Casa BRUTUS
  • BOARD
【岡山・津山】骨付きの牛肉を“そずる”そずり鍋|冷水希三子の郷土料理研究レシピ
FOOD

【岡山・津山】骨付きの牛肉を“そずる”そずり鍋|冷水希三子の郷土料理研究レシピ

| Food, Travel | casabrutus.com | photo_Nao Shimizu   text_Housekeeper   styling & food_Kimiko Hiyamizu 取材協力_岡山県

料理家・冷水希三子が、郷土料理が生まれた場所を訪れ、実際に食べて研究。どこの地域でも作りやすい冷水さん流アレンジレシピを紹介する連載。今回訪れたのは岡山県・津山市。牛肉文化で知られるこの地に伝わる絶品鍋とは? お隣の真庭市蒜山地域も含め、立ち寄りスポットも紹介しているので、冷水さん流おいしい旅行ガイドとしてもお楽しみください。

●「牛肉王国」津山ならではの肉料理。

津山市の大衆割烹〈お染〉さんに作っていただいた「そずり鍋」が今回の主役。
津山市の大衆割烹〈お染〉さんに作っていただいた「そずり鍋」が今回の主役。
岡山県・津山市は「牛肉王国」だ。ということを知っている人はどのくらいいるだろうか。

歴史をひもとくと、官牧(律令制で規定された国有の牧場)の全国設置は文武天皇時代にはじまった。その地に選ばれた津山は慶雲2(705)年に牛馬市場を開市。19世紀中頃には津山を含む美作が西の牛の供給の中心地となっていた。仏教の影響で一般人に肉食を嫌悪する風習が定着する中、特例として“養生食い”(滋養強壮のために肉を食べる習慣)が定着していた津山。こうして独特の肉文化が途絶えることなく引き継がれていったのだという。

B級グルメの大会でも常連の「津山ホルモンうどん」、牛もも肉を塩漬け、乾燥させて保存性を高めた「干し肉」、牛の大動脈部分を食べる「ヨメナカセ」……。数々の肉文化が残る中、今回冷水さんが注目したのは「そずり鍋」だ。
牛の心臓周りの大動脈(一般的にはハツモト)の「ヨメナカセ」を塩胡椒で炒めた料理。ヨメナカセの由来は諸説あるが、「処理が大変だから」という説が有力。お酒のアテに最適。
牛の心臓周りの大動脈(一般的にはハツモト)の「ヨメナカセ」を塩胡椒で炒めた料理。ヨメナカセの由来は諸説あるが、「処理が大変だから」という説が有力。お酒のアテに最適。
牛肉(主にもも肉)に塩をもみ込んで干した「干し肉」。干すことで肉の旨みを凝縮し、保存性を高める。脂身の少ない部位を選ぶ方が臭みが出づらいという。主には火で炙ってマヨネーズや醤油、一味を添えて食べる。※通常〈お染〉では提供していません。
牛肉(主にもも肉)に塩をもみ込んで干した「干し肉」。干すことで肉の旨みを凝縮し、保存性を高める。脂身の少ない部位を選ぶ方が臭みが出づらいという。主には火で炙ってマヨネーズや醤油、一味を添えて食べる。※通常〈お染〉では提供していません。
こちらも郷土料理のひとつ、「煮こごり」。牛の肉、アキレス、テールなどの部位を煮込み、冷やして固めたもの。ご飯の上に乗せて食べると牛の旨みが溶けだす。みかんやゆずの皮を入れて香りをつけることも。肉を余さず食べるという文化の表れ。※通常〈お染〉では提供していません。
こちらも郷土料理のひとつ、「煮こごり」。牛の肉、アキレス、テールなどの部位を煮込み、冷やして固めたもの。ご飯の上に乗せて食べると牛の旨みが溶けだす。みかんやゆずの皮を入れて香りをつけることも。肉を余さず食べるという文化の表れ。※通常〈お染〉では提供していません。
牛の心臓周りの大動脈(一般的にはハツモト)の「ヨメナカセ」を塩胡椒で炒めた料理。ヨメナカセの由来は諸説あるが、「処理が大変だから」という説が有力。お酒のアテに最適。
牛肉(主にもも肉)に塩をもみ込んで干した「干し肉」。干すことで肉の旨みを凝縮し、保存性を高める。脂身の少ない部位を選ぶ方が臭みが出づらいという。主には火で炙ってマヨネーズや醤油、一味を添えて食べる。※通常〈お染〉では提供していません。
こちらも郷土料理のひとつ、「煮こごり」。牛の肉、アキレス、テールなどの部位を煮込み、冷やして固めたもの。ご飯の上に乗せて食べると牛の旨みが溶けだす。みかんやゆずの皮を入れて香りをつけることも。肉を余さず食べるという文化の表れ。※通常〈お染〉では提供していません。
今回、牛肉文化について教えてくれたのは、津山市で古くから大衆割烹を営む〈お染〉の森山さん。昭和50年代からこの「そずり鍋」を出しはじめたという。なじみの肉屋さんに「そずり肉で鍋を作るとおいしい」と教えてもらったのがきっかけだ。

