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青野尚子の「今週末見るべきアート」|祝・伊藤若冲 生誕300年!
May 12, 2016 | Art | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
伊藤若冲の生誕300年を記念して開かれている展覧会は代表作が目白押し。東京都美術館で開催中の「生誕300年記念『若冲展』」はブームの中でも“決定版”です。
今回のハイライトは、何と言っても《釈迦三尊像》(京都・相国寺)3幅と《動植綵絵》(宮内庁三の丸尚蔵館)30幅が観客を取り囲むように並ぶ展示室だ。京都・相国寺で行われていた観音に懺悔する法要の時にはこんなふうに並んでいたとされる光景が再現されている。全33幅が一度に並ぶのは東京では初めて。圧巻のインスタレーションに興奮してしまう。
これらの絵は何年もかけて若冲が描き上げ、相国寺に寄進したものだ。信心深い若冲は仏への祈りを込めて最高級の画材を使い、丹念に描き込んでいる。たとえば鳥や魚の目は漆で描かれたもの。普通なら胡粉を丸く盛り上げ、墨を塗るところだ。絹地の裏に着色して絵に深みを出す裏彩色という手法も多用している。18世紀初頭にドイツで発明された人工顔料、プルシアンブルーなど、質の高い絵の具も惜しげなく使った。制作費を算定するのは難しいが、膨大な額になることは間違いない。
若冲は京都・錦小路の青物問屋に生まれた。野菜の卸のほか、小売人たちに店を貸し、その地代も収入となっていた。若冲は長男でありながら40歳で家督を弟に譲り、画業に専念するが、資金は潤沢にあったのだ。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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