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5年に1度の現代アートの祭典『ドクメンタ15』が開催! 初の非西洋圏キュレーターが問う、新時代のアートのあり方とは。
July 23, 2022 | Art, Design | casabrutus.com | photo_Rie Yamada text_Yumiko Urae
5年に1度、ドイツ・カッセルで行われる世界でも有数の現代アート展『ドクメンタ』。15回目を迎えた今年は、初めて西洋圏以外からキュレーターが選ばれたことでも話題を集めています。欧米現代美術からの視点とは異なる、グローバルな試みが行われている当展覧会を現地レポート。注目の8つの展示を紹介します。
歴史からの教訓が背景にある現代アート・フェス
現代アート界における最大規模の展覧会の1つ『ドクメンタ』は、第二次世界大戦後の1955年、敗戦後に東西に分断されていた西ドイツのカッセルで始まった。ナチスによって”退廃芸術”とレッテルを貼られた当時の前衛アートの復活と、ドイツの文化的な国家としての復活のために始まったこの芸術祭は、当初は4年、後に5年ごとに開催されている。
1972年にはヨーゼフ・ボイスが街に戦前の緑を戻すため、「7000本の樫の木」を植えるというプロジェクトが大きな話題となった。ベルリンの壁建設前の1959年に『ドクメンタ2』を訪れたゲルハルト・リヒターは、西側の自由な現代アートに衝撃を受け、後の1961年に旧東ドイツから亡命。参加を続け、東西統一を遂げた後の1997年の第10回展では大作《Atlas》を発表している。
1972年にはヨーゼフ・ボイスが街に戦前の緑を戻すため、「7000本の樫の木」を植えるというプロジェクトが大きな話題となった。ベルリンの壁建設前の1959年に『ドクメンタ2』を訪れたゲルハルト・リヒターは、西側の自由な現代アートに衝撃を受け、後の1961年に旧東ドイツから亡命。参加を続け、東西統一を遂げた後の1997年の第10回展では大作《Atlas》を発表している。
また『ドクメンタ』は、ポリティカルで社会的な側面を持つことでも知られている。それは15回目を迎えた今回も例外ではない。西洋圏以外から初めてキュレーターに選ばれたインドネシアのコレクティブ〈ルアンルパ〉。彼らによりパレスチナ人アーティストの作品が招かれたことで、開催前から反イスラエル、反ユダヤ人の傾向が指摘されていた。そして会期が始まると、メイン広場〈フリードリッヒス・プラッツ〉に、インドネシア人コレクティヴ〈タリン・パディ〉による、ユダヤ人風刺の描かれたバナー作品が掲げられる事態が発生。ホロコーストの歴史を持つドイツにおいて、ユダヤ人への人種差別は最も問題視されている。作品はすぐさま撤去され、主催者は深い反省の意を込めて謝罪。その後ディレクターのザビーネ・ショアマンが責任を取り、辞任するにまでに至っている。
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