「骨から肉をそずる(削る)のがそずり肉ですが、うちが使うのは国産牛のあばら骨からそずった『本そずり』と呼ばれる部分。一頭から2kgしかとれない希少な肉です」(森山さん)
〈お染〉の森山さん兄弟。岡山、中でも津山に特化した郷土料理が食べられる貴重な大衆割烹として人気だ。
〈お染〉の森山さん兄弟。岡山、中でも津山に特化した郷土料理が食べられる貴重な大衆割烹として人気だ。
肉を「そずる(削る)」からそずり肉。骨周りの肉は旨みがたっぷりで、煮込むとその旨みを余さず食べることができる。※この日は撮影用に特別な骨を用意してもらいました。
肉を「そずる(削る)」からそずり肉。骨周りの肉は旨みがたっぷりで、煮込むとその旨みを余さず食べることができる。※この日は撮影用に特別な骨を用意してもらいました。
〈お染〉の森山さん兄弟。岡山、中でも津山に特化した郷土料理が食べられる貴重な大衆割烹として人気だ。
肉を「そずる(削る)」からそずり肉。骨周りの肉は旨みがたっぷりで、煮込むとその旨みを余さず食べることができる。※この日は撮影用に特別な骨を用意してもらいました。
そずり鍋の作り方は、いたってシンプル。かつおと昆布の出汁を酒と醤油で整え、そずり肉、ごぼう、にらを入れる。季節によっては水菜やチシャ菜が入ることも。まず冷水さんが驚いたのは、出てくるアクの少なさだった。

「骨の周りの部位だから、絶えずアクをすくっていなきゃいけないかと思いました。お出汁が全然濁らないんですね。ずっときれいなまま」
「お出汁がおいしい! うどんもさぞ合うでしょうね」と冷水さんもにこにこ。
「お出汁がおいしい! うどんもさぞ合うでしょうね」と冷水さんもにこにこ。
他にニラやネギ、ごぼうなどの野菜、きのこ、豆腐、しらたきなどが入る。
他にニラやネギ、ごぼうなどの野菜、きのこ、豆腐、しらたきなどが入る。
「お出汁がおいしい! うどんもさぞ合うでしょうね」と冷水さんもにこにこ。
他にニラやネギ、ごぼうなどの野菜、きのこ、豆腐、しらたきなどが入る。
そして一口食べて、「お出汁が本当においしい!」と感嘆。しっかりと引いた黄金色の合わせ出汁に牛肉の脂と旨みが溶け込んで、いくらでも飲めてしまうほど。この出汁を最後まで堪能するため、締めにうどんやそばを入れるのもお楽しみだ。そずり肉は削り方や部位によって分厚さや脂ののり方が違ってくるため、ときにぎゅむっと、ときにこりっとした独特の歯応え。リズムがあり、食べ手を飽きさせない魅力がある。

「具材もお出汁もシンプルなのに、こんなに滋味深い味がするなんて。これはそずり肉ならではですね。すき焼きでも、しゃぶしゃぶでも、ホルモン鍋でもない、初めて食べたお肉の鍋。私も作り甲斐がありそうです」

冷水さん流のそずり鍋レシピは記事の最後に。

〈大衆割烹 お染〉

岡山県津山市戸川町5-2 TEL 0868 23 6545。17時〜21時30分(日曜・祝日は〜20時30分)。水曜休。

Loading...
冷水希三子の郷土料理研究レシピillustration Yoshifumi Takeda

冷水希三子

ひやみず きみこ  雑誌、書籍、広告などで料理制作、レシピ提案を行うほか、ホテルやカフェなどのメニューディレクション、フードコーディネートも。著書に『さっと煮サラダ』(グラフィック社)など。

Loading...

Pick Up注目記事

Recommend厳選おすすめ

ワラシちゃん占い

520日のお告げ
Casa iD

登録すると、会員限定の3大特典が手に
入ります。しかも無料。今すぐ、登録を!

メルマガ登録 (無料)

本誌発売日などにメルマガをお届け!

ご登録頂くと、弊社のプライバシーポリシーとメールマガジンの配信に同意したことになります。