ART
青野尚子の「今週末見るべきアート」|山口晃が語る、馬の描き方。
| Art | casabrutus.com | photo_Satoshi Nagare text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
横浜にある、日本でもっとも古い競馬場「根岸競馬場」。その跡地を整備してつくられた根岸森林公園内にある〈馬の博物館〉が設立40周年を迎える。それを記念して“馬の作家”、山口晃の個展が開催中だ。展覧会では館所蔵の馬にまつわる古美術と山口の作品が一緒に展示されている。GW特別編、山口晃独占インタビュー。
Q 〈馬の博物館〉がある根岸競馬記念公苑では本物の馬も飼われていますね。
A 実はこれまであまり実物を見ないで描くようにしていて、こちらで馬を初めて近くに見ることができたのですが、間違いもけっこう発見しました。できれば自分の昔の絵を直したいとも思うぐらいですが、そうもいかず。「花の絵を描くのではない。絵の花を描くのだ」という絵の自律性を語った棟方志功の言葉もありますので、まあ良いかと思うことにしています。
A 実はこれまであまり実物を見ないで描くようにしていて、こちらで馬を初めて近くに見ることができたのですが、間違いもけっこう発見しました。できれば自分の昔の絵を直したいとも思うぐらいですが、そうもいかず。「花の絵を描くのではない。絵の花を描くのだ」という絵の自律性を語った棟方志功の言葉もありますので、まあ良いかと思うことにしています。
Q 実物を見ずにどうやって描いていたのですか?
A もちろん今は映像か画像が溢れていますが、それよりは昔の絵師の絵から学ぶようにしていました。馬の形自体以上に、先人が馬をどう見て、何を省いたかが知りたかったものですから。室町の厩図の馬か古代中国の馬の彫刻などを見て、「実際の馬のこのラインを拾ったのか」といったエッセンスをつかむと効果的ですね。自分がすごく上手くなったような気になれます(笑)。
A もちろん今は映像か画像が溢れていますが、それよりは昔の絵師の絵から学ぶようにしていました。馬の形自体以上に、先人が馬をどう見て、何を省いたかが知りたかったものですから。室町の厩図の馬か古代中国の馬の彫刻などを見て、「実際の馬のこのラインを拾ったのか」といったエッセンスをつかむと効果的ですね。自分がすごく上手くなったような気になれます(笑)。
Q 馬ではありませんが、猫を猫らしく描くのは意外に難しく、歌川国芳が猫の描き方を確立して初めて他の絵師も猫が描けるようになった、という説があります。馬を描くときはどんなところが難しいですか?
A 浮世絵師だとそうなんですかね。鳥獣戯画にも実に絵としてキマった猫が出てきますから、画工も入れると猫の歴史は遡れそうです。猫が難しいのは、目の正面性と、口の側面性(突出具合)の加減が微妙なのと、頬のたるませ具合にまたコツが要りますね。身体もグニャグニャしていて、キマり所を見つけづらいし。その点、馬は引き締まっているから形は取りやすいし、描き映えがしますね。眼とその周辺の形態は、上面、正面、側面の交わるところで、私などは苦労します。
A 浮世絵師だとそうなんですかね。鳥獣戯画にも実に絵としてキマった猫が出てきますから、画工も入れると猫の歴史は遡れそうです。猫が難しいのは、目の正面性と、口の側面性(突出具合)の加減が微妙なのと、頬のたるませ具合にまたコツが要りますね。身体もグニャグニャしていて、キマり所を見つけづらいし。その点、馬は引き締まっているから形は取りやすいし、描き映えがしますね。眼とその周辺の形態は、上面、正面、側面の交わるところで、私などは苦労します。
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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