猪子寿之が語る。水戸〈偕楽園〉で見せる光のアートが持つ意味とは? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

猪子寿之が語る。水戸〈偕楽園〉で見せる光のアートが持つ意味とは?

茨城県水戸市〈偕楽園〉の「水戸の梅まつり」にあわせ、『チームラボ 偕楽園 光の祭』が開催中。チームラボが継続的に行ってきたプロジェクト《Digitized Nature》の力を結集し、約3000本の梅が咲き誇る庭を光のアート空間に変えています。その展覧会に込めた思いを、チームラボ代表の猪子寿之さんに聞きました。

《自立しつつも呼応する生命と呼応する大杉森》木々と卵形の光の「ovoid」が人の存在に呼応する。teamLab,2021,Interactive Digital Installation,Endless,Sound:Hideaki Takahashi
2015年ごろからチームラボが始めた《Digitized Nature》は、非物質的であるデジタルテクノロジーによって、自然を破壊することなく「自然そのものが自然のままアートになる」というプロジェクト。

これまで京都府の〈下鴨神社〉や山口県の〈ときわ公園〉、佐賀県の〈御船山楽園〉など、日本各地の野外を舞台に展開している。
《生命は連続する光 - 梅林》「この広大な土地だからこそ、無限性を表現できた」と猪子氏も話す梅林。teamLab,2021,Interactive Digitized Nature,Sound:teamLab
《生命は連続する光 - 梅林》約100種類の梅は、時期によってどんどん咲き変わるため、行くたびに違った表情を楽しめる。teamLab,2021,Interactive Digitized Nature,Sound:teamLab
《呼応する松とつつじ》人に呼応して光る木々を見て、人々は同じ空間にいる他の人々の存在を普段より意識する。teamLab,2021,Interactive Digitized Nature,Sound:Hideaki Takahashi
《生命は連続する光 - 梅林》teamLab,2021,Interactive Digitized Nature,Sound:teamLab
〈偕楽園〉東門からのルートで庭園に入ると、最初に目にするのは広大な庭に広がる梅林。鮮やかな光で照らし出した梅の木は、人が通りかかることで強く輝き、幻想的な音を響かせる。光と音が放射状に梅の木に伝播していく、インタラクティブなこの作品が《生命は連続する光》だ。

また、まるでアートのように剪定された松とつつじを照らす《呼応する松とつつじ》でも、同様のアプローチを展開している。暗闇の中で光と音が生き物のごとく、広がっていく風景は圧巻だ。

梅の木しか見えないような設計を施したことで、この光景が実現しているとチームラボ代表の猪子寿之は話す。

「人間の脳は賢いので、昼間は無意識に周りの建物を認識して、“有限性”を感じちゃうんです。でも、夜という環境の中、梅だけが見える設計にすることで、無限に梅林が続くんじゃないかと感じる世界が生まれる。まるで、梅の森に埋没したかのようなーー。きっとひとりで来たら、戻ってこられないかもと思うほどの無限性が、ここにはあるんじゃないかな(笑)」

また、チームラボの屋内展示ではミラーが多く使われるが、猪子いわく、「ミラーを使わずして、これだけの無限性を設計できたのは僕らも初めて。永遠の彼方から、光がやってきたかのような、不思議な体験をしてもらえると思います」
《増殖する生命の巨木 - 太郎杉》樹齢約800年の杉は、樹高約25m、幹回り約5.7m)の巨木。長い月をかけて作られたテクスチャーの上で、花々が誕生と死滅を永遠に繰り返す。teamLab,2021,Digitized Nature,Sound:Hideaki Takahashi
《増殖する生命の倒木 - 次郎杉》1964年の大型台風で倒木となった大木の幹の内側の腐り落ちた空洞に、花々が永遠に咲いては散っていく。teamLab,2021,Digitized Nature,Sound:Hideaki Takahashi
《増殖する生命の倒木 - 次郎杉》1時間で12ヵ月の花々が映し出されるプログラムの中で、映像はリアルタイムで生成される。teamLab,2021,Digitized Nature,Sound:Hideaki Takahashi
《具象と抽象 - 陽と陰の狭間》庭園の「陽の世界」とクマザサ、大杉森、孟宗竹林が茂る幽暗閑寂な「陰の世界」の境界にある作品。人が入ると新たなグリッドが派生し、林が平面のレイヤーになる瞬間が生まれる。teamLab,2021,Interactive Digital Nature,Sound:Hideaki Takahashi
日本三名園のひとつである〈偕楽園〉は、水戸藩第9代藩主・徳川斉昭公によって、江戸時代(1842年)に開園された。梅の花が咲き誇る「陽」の世界と、幽玄の世界のような静けさを感じる「陰」の世界を意図して作られた庭でもある。

今回のチームラボの展覧会も、「陰陽の世界」を生かした設計になっている。先の梅林、つつじと松が咲く「陽」世界を抜け、古めかしい門をくぐると一気に神秘的な「陰」の世界に迷い込む。

この「陰の部分こそが、長い時間を感じられる場所」だと猪子は言う。

「人間って、一昨日が昨日に連続していることも、昨日が今日に繋がっているも知っているのに、自分が生きている時間より長いものに出会うと、突然その連続性が分断して境界ができるんです。江戸時代なんてフィクションと変わらないでしょ?(笑) でも、この偕楽園の歴史も今と続いていて、その上に自分の存在がある。今回の経験を通じて、時間の連続性に対する境界を超える体験を作れたらなと思いますね」

門の先にある大杉林にグリッド状の映像を投影した作品は、《具象と抽象 - 陽と陰の狭間》と名付けられている。人が関与していないときは、林の上に整然と縦横のラインが行き交うが、グリッドに人が入って立ち止まると新しい線の集合が生まれ、立体的な作品になっていく。

また、50年以上前の台風で倒木となった「次郎杉」と、樹齢約800年と言われる巨木「太郎杉」に映し出すのは艶やかな花々の映像。1時間で12カ月の花々が生まれては咲き、やがて散っていくという生命の営みを永遠に繰り返す。果てしない時間を生きてきた杉に映し出される花々の命の循環が、生命の連続性を認識させてくれるはずだ。

この杉に関して、猪子は「長い時間を経たからこその形、テクスチャーですよね。それこそが、時間に対する認識の境界を越えるきっかけになると思うんです」と話す。

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