CULTURE
植草甚一の名言「…が本当の味なんだろう。」【本と名言365】
April 30, 2024 | Culture, Food | casabrutus.com | photo_Yuki Sonoyama text_Ryota Mukai illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。J・Jの愛称で親しまれ、晩年まで旺盛な執筆活動を続けた植草甚一。映画、音楽、本とカルチャーに通じた趣味人は「味わい」についても一家言持っていた。
口のなかでオイシイなと思うより胃がそう思うほうが本当の味なんだろう。
映画にミステリ、ジャズと幅広くカルチャーに通じた、J・J氏こと植草甚一。ひたすら好みを掘っていったという意味では、評論家というよりも、もの知りおじさんといった印象で、「雑文家」のような肩書きがしっくりくる。その偏愛と幅広い文筆の仕事を集成したものといえば、全41巻からなる「植草甚一スクラップ・ブック」シリーズ。この全集の付録、月報には刊行時期と並行したJ・J氏の日記が掲載されている。その前半、つまり76年1月から7月の日記をまとめたのが『植草甚一コラージュ日記1 東京1976』だ。
日々詳細に付けていた日記を清書したもので、手書きのまま掲載されている。だから読み応え、いや、見応えは十分。内容はというと、日記だから至ってシンプルだ。どこの本屋に行き、どんな本を買って、どこの喫茶店に入りコーヒーを飲んだか? これが基本形。単調だけど、それゆえに面白い。とはいえ序盤はサービス精神からか、ちょっとしたコラムのような味わいのある一文が添えられたりしている。例えば、日記の2日目、76年1月2日には次のように。「口のなかでオイシイなと思うより胃がそう思うほうが本当の味なんだろう。」。東横のれん街で買ったエビのかき揚げが「あんがい」おいしかったそうだ。日々足を動かし街を歩き回ったJ・J氏ならではの、実感のこもった表現になっている。
本書は付録の再録だけあって、巻末には詳細な索引が付いている。【会った人、知ってる人】に池波正太郎、和田誠などの名前があり、登場するページが書いてあるといった具合だ。【寄った本屋】には「紀伊國屋」、【喫茶店で一服】には新宿のジャズ喫茶「ニュー・ダグ」(現「DUG」)も。ただの散歩や街歩きがしたくなる1冊だ。
映画にミステリ、ジャズと幅広くカルチャーに通じた、J・J氏こと植草甚一。ひたすら好みを掘っていったという意味では、評論家というよりも、もの知りおじさんといった印象で、「雑文家」のような肩書きがしっくりくる。その偏愛と幅広い文筆の仕事を集成したものといえば、全41巻からなる「植草甚一スクラップ・ブック」シリーズ。この全集の付録、月報には刊行時期と並行したJ・J氏の日記が掲載されている。その前半、つまり76年1月から7月の日記をまとめたのが『植草甚一コラージュ日記1 東京1976』だ。
日々詳細に付けていた日記を清書したもので、手書きのまま掲載されている。だから読み応え、いや、見応えは十分。内容はというと、日記だから至ってシンプルだ。どこの本屋に行き、どんな本を買って、どこの喫茶店に入りコーヒーを飲んだか? これが基本形。単調だけど、それゆえに面白い。とはいえ序盤はサービス精神からか、ちょっとしたコラムのような味わいのある一文が添えられたりしている。例えば、日記の2日目、76年1月2日には次のように。「口のなかでオイシイなと思うより胃がそう思うほうが本当の味なんだろう。」。東横のれん街で買ったエビのかき揚げが「あんがい」おいしかったそうだ。日々足を動かし街を歩き回ったJ・J氏ならではの、実感のこもった表現になっている。
本書は付録の再録だけあって、巻末には詳細な索引が付いている。【会った人、知ってる人】に池波正太郎、和田誠などの名前があり、登場するページが書いてあるといった具合だ。【寄った本屋】には「紀伊國屋」、【喫茶店で一服】には新宿のジャズ喫茶「ニュー・ダグ」(現「DUG」)も。ただの散歩や街歩きがしたくなる1冊だ。
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