FASHION
映像で見る、ガブリエル・シャネルの真実|石田潤のIn The Mode
| Fashion, Culture | casabrutus.com | text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
東京・天王洲で開催中の『マドモアゼル プリヴェ展』。日本開催を記念して上映されているショートフィルムシリーズ『INSIDE CHANEL』で明かされる、ガブリエル・シャネルの真実とは?
フランスの作家にして文化大臣も務めたアンドレ・マルロー。ル・コルビュジエを始め数々のクリエイターとも交流の深かったマルローは、後世に残る20世紀のフランス人の名として、シャルル・ド・ゴール 、パブロ・ピカソとともにガブリエル・シャネルの名を挙げた。フランスを代表するラグジュアリー・メゾン「シャネル」の創業者にして、女性ファッション・デザイナーの先駆けのひとりであるガブリエル・シャネル。彼女はなぜ、20世紀を代表する人物のひとりとされるのか? 『マドモアゼル プリヴェ展』の関連企画として〈IMAギャラリー〉で上映されているショートフィルムシリーズ『INSIDE CHANEL』では、モードの革命家としてのガブリエルの顔がフィーチャーされる。
Gabrielle, A Rebel at Heart - Inside CHANEL
『INSIDE CHANEL』はシャネルというメゾンを形作る様々なコードをテーマとしており、1章あたり2〜4分のものが26章にわたって作られている(全26章はオンライン https://inside.chanel.com/ で公開。『マドモアゼル プリヴェ展』ではそのうちの11章分が上映されている)。第1章はシャネルを代表する香り「N°5」を取り上げるが、冒頭からガブリエル・シャネルは何者であるか、何を成し遂げたのかが一瞬にしてわかる言葉が現れる。
「FOR THE FIRST TIME(初めて)」という言葉とともに示されるのは、1912年に誕生した「N°5」が、閉鎖的だった当時のフレグランス業界においてファッションデザイナーが初めて発表した香りであったこと、単一の花の香りが一般的であった当時において、80種類以上の香料と調香した、複雑な女性を感じさせる香りであったこと、数字を香りの名前としたこと、当時では珍しいシンプルなデザインのボトルであったこと、などなどだ。
ガブリエル・シャネルの革新性はもちろん香りの分野だけにとどまらない。1932年に男性が支配するハイ・ジュエリーの世界で発表した一度限りのハイ・ジュエリーコレクション、そしてファッションにおいて“発明”した数々のアイコン・アイテム――紳士服の素材であったツイードをウィメンズのアイテムとして初めて用いたツイード・ジャケット、制服や喪服の色であった黒を、女性を最もエレガントに見せる色に変えたリトル・ブラック・ドレス……。全ての章を見ると1時間半ほどに及ぶが、ラップミュージックのMVのようなリズミカルなナレーションと映像のコラージュは、もっと見たい、知りたいという気持ちを掻き立て、そしていつの間にか作品に勇気づけられている自分に気づく。
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。
