DESIGN
セシリエ・マンツと深澤直人に聞く〈マルニ木工〉新作家具。
May 25, 2022 | Design | photo_Masanori Kaneshita (portraits), Yoneo Kawabe (products) text_Takahiro Tsuchida editor_Akio Mitomi
2008年に椅子《HIROSHIMA》を発表して以来、深澤直人とジャスパー・モリソンがデザインする家具だけをラインアップしてきた〈マルニ木工〉の〈MARUNI COLLECTION〉。今年、そこに3人目のデザイナーとしてデンマークのセシリエ・マンツが加わることになった。来日した彼女と、〈MARUNI COLLECTION〉のアートディレクターでもある深澤が、待望の新作について語る。
〈マルニ木工〉の〈MARUNI COLLECTION〉は、スタートから10年以上にわたり、深澤直人とジャスパー・モリソンのふたりがそれぞれに家具のデザインを手がけてきた。彼らは2006年から共同で「スーパーノーマル」展を開催するなど、デザインシーンにおける同志のような間柄。そんな〈MARUNI COLLECTION〉に、3人目のデザイナーとして起用されたのがデンマークのセシリエ・マンツだ。その経緯を、深澤はこう説明する。
「新しいデザイナーを迎えたいという話は以前からあったのですが、それは誰かと考えた時、自然にセシリエさんの存在が立ち上がってきた。デンマークは、木の家具を作る上で、僕自身も〈マルニ木工〉も影響されてきた国です。現在、彼女はこの国のコアにいるデザイナーであり、いろんな条件も考え合わせて『そうだよね』ということになりました」
このコラボレーションのためにマンツが日本を訪れ、初めて打ち合わせに臨んだのは約4年前のこと。ただし家具をデザインするにあたり、深澤や〈マルニ木工〉からこれといったリクエストはなかったのだと、彼女は話す。
「最初からオープンな雰囲気で、私を信頼してくれていることが伝わってきました。だから〈MARUNI COLLECTION〉のために何をつくるべきかを自分で考え、提案したのです。私にとって深澤さんやジャスパー・モリソンは“神”。シンプルでクリーンなデザインをするには大変な勇気がいるものですが、それを体現している特別な存在です」
深澤とモリソンが築き上げた〈MARUNI COLLECTION〉のトーンを意識しながらも、《EN》コレクションにはマンツらしさがはっきりと表現されている。彼女はまず、人が集まる力をもつ「丸いテーブル」を発想し、次に座る人を包むような丸い背もたれへとイメージを広げていった。椅子の脚部は特徴的なループフレームとし、さらにその構造をテーブルの脚部へと応用したという。《EN》というネーミングは、デンマーク語で「1」を表すとともに、日本語の「円」「縁」の意味が重ねてある。
「新しいデザイナーを迎えたいという話は以前からあったのですが、それは誰かと考えた時、自然にセシリエさんの存在が立ち上がってきた。デンマークは、木の家具を作る上で、僕自身も〈マルニ木工〉も影響されてきた国です。現在、彼女はこの国のコアにいるデザイナーであり、いろんな条件も考え合わせて『そうだよね』ということになりました」
このコラボレーションのためにマンツが日本を訪れ、初めて打ち合わせに臨んだのは約4年前のこと。ただし家具をデザインするにあたり、深澤や〈マルニ木工〉からこれといったリクエストはなかったのだと、彼女は話す。
「最初からオープンな雰囲気で、私を信頼してくれていることが伝わってきました。だから〈MARUNI COLLECTION〉のために何をつくるべきかを自分で考え、提案したのです。私にとって深澤さんやジャスパー・モリソンは“神”。シンプルでクリーンなデザインをするには大変な勇気がいるものですが、それを体現している特別な存在です」
深澤とモリソンが築き上げた〈MARUNI COLLECTION〉のトーンを意識しながらも、《EN》コレクションにはマンツらしさがはっきりと表現されている。彼女はまず、人が集まる力をもつ「丸いテーブル」を発想し、次に座る人を包むような丸い背もたれへとイメージを広げていった。椅子の脚部は特徴的なループフレームとし、さらにその構造をテーブルの脚部へと応用したという。《EN》というネーミングは、デンマーク語で「1」を表すとともに、日本語の「円」「縁」の意味が重ねてある。
《EN》の椅子とテーブルは、見れば見るほど興味の尽きないデザインだ。椅子の後脚の上部と背もたれのジョイント部分はじめ、あらゆるディテールに繊細な造形を取り入れている。人を迎え入れるような優しい印象を重視しつつ、丸すぎず、シャープすぎず、ほどよいバランスを大切にしたのだとマンツは語る。さらに独特の造形は、フレームの内側や裏側にまでも一貫している。
「だからといって『裏側にこだわった家具』ではありません。私は常にデザインを全体として捉えているのです。プロポーションも、サイズも、背もたれの高さも、そして空間における存在感も、すべてが調和してグッドデザインになります。デザインは視覚的な表現だと思われがちですが、椅子やテーブルは体験するもの。テーブルのそばから椅子を引く時の感覚も、使い心地を左右します」
今回、《EN》の椅子が座面にパッドを備えていることも、マンツの姿勢を物語っているようだ。一般に、パッドや張地のない板座はすっきりとして見え、椅子のシルエットが際立つ。しかし座面にクッション性があるほうが、長時間にわたり心地よく座れる。張地の色や素材のバリエーションも、メープルのフレームに合うものをマンツ自身がセレクトした。
「だからといって『裏側にこだわった家具』ではありません。私は常にデザインを全体として捉えているのです。プロポーションも、サイズも、背もたれの高さも、そして空間における存在感も、すべてが調和してグッドデザインになります。デザインは視覚的な表現だと思われがちですが、椅子やテーブルは体験するもの。テーブルのそばから椅子を引く時の感覚も、使い心地を左右します」
今回、《EN》の椅子が座面にパッドを備えていることも、マンツの姿勢を物語っているようだ。一般に、パッドや張地のない板座はすっきりとして見え、椅子のシルエットが際立つ。しかし座面にクッション性があるほうが、長時間にわたり心地よく座れる。張地の色や素材のバリエーションも、メープルのフレームに合うものをマンツ自身がセレクトした。
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