IKEA×VIRGIL ABLOH|ヴァージル・アブローとのコラボレーションがお披露目です。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

IKEA×VIRGIL ABLOH|ヴァージル・アブローとのコラボレーションがお披露目です。

『カーサ ブルータス』2018年12月号より

続々と発表される〈イケア〉と有名デザイナーによるコラボレーション・プロジェクト。今回、パリでお披露目されたのは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのヴァージル・アブローです。

リビングの真ん中にありながら「汚れるからラグの上を歩いちゃダメ」と親が子に言う。そんなありがちなシチュエーションから着想を得た “KEEP OFF”。パリでの販売価格は129ユーロ。
〈イケア〉とヴァージル・アブローによる新コレクションが予告されたのは、1年以上前の2017年夏。しかし、発売予定は1年以上先の2019年11月。そんな中間地点のタイミングである去る9月28日、その一部がファッションウィーク中のパリでお披露目された。“STILL LOADING”と名づけられたポップアップストア形式のイベントでは、「MARKERAD(マケラッド)」と「Art Event」と名づけられた今回のコレクションから、4種類のラグが計1,000枚、世界に先駆けて発売。しかも、それらは2019年の正式発売には含まれないという。その噂を聞きつけて、プレス発表会には各国からのメディアやインフルエンサー総勢500人が詰めかけ、開場前には2日前から並んでいたファンを含む、約2,500人が並んだ。

今回のコレクションは、ミレニアル世代が初めて借りるアパートメントのための家具、というのがコンセプトだという。パリで先行販売された4枚のラグをヴァージルはこう説明する。

「“KEEP OFF”はアメリカの家庭での親子の姿から考えました。リビングの家具は汚してはいけない。リビング=生活するための部屋なはずなのに、ショールームのように見せるだけの場所になっていて、ラグの上を歩けないという矛盾。そこから浮かんだアイディアです。“STILL LOADING”は、誰もがパソコン上で出会ったことのある『ローディング中』という画面から着想を得ました。僕のデザインの基本は、デジタルで経験したことを手で触れられる物質的なものに変換するということ。それを最も端的に見せている例かもしれません。絵はすべて見えていないけれど、文字の内容から全体を目に浮かべることができる。『ローディング中』とはそういう状態であり、それをラグのデザインで表現したのです。グレーではない“GREY”は知覚の遊び。赤いラグに“BLUE”と書き、天井に設置して床に鏡を敷いたことは、ラグってそもそもなんなんだ?という問いかけを表しています。それによって、ラグである以上に現代アートの作品になるんです」
赤いラグなのに “BLUE”。そして、本来は床に敷かれるべきラグをあえて天井に設置。それを床に敷かれた鏡越しにiPhoneで撮影をするヴァージル。パリでの販売価格は229ユーロ。
ファッションでは自身のブランド〈Off-White〉に加え、今年から〈ルイ・ヴィトン〉のメンズ アーティスティック・ディレクターに就任。〈ナイキ〉や〈リモワ〉とのコラボレーションも手がける一方、村上隆とエキシビションを開催するなどアートの分野にも進出。多岐にわたる活動で世界を席巻しているにもかかわらず、〈イケア〉のプロジェクトに対するヴァージルの回答は、次のようにいたって謙虚だ。

「僕の初めての〈イケア〉は大学時代に買った《LACK》というテーブル。組み立て式なので、誰でも自分で作り上げたと思わせてくれるのが魅力だと思いました。子供のころ、レゴで遊んでいたときと同じ感覚ですね。でも、家具のデザインはファッションやスニーカーより10倍も難しい。どんなワードローブにも合う白いTシャツを作るのは簡単だけれど、誰の家にも合う家具となるとそうはいかない。毎日の生活を共にするためのデザインは、着替えられるものとは全く違うからね」

ヴァージルの学生時代はイリノイ工科大学で建築を学び、キャリアは建築事務所からスタートした、というのは有名な話。そこで、尊敬する建築家やインテリアデザイナーについて聞いてみた。

「日本人だと安藤忠雄と片山正通。最も尊敬するのは、母校のホールも設計したミース・ファン・デル・ローエ。あとは、ル・コルビュジェにレム・コールハース。そして、ガウディ。彼らの共通点は、我々の常識を変えるものを作り、新しいものの見方を提示した、ということ。アートの世界ではマルセル・デュシャンの『泉』がまさにそうでしょう。デュシャンは、便器を持って来て、これが『泉』だと決める。その時点で便器はアートになるんです。僕が〈イケア〉とのコラボレーションでやりたかったのも、ある意味そういうことです」