ジンギスカンは北海道だけじゃない! 秘伝のタレで味わう遠野の羊肉。| 行くぜ、東北。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ジンギスカンは北海道だけじゃない! 秘伝のタレで味わう遠野の羊肉。| 行くぜ、東北。

ここはカッパやオシラサマが登場する「遠野物語」で知られる民話の里・遠野。市内を歩いていると目につく看板や暖簾の「ジンギスカン」の文字。かれこれ50年以上、この地ではジンギスカン(羊の焼肉)が愛され続けているのです。

老若男女、遠野では誰もがジンギスカンをよく食べる。ジンギスカン初心者は店にある「焼き方マニュアル」を一読してから味わいたい。
「ジンギスカン」と聞くとまず思い浮かぶのが北海道。しかし、岩手県内陸部にある遠野でも「焼肉=ジンギスカン」というくらいに、ジンギスカンが地域に根付いている。「すでに50年以上前、遠野ではジンギスカンが一般化していた」と話すのはジンギスカン専門店〈あんべ〉の3代目店主・安部吉弥さん。

あんべの創業者である吉弥さんの祖父・梅吉さんは、戦時中の満州でおいしい羊肉料理を食べた経験があった。戦後、郷里の遠野に戻り、羊肉のおいしさを遠野に伝えたいとの思いから、昭和30年頃に自らの店で羊肉を出し始めた。しかし食べ慣れない羊肉に、当初は誰も見向きもしなかったという。そこで、梅吉さんが試行錯誤の上に完成させたのが醤油ベースの自家製タレ。羊肉との相性を第一に考えた、この自家製タレの登場により羊肉は爆発的に売れるようになった。
醤油ベースのあんべの自家製タレ。ショウガが効いているほか、フルーツの酸味や甘味も。濃厚ながらしつこさは感じない。
〈あんべ〉では南部鉄器のジンギスカン鍋で焼く。まず片面を肉のふちの色が変わるくらいまで焼く。裏返したら、もう片面は軽く炙るくらいで充分。
〈あんべ〉では、店でジンギスカンを味わえるほか、羊肉の販売も行っており、その量は年間20トンにもなる。現在、店で扱っている肉のほとんどは、オーストラリアかニュージーランド産。管理の行き届いた農場の品質のよいものだけを仕入れている。人気が高いのは赤身と脂身のバランスがよいラム肩ロース。生後1年未満の子羊のクセのない甘みが楽しめる。またあんべの常連客が好んで食べるマトンは、脂身が少なく赤身のおいしさが持ち味。いずれもショウガの効いた自慢の自家製タレをたっぷりと付けて味わいたい。

〈あんべ〉のほかにも遠野市内には4軒のジンギスカン専門店があるほか、スーパーマーケットでも羊肉が普通に売られている。羊肉を販売する精肉店では、ジンギスカンバケツのレンタルを行っている店も珍しくない。初代・安部梅吉さんが願っていた「遠野に羊肉のおいしさを広めたい」との思いは、60年以上経った現在、着実に叶えられている。