FOOD
おいしくて美しい“和菓子”10選・晩秋。
November 13, 2021 | Food, Design | casabrutus.com | photo_Junichi Kusaka editor_Yoko Fujimori
季節を映す上生菓子は、和菓子の中でもひときわ匠の仕事が光ります。東京の名店10軒から上生菓子を集め、晩秋の景色を表現しました。
・〈とらや〉遠紅葉、林檎形|抽象と具象、名店がみごとに表す秋の気配。
創業は室町時代後期、その名を全国に知らしめる老舗〈とらや〉。餡のおいしさが際立つ羊羹が店の代名詞だが、元禄から伝わる「菓子見本帳」などをもとに製作する「季節の生菓子」もまた、名店の揺るぎない仕事を感じさせるものだ。
霜月(11月)の始まりとともに登場する「遠紅葉(とおもみじ)」は、紅、白、黒を三段に重ね、はるかに臨む山々の紅葉を表現したもの。紅と白の部分は湿粉製(もち粉と上新粉を混ぜた餡をこし網で漉してそぼろ状にし、枠に入れて蒸上げたもの)であり、三段目の黒は羊羹製。こうした三段の意匠は生菓子における定番デザインの一つで、〈とらや〉では「段物」と呼び、春の「八重霞」など折々に登場する。ほろりと崩れる二段の湿粉と、三段目のみっしりとした羊羹の食感の妙。大正8(1919)年にその名が残る、紅葉の景色をグラデーションで表現した風情あるお菓子だ。
かたや11月の後半から登場する「林檎形」は、リンゴの愛らしさを忠実に模した一品。初登場は天保11(1840)年というのだから、江戸末期から受け継がれる描写力に驚かされる。丸みを帯びたフォルム、赤く色づいた果皮、そしてハサミで切り取った果梗(かこう)までも再現され、思わず本物と見まごうほど。抽象と具象、それぞれに〈とらや〉ならではの洗練が息づいている。
公式サイト
霜月(11月)の始まりとともに登場する「遠紅葉(とおもみじ)」は、紅、白、黒を三段に重ね、はるかに臨む山々の紅葉を表現したもの。紅と白の部分は湿粉製(もち粉と上新粉を混ぜた餡をこし網で漉してそぼろ状にし、枠に入れて蒸上げたもの)であり、三段目の黒は羊羹製。こうした三段の意匠は生菓子における定番デザインの一つで、〈とらや〉では「段物」と呼び、春の「八重霞」など折々に登場する。ほろりと崩れる二段の湿粉と、三段目のみっしりとした羊羹の食感の妙。大正8(1919)年にその名が残る、紅葉の景色をグラデーションで表現した風情あるお菓子だ。
かたや11月の後半から登場する「林檎形」は、リンゴの愛らしさを忠実に模した一品。初登場は天保11(1840)年というのだから、江戸末期から受け継がれる描写力に驚かされる。丸みを帯びたフォルム、赤く色づいた果皮、そしてハサミで切り取った果梗(かこう)までも再現され、思わず本物と見まごうほど。抽象と具象、それぞれに〈とらや〉ならではの洗練が息づいている。
公式サイト
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