神戸に潜む亡霊たちを探す芸術祭へ|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

神戸に潜む亡霊たちを探す芸術祭へ|青野尚子の今週末見るべきアート

特に変わったところもなさそうな街の中で、建物や部屋を丸ごとアートにした空間に潜入する。海の上から野外劇を見る。そんな超個性的なアート・プロジェクトが神戸で始まりました。かなり強烈な体験ができるアートです。

【第3留】グレゴール・シュナイダー《消えた現実》。衛生研究所の屋上に据えられた檻がカラフルに塗装されている。
『アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-』と名付けられた本イベントに参加するアーティストは2人だけ。ドイツ出身のグレゴール・シュナイダーと地元、神戸出身のやなぎみわだ。美術作品の発表と野外劇を並行させているやなぎは、今回、ステージトレーラーによる《日輪の翼》の上演を3日間だけ行うため、期間内にアートとして楽しめるのはシュナイダーの作品のみ。まるで彼の個展のような感じになる。
【第8留】グレゴール・シュナイダー《住居の暗部》。何もかもが黒く塗りつぶされた空間。
シュナイダーはドイツの地方都市・ライトの出身。16歳の頃から自宅を改修してアート作品にする「u r」というシリーズを始めた。家具や小物までまったく同じ部屋のある双子のような家をつくる、コーヒーを飲む間に部屋が一回転して元に戻る、人が気づかないほどの速度で上下する天井のある部屋といった作品だ。2001年の『ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展』ではドイツ館の中に「u r」を再現、まるごと廃墟のような空間に変えてしまった。2014年の『横浜トリエンナーレ』では美術館の窓のない小部屋の床一面に泥を敷き詰めるといった作品を発表している。
【第3留】グレゴール・シュナイダー《消えた現実》。この建物で感染症などの研究が行われていた。
今回の作品《美術館の終焉—12の道行き》は部屋ひとつ、あるいは建物一軒といったスケールではなく、およそ3キロ四方程度のエリアに広がる大作だ。観客は点々と配置された「留」という12のスポットを巡りながら、彼が作り出した空間と時間のアートに入り込んでいくことになる。

「これまでは家の中の空間だったけれど、それをさらに街に広げた。僕にとっては大きなチャレンジだった」とシュナイダーは言う。
【第1留】グレゴール・シュナイダー《死にゆくこと、生きながらえること》。高精度3Dスキャナで体の三次元データを測定する。
神戸ハーバーランドの玄関口に位置する「デュオドーム」に設置された第1・2留はいわばプロローグだ。第1留《死にゆくこと、生きながらえること》ではお年寄りが体の3Dスキャンをされている。第2留《ドッペルゲンガー》ではスクリーンの向こうとこちらで同じ動作をする人が。鏡のようだが、背景は別の場所だ。いったいどういうことなのか? その謎は「12の道行き」の最後で明かされる。そこまではたたみかけるように、何かの暗部をのぞき込むような気持ちになる作品が続く。