新発見の写真で見せる、知られざるソール・ライター。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

新発見の写真で見せる、知られざるソール・ライター。

『カーサ ブルータス』2020年3月号より

ニューヨークの幻の写真家、ソール・ライターが帰ってきた! 2年前の個展で人気となった写真家が残した写真。そこには彼のプライベートな視点がありました。

〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉の個展会場で初公開のカラースライドによるプロジェクション。中央がソール・ライターのスライド、左右は写真家・井津由美子が撮影したスタジオと周辺の写真。
デジタル展示:ソール・ライターのスライドプロダクション
〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉の個展会場で初公開のカラースライドによるプロジェクション。中央がソール・ライターのスライド、左右は写真家・井津由美子が撮影したスタジオと周辺の写真。 デジタル展示:ソール・ライターのスライドプロダクション
2017年の個展『ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター』で多くの人を魅了したソール・ライター。現在開催中の『永遠のソール・ライター』展はその後、彼の作品を管理する「ソール・ライター財団」が新たに “発掘” した作品を中心にしたものだ。

今回話を聞いた財団ディレクターのマーギット・アーブは1995年、ニューヨークの写真ギャラリー、ハワード・グリーンバーグ・ギャラリーに勤務していたときに彼と出会い、アシスタントを務めた。50〜80年代にファッション写真で一世を風靡したソールはその頃、仕事がほとんどなく、半ば忘れられた存在だった。
雨に濡れた窓ガラス越しの風景。
ソール・ライター 《帽子》 1960年頃、発色現像方式印画
(c) Saul Leiter Foundation
「彼はよく、ギャラリーのキッチンでコーヒーを飲んでいました。好奇心が旺盛で会う人を質問攻めにするのです。ユーモアのセンスがあっていつもにこにこしている、チャーミングな人でした」

仕事場には作品の整理のため、週に1回のペースで通っていた。

「一緒に映画を見たり、近所を散歩するのに付き合ったりもしました。彼はいつでもカメラを持っているのです。ふと会話が途切れて沈黙が流れると彼が撮っていた、ということもよくありました」

ソールはとりわけ、雨や雪などによって普段とは違って見える景色に惹かれていたという。

「雪が積もった街角や雨に濡れた窓ごしの景色、傘などに心を動かされていたようです。お店のショーウィンドウなどに自分や周りの景色が反射するのもよく撮っていました。もともと画家志望だった彼は世界を写真家としてだけでなく、画家としても見ていた。だから彼は色に敏感だったのです」
1950年代の後半に出会ったソームズは売り出し中のモデルだった。
ソールが「スニペット」と呼んだ小さなプリント。手でちぎった跡がある。
スケッチブックに描きためた絵。
セルフポートレート。彼は1923年生まれ。2013年に没した。
1950年代の後半に出会ったソームズは売り出し中のモデルだった。
ソールが「スニペット」と呼んだ小さなプリント。手でちぎった跡がある。
スケッチブックに描きためた絵。
セルフポートレート。彼は1923年生まれ。2013年に没した。
会場にはソールの恋人だったソームズ・バントリーの写真も。

「ソールの写真の中でソームズは自発的にさまざまなポーズをとっています。彼らは対等であり、ソームズの写真は二人のコミュニケーションから生まれた “合作“ なのです。ソールはファッション写真でもモデルの内面の美を表現しようとしていました。女性の地位がまだ低かった50年代に彼の姿勢は先進的だったと思います」

マーギットには引き続き “発掘” 作業が待っている。

「コンタクトシートからは彼が一つのアングルで5回ぐらいしかシャッターを切っていないことがわかります。他の写真家なら1ロール(36枚)、3ロールと撮影することもあることを考えると、彼はほんとうに特別です。仕事場にはまだまだ “お宝” が山積みになっている。これからどんなものが見つかるのか、楽しみです」
仕事場に残された家具や油彩画で彼のアパートを再現。

マーギット・アーブ

ソール・ライター財団ディレクター。『Early Color』などの写真集制作に協力、映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』を共同制作。

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