カイ・フランクを辿る旅が本に。生誕地のロシア・ヴィボルグへ。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

カイ・フランクを辿る旅が本に。生誕地のロシア・ヴィボルグへ。

『カーサ ブルータス』2018年2月号より

フィンランドの国民的プロダクトデザイナーのカイ・フランクを知る本が完成。物語はカイが生まれたロシアのヴィボルグから始まります。

ヴィボルグの街並み。中央の丸屋根の塔は、ヴィープリ時代を知る人にとっても懐かしい街のシンボル。
ロシアの西端、フィンランド湾に面した街、ヴィボルグ。フィンランドの良心”と称されるプロダクトデザイナー、カイ・フランクが生まれたのは、かつてフィンランド領だったこの街だ。当時の名はフィンランド語で「ヴィープリ」。新刊『カイ・フランクへの旅』の著者、小西亜希子さんはこの街を訪れることが本書の取材には不可欠だったと振り返る。「今ではフィンランド人もビザがないと訪れることができない街ですが、カイにとってはここが故郷であり、感受性の根を育てた場所。まだ戦後すぐの空気が漂ってますが、戦前に彼が見ただろう風景を目にできたのは貴重な経験でした」
2017年12月に刊行された『カイ・フランクへの旅 “ フィンランド・デザインの良心 ” の軌跡をめぐる』 (3200円/グラフィック社)。
カイ・フランクの弟子であり、友人であり、稀代のコレクターでもあるタウノ・タルナ氏が所有する貴重なアートピースも紹介されている。
カイがここで過ごしたのは7歳まで。父を亡くした後、母とともにヘルシンキに移住している。小西さんは立ち寄った街の教会で、偶然カイの存在が今もこの地に息づいていることを感じたという。「その教会では、カイの代表作の《カルティオ》をキャンドルホルダーとして使ってたんです。コバルトブルーのグラスの中に火がともり、イコンの前や天井画の縁取りに幾つも飾られていました。日常に溶け込むプロダクトを目指していたカイにとってこれ以上の賛美はないのではないでしょうか」 
18世紀からあるプレオブラジェンスキー大聖堂。カイ少年も通っただろう教会で《カルティオ》にともる火が捧げられていた。
プレオブラジェンスキー大聖堂。
カイ・フランク(1911-1989)。代表作はスタッキンググラスの《カルティオ》や、北欧テーブルウェアの定番《ティーマ》。
日本だけでなく、本国のフィンランドにもカイにまつわる書籍が少ないのは、彼が食器という日用品を主にデザインしていたことが理由だろう。小西さんはカイの生前を知る人々を訪ねる中で、その人柄への理解も深まったという。「実直でストイック、自分のことには構わない無頓着な一面もあったようです。心根の優しい、控えめな方だったというのも、様々な人の話から伝わってきました」貴重な資料や彼を知る人の言葉を、カイの謙虚さを汲みながら、丁寧に綴った『カイ・フランクへの旅』。日本語でその人生と仕事に触れられる、貴重な一冊だ。

『カイ・フランクへの旅"フィンランド・デザインの良心"の軌跡をめぐる』

機能美を追求したテーブルウェアで、フィンランド・デザインの礎を作ったカイ・フランク。その仕事と人生を丹念な取材と美しい写真で綴るデザイン紀行。貴重なアートピースや亡くなったサントリーニ島への取材も収録。3,200円(グラフィック社)

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます