
DESIGN
又吉直樹が選んだ、ドラマになる名作椅子とは?
『カーサ ブルータス』2022年6月号より
| Design, Culture | a wall newspaper | photo_Satoshi Nagare prop styling_Yusuke Takeuchi (Laboratoryy) hair & make-up_Fumie Yoshino text_Yoshinao Yamada
又吉直樹の最新作は椅子好きの視点から生まれたドラマ。椅子と物語がどう絡み合うのか、ご本人に聞きました!
オリジナルドラマの制作に力を入れるWOWOWが、無類の椅子好きで知られる又吉直樹に依頼したのは「椅子」と「女性」を題材としたオムニバスの物語。それぞれの椅子が持つ魅力を織り込んだ物語は、各話ごとに独特の世界観を持ち、得も言われぬ感情を引き出す。不思議な余韻とともに何度も見返したくなる物語を、又吉さんはどう紡いだのだろう。
Q 今回のドラマはどのように生まれたのでしょう。
4名の女優とともに椅子の物語を作ってほしいという依頼から始まりました。なにか突飛な題材であれば8本の物語は難しかったでしょう。けれど椅子は日常に密接するもので種類も豊富です。形や使われ方に限らず、多様な側面を持つ家具なので物語に向いていると考えました。今回はあくまでまず椅子があり、そこから物語を考えていったんです。
Q 椅子をどう選びましたか?
資料をもとに、当初は50脚以上の椅子を候補に挙げました。そこから物語を考えつつ20脚ほどに絞り、家具店などを回りながら8脚まで絞り込んだのです。
Q 今回のドラマはどのように生まれたのでしょう。
4名の女優とともに椅子の物語を作ってほしいという依頼から始まりました。なにか突飛な題材であれば8本の物語は難しかったでしょう。けれど椅子は日常に密接するもので種類も豊富です。形や使われ方に限らず、多様な側面を持つ家具なので物語に向いていると考えました。今回はあくまでまず椅子があり、そこから物語を考えていったんです。
Q 椅子をどう選びましたか?
資料をもとに、当初は50脚以上の椅子を候補に挙げました。そこから物語を考えつつ20脚ほどに絞り、家具店などを回りながら8脚まで絞り込んだのです。
Q スタンダードな椅子が多いなか、チャールズ&レイ・イームズの《ラ シェーズ》は独特な一脚です。なぜこれを選びましたか。
アルテックの《スツール 60》を見に行ったことがきっかけです。そこにチャールズ&レイ・イームズがデザインしたヴィトラの《ラ シェーズ》もあると聞き、見せていただきました。人間が座るという機能を持つ椅子は、だいたい同じような大きさです。けれど《ラ シェーズ》は他にない大きさでインパクトもありますし、デザインも独特。これで物語を書くのは難しそうだなと思いつつ、入れてみたくなりました。どこに置くのがいいかなと考えるうちに、海のシーンが浮かびました。
Q 《ラ シェーズ》は非常に象徴的な形で、物語に椅子が美しく機能しています。ビジュアル的なイメージから物語を構築することが多かったのでしょうか。
実際に椅子を見たり座ったりして、そこから得た印象から物語が生まれました。どれもいい椅子なので、あえて逆の印象で使うことも考えましたが、やはり椅子をかっこよく見せたいという基本を大切にしようと決めました。だからこそ人物の行動は、椅子と対比的に変わった表現なのかもしれません。物語の主軸が人間と椅子の関係性ということは間違いないですね。あとは人の中にあるどこか滑稽な部分であり、悲しみを描きたかったのです。いずれの話もどちらかの要素が含まれています。そしてできるだけ変わった物語を作りたいという目標があったので、あまりわかりやすくないものを目指しました。ただ複雑だったり難解だったりするものは、あまりみなに好かれない。そういう複雑さを簡略化させずに、けれどみなが楽しめるものを考えたつもりです。8本すべてでそれが実現できたかはわかりませんが、誰も理解ができない物語ではないと思います。
アルテックの《スツール 60》を見に行ったことがきっかけです。そこにチャールズ&レイ・イームズがデザインしたヴィトラの《ラ シェーズ》もあると聞き、見せていただきました。人間が座るという機能を持つ椅子は、だいたい同じような大きさです。けれど《ラ シェーズ》は他にない大きさでインパクトもありますし、デザインも独特。これで物語を書くのは難しそうだなと思いつつ、入れてみたくなりました。どこに置くのがいいかなと考えるうちに、海のシーンが浮かびました。
Q 《ラ シェーズ》は非常に象徴的な形で、物語に椅子が美しく機能しています。ビジュアル的なイメージから物語を構築することが多かったのでしょうか。
