
ヴィッラ・アドリアーナ
Villa Adriana(118〜138)
- Photo: Yuji Ono
- Text: Kaoru Tashiro
- Editor: Ai Sakamoto
古代ローマの五賢帝の一人、第14代ハドリアヌス帝(76年〜138年)が在位中にローマ郊外の自然の中に建設した別荘。芸術を愛し、何より建築に造詣が深かった皇帝は、帝国最盛期の広大な領土を巡行した旅の記憶を神殿、テルメ、劇場など数多の建築に託し、それを120ヘクタールに及ぶ敷地にちりばめた。皇帝が寵愛した美少年アンティノウスが命を絶ったというナイル川を模したカノプスとセラピス神殿はハイライトの一つ。また、ヴィッラは多くの芸術家をインスパイアしたことでも知られる。若き日に同地を訪れたル・コルビュジエはスケッチを残し、晩年にはロンシャンの礼拝堂のイメージの源泉にもなったといわれている。