷い込む。
この「陰の部分こそが、長い時間を感じられる場所」だと猪子は言う。
「人間って、一昨日が昨日に連続していることも、昨日が今日に繋がっているも知っているのに、自分が生きている時間より長いものに出会うと、突然その連続性が分断して境界ができるんです。江戸時代なんてフィクションと変わらないでしょ?(笑) でも、この偕楽園の歴史も今と続いていて、その上に自分の存在がある。今回の経験を通じて、時間の連続性に対する境界を超える体験を作れたらなと思いますね」
門の先にある大杉林にグリッド状の映像を投影した作品は、《具象と抽象 - 陽と陰の狭間》と名付けられている。人が関与していないときは、林の上に整然と縦横のラインが行き交うが、グリッドに人が入って立ち止まると新しい線の集合が生まれ、立体的な作品になっていく。
また、50年以上前の台風で倒木となった「次郎杉」と、樹齢約800年と言われる巨木「太郎杉」に映し出すのは艶やかな花々の映像。1時間で12カ月の花々が生まれては咲き、やがて散っていくという生命の営みを永遠に繰り返す。果てしない時間を生きてきた杉に映し出される花々の命の循環が、生命の連続性を認識させてくれるはずだ。
この杉に関して、猪子は「長い時間を経たからこその形、テクスチャーですよね。それこそが、時間に対する認識の境界を越えるきっかけになると思うんです」と話す。
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