実際に椅子を見たり座ったりして、そこから得た印象から物語が生まれました。どれもいい椅子なので、あえて逆の印象で使うことも考えましたが、やはり椅子をかっこよく見せたいという基本を大切にしようと決めました。だからこそ人物の行動は、椅子と対比的に変わった表現なのかもしれません。物語の主軸が人間と椅子の関係性ということは間違いないですね。あとは人の中にあるどこか滑稽な部分であり、悲しみを描きたかったのです。いずれの話もどちらかの要素が含まれています。そしてできるだけ変わった物語を作りたいという目標があったので、あまりわかりやすくないものを目指しました。ただ複雑だったり難解だったりするものは、あまりみなに好かれない。そういう複雑さを簡略化させずに、けれどみなが楽しめるものを考えたつもりです。8本すべてでそれが実現できたかはわかりませんが、誰も理解ができない物語ではないと思います。
Q 今回の椅子の中に、実際に使っているものはありますか。
いま使っているものはないですが、どれもいつかは使いたいと思っています。実際に《ネイビーチェア》は購入を考えていますし、《Yチェア》はどこに置いたらいいかなと考えさせる椅子です。日常の中で座るという行為は何度も行いますが、そのたびに幸せを感じさせてくれます。水を飲んだり、眠ることと同じような日常的な行為でありながら、座るという行為はどこか特別な役割を感じます。さらに椅子にはデザインが無限にあり、過去の名作も多いのに、いまも新しいものが生まれ続けている。いろいろなデザイナーが椅子を通して、自身の考えや美意識を表明していますよね。まるで一つの大会を開いているような市場も面白いですね。みなが作りたくなる魅力がそこにあるということでしょうか。
Q 椅子にはなにを求めますか。
書きものをするとき、読書をするとき、食事をするときと、椅子にはかなり長い時間座っています。状況にもよりますが、やはり座りやすさと安心感、そして特別感みたいなものを求めます。ちょっと座りにくくてもデザインが抜群だったら良いと思います。喫茶店やバーに行くのも好きですが、店のマスターと同じくらい椅子で良し悪しを判断しているのかもしれません。あの店は長く座っていると足が痛くなるとか、なにかチャラいねんな……となると、どんなにオシャレでも行きたくならない(笑)。好きな店は椅子に座ったときに、しっくりくるというか落ち着くべきところに自分が行き着いたと感じます。それも椅子の力でしょうね。
Q 今後、椅子をテーマにドラマや小説を書くことはありますか。
いまのところ予定はないですが、なにか形にできたらいいですね。椅子の小説というとまず江戸川乱歩の『人間椅子』が思い浮かびますが、あのインパクトを超えるものは難しそう(笑)。以前にそのオマージュともいえるショートムービーを作ったことはありますが、次はその影響下から逃れたものを作らないといけないですね。ドラマであれば、たとえば2人の女性が30分にわたって一つの椅子を引っ張り合っているという話でもいい。彼女たちがなぜ引っ張り合っているかは触れない。それを面白く展開するのが、物語の力ではないでしょうか。
いま使っているものはないですが、どれもいつかは使いたいと思っています。実際に《ネイビーチェア》は購入を考えていますし、《Yチェア》はどこに置いたらいいかなと考えさせる椅子です。日常の中で座るという行為は何度も行いますが、そのたびに幸せを感じさせてくれます。水を飲んだり、眠ることと同じような日常的な行為でありながら、座るという行為はどこか特別な役割を感じます。さらに椅子にはデザインが無限にあり、過去の名作も多いのに、いまも新しいものが生まれ続けている。いろいろなデザイナーが椅子を通して、自身の考えや美意識を表明していますよね。まるで一つの大会を開いているような市場も面白いですね。みなが作りたくなる魅力がそこにあるということでしょうか。
Q 椅子にはなにを求めますか。
書きものをするとき、読書をするとき、食事をするときと、椅子にはかなり長い時間座っています。状況にもよりますが、やはり座りやすさと安心感、そして特別感みたいなものを求めます。ちょっと座りにくくてもデザインが抜群だったら良いと思います。喫茶店やバーに行くのも好きですが、店のマスターと同じくらい椅子で良し悪しを判断しているのかもしれません。あの店は長く座っていると足が痛くなるとか、なにかチャラいねんな……となると、どんなにオシャレでも行きたくならない(笑)。好きな店は椅子に座ったときに、しっくりくるというか落ち着くべきところに自分が行き着いたと感じます。それも椅子の力でしょうね。
Q 今後、椅子をテーマにドラマや小説を書くことはありますか。
いまのところ予定はないですが、なにか形にできたらいいですね。椅子の小説というとまず江戸川乱歩の『人間椅子』が思い浮かびますが、あのインパクトを超えるものは難しそう(笑)。以前にそのオマージュともいえるショートムービーを作ったことはありますが、次はその影響下から逃れたものを作らないといけないですね。ドラマであれば、たとえば2人の女性が30分にわたって一つの椅子を引っ張り合っているという話でもいい。彼女たちがなぜ引っ張り合っているかは触れない。それを面白く展開するのが、物語の力ではないでしょうか。
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