中村好文さんに聞いた、台所づくりの極意。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

中村好文さんに聞いた、台所づくりの極意。

『カーサ ブルータス』2020年12月号より

住宅設計の名手・中村好文さんに、台所への思いが詰まった新刊について聞きました。

来年開設40周年を迎える〈レミングハウス〉4代目の台所。ランチは毎日交代制で作る。
鳩時計が正午を告げると、スタッフがテーブルに集まってくる。「さて、今日は何を作って食べようか?」。これが〈レミングハウス〉の昼休みだ。これまで300軒以上の住宅を手がけてきた料理好きの建築家・中村好文が、珠玉の台所を紹介した『百戦錬磨の台所 vol.1』を上梓した。

Q 30年以上「まかないランチ」を続けているそうですね。

僕は住宅作品を設計しているのではなく、人の住まいを設計していますから、常々、普通の人の暮らしを忘れてはいけないと肝に銘じています。料理をし、食材を買いに出ることで、季節感を感じることも、市井の暮らしのセンスを身につけることもできます。住宅を設計する建築家にはそういうセンスが不可欠だと思うのです。
〈ミナ ペルホネン〉の保養所にある、麺類を打つための引き出し式作業テーブル。
棚板や巾木の切れ端などをかき集めて作られた、シンプルな配膳台兼食器棚。
「体の動きに対して非常に合理的な形。何度も見に行っています」という奈良・今井町の勾玉形の竈。
Q 「町の仕立て屋(テイラー)」のようになりたいという言葉が印象的でした。

昔は身近に仕立て屋がいっぱいいました。その人の体型だけでなく体癖まで見抜いて服を仕立てるんです。そういう仕事がいいなあと思って、普段着の住宅を仕立てる住宅建築家になろうと思いました。台所は暮らしが顕著に表れる場所。100の家には100通りの台所があるところがおもしろいです。
中村が2007年に手がけた〈つのだ夫妻の家〉の間取り図。家全体から考えたとき最も自然な動線になっている。
台所の平面図。
実際の台所はこちら。つのだ夫妻は短い言葉だけを交わし、阿吽の呼吸で動く。流し台背後の配膳棚との間は、二人がちょうどすれ違える約90cm。今夜のご馳走も紹介している。
Q 本書で特に注目すべき点はどこでしょうか?

今回、台所の図面だけでなく家の間取り図も載せています。これは部屋全体における台所の位置を示すために載せているのでぜひ見てほしいです。台所内部だけでなく、動線計画を辿ってもらうとその家の台所の価値がわかります。建築家が台所を設計する意味はそこにあると思うのです。
なかむらよしふみ 建築家。1948年千葉県生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業。1981年〈レミングハウス〉設立。主な作品に〈三谷さんの家〉〈伊丹十三記念館〉〈明月谷の家〉など。著書も多数。

『中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1』

夫婦の住宅、独居の小屋から事務所の台所まで300軒を手がけた住宅建築家・中村好文。彼の設計術と実践的な生活センスを紹介する。学芸出版社/2,700円。2021年にvol.2も発売予定。

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