CULTURE
【本と名言365】クルト・ネフ|「ひとつの玩具の機能は、…」
November 23, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Keiko Kamijo illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。デザイン玩具として世界に名高いネフ社の創業者でありデザイナーのクルト・ネフ。彼が昔から変わらずこだわっている信念とは。
ひとつの玩具の機能は、子どもが見通せるものでなくてはならない
良質な木材、鮮やかな発色、積み上げた時にピタリと形が決まる加工精度の高さ。ネフ社の積み木に記された「Naef」という刻印は、良質な玩具の信頼の証だ。ネフ社の積み木は、どんな組み合わせでどういう積み方をしても、カラカラカラと崩れる木の音まで美しい。玩具や積み木は子どものものだと言われていた時代、玩具にモダンデザインの考え方を持ち込み、良質な木製玩具を多数世に送り出したネフ社の創設者が、クルト・ネフである。
クルト・ネフは1926年スイスに生まれ、自然豊かな土地で子ども時代を過ごす。その後、家具製作の現場で木工実技を学び、バーゼルの美術工芸学校、アムステルダムの美術学校インテリアデザイナーの勉強をしたネフは、モダンデザインに目覚める。1954年に家具とインテリア会社、現在のネフ社の前身となる会社を設立した。
彼の代表作となるリボン形の積み木「ネフ・スピール」が誕生したのは1958年。「世の中には、美しい食器や家具があるのに、美しい玩具がない。この店にふさわしい玩具を作るべき」と、顧客から助言を受けたのがきっかけだったという。その後、ネフは玩具作りに夢中になり、自宅を改造して工房にし、インテリアの世界から本格的に玩具の世界へと舵を切った。
その後、アントニオ・ヴィタリやペア・クラーセンというネフ社を代表する玩具のデザイナーと出会い、ただ置いておくだけでも彫刻のようで、遊んで動かす様も美しい数々の玩具を生み出した。精緻な作りと塗装の技術で世界一の木製玩具メーカーとして認められたネフ社は、1977年にはバウハウス玩具の復刻製作をスタートする。ネフは自身が職人でありデザイナーでもあったが、優秀なプロデューサーでもあった。製品のデザインはもちろんだが、ロゴやカタログ、ポスター等のデザインにもこだわっている。また、クリエイターへの経緯から、ネフ社で製造される玩具には、必ずデザイナーの名前が記されている。
「ひとつの玩具の機能は、子どもが見通せるものでなくてはならない」
これは、ネフが著書で述べていたことだが、この考え方は昔から変わらない。ものがない時代に育ったネフは、その後のマーケティング戦略で作られた使い捨てのような大量生産の玩具に嘆き、子どもにとっては刺激が強く魅力的だが身体や情緒への影響が計り知れないエレクトロニクス製品に頭を悩ませる。「遊びの本来の意義は、そして子どもたちが本当にしたいことは、この世の中に向って成長すること」だと言い、手や足、全身を使って遊ぶことの大切さを説き、それがイマジネーションを育てるのだと訴えた。それは、デザインの工程においても同じで、紙やペンもほとんど使わず、頭の中でイメージを描き続けて考え尽くした後に、機械に向かい手を動かしながら形を決めるという「手の仕事」にこだわり続けた。その信念が、ネフ社の製品のクオリティを保ち続けているのだ。
良質な木材、鮮やかな発色、積み上げた時にピタリと形が決まる加工精度の高さ。ネフ社の積み木に記された「Naef」という刻印は、良質な玩具の信頼の証だ。ネフ社の積み木は、どんな組み合わせでどういう積み方をしても、カラカラカラと崩れる木の音まで美しい。玩具や積み木は子どものものだと言われていた時代、玩具にモダンデザインの考え方を持ち込み、良質な木製玩具を多数世に送り出したネフ社の創設者が、クルト・ネフである。
クルト・ネフは1926年スイスに生まれ、自然豊かな土地で子ども時代を過ごす。その後、家具製作の現場で木工実技を学び、バーゼルの美術工芸学校、アムステルダムの美術学校インテリアデザイナーの勉強をしたネフは、モダンデザインに目覚める。1954年に家具とインテリア会社、現在のネフ社の前身となる会社を設立した。
彼の代表作となるリボン形の積み木「ネフ・スピール」が誕生したのは1958年。「世の中には、美しい食器や家具があるのに、美しい玩具がない。この店にふさわしい玩具を作るべき」と、顧客から助言を受けたのがきっかけだったという。その後、ネフは玩具作りに夢中になり、自宅を改造して工房にし、インテリアの世界から本格的に玩具の世界へと舵を切った。
その後、アントニオ・ヴィタリやペア・クラーセンというネフ社を代表する玩具のデザイナーと出会い、ただ置いておくだけでも彫刻のようで、遊んで動かす様も美しい数々の玩具を生み出した。精緻な作りと塗装の技術で世界一の木製玩具メーカーとして認められたネフ社は、1977年にはバウハウス玩具の復刻製作をスタートする。ネフは自身が職人でありデザイナーでもあったが、優秀なプロデューサーでもあった。製品のデザインはもちろんだが、ロゴやカタログ、ポスター等のデザインにもこだわっている。また、クリエイターへの経緯から、ネフ社で製造される玩具には、必ずデザイナーの名前が記されている。
「ひとつの玩具の機能は、子どもが見通せるものでなくてはならない」
これは、ネフが著書で述べていたことだが、この考え方は昔から変わらない。ものがない時代に育ったネフは、その後のマーケティング戦略で作られた使い捨てのような大量生産の玩具に嘆き、子どもにとっては刺激が強く魅力的だが身体や情緒への影響が計り知れないエレクトロニクス製品に頭を悩ませる。「遊びの本来の意義は、そして子どもたちが本当にしたいことは、この世の中に向って成長すること」だと言い、手や足、全身を使って遊ぶことの大切さを説き、それがイマジネーションを育てるのだと訴えた。それは、デザインの工程においても同じで、紙やペンもほとんど使わず、頭の中でイメージを描き続けて考え尽くした後に、機械に向かい手を動かしながら形を決めるという「手の仕事」にこだわり続けた。その信念が、ネフ社の製品のクオリティを保ち続けているのだ。
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