ART
クラシカルな建築で、浮遊する宮島達男のデジタルカウンター|青野尚子の今週末見るべきアート
| Art | casabrutus.com | photo_Satoshi Nagare text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
首都圏の美術館では12年ぶりになる宮島達男の個展。『宮島達男 クロニクル 1995-2020』というタイトルの通り、彼の四半世紀の進化を探ります!
冷たく光るデジタルカウンターが淡々とカウントを続ける。パフォーマーが数字を叫ぶ――。宮島達男は「数」に焦点をあて、80年代から制作を続けてきたアーティストだ。一方、〈千葉市美術館〉は、1996年の開館記念展『Tranquility - 静謐』に宮島も参加していたという縁のある場所。その開館25周年を記念して、宮島の個展『宮島達男 クロニクル 1995-2020』が開かれている。
会場となる〈千葉市美術館〉はリニューアルを終えて7月に再オープンしている。もともと建物の7〜8階の2フロアを展示室としていたのだが、リニューアルに伴い、1階の「さや堂ホール」がメインエントランスとして機能することになった。「さや堂ホール」は1927年に建てられた旧川崎銀行千葉支店を保存したもの。古い建築を新しい建物でさやのように包み込む工法(鞘堂工法)から、この名前になった。天井高が8.4メートルにもなるダイナミックな空間だ。旧川崎銀行千葉支店は矢部又吉の設計とされている。新しい建物は大谷幸夫の設計だ。
闇に包まれた「さや堂ホール」に足を踏み入れると、赤、青、黄の三色に光る床にデジタルの数字が動き回っているのが見える。そのエリアに立つと、手や服の上でデジタル数字が浮遊する。《Floating Time》という作品タイトル通り、時間が浮遊していく作品だ。この「さや堂ホール」はリニューアル前にも時々、展示に使われていたが、今後はより積極的に使われていく予定だという。
今回の個展タイトルの「1995」は千葉市美術館の開館年だが、宮島にとっても転機になった年だ。1988年にヴェネチア・ビエンナーレ国際芸術祭で、主に若手にスポットをあてる「アペルト」部門に選ばれた宮島はこのころ世界各地で作品を発表、順調にキャリアを積み上げているように見えた。が、本人は当時を「スランプだった」と振り返る。
「デジタルカウンターの作品ばかり作っているような気がして、つまらなく感じていました。どこかにブレイクスルーする脱出口がないか、七転八倒していた」
今回の個展タイトルの「1995」は千葉市美術館の開館年だが、宮島にとっても転機になった年だ。1988年にヴェネチア・ビエンナーレ国際芸術祭で、主に若手にスポットをあてる「アペルト」部門に選ばれた宮島はこのころ世界各地で作品を発表、順調にキャリアを積み上げているように見えた。が、本人は当時を「スランプだった」と振り返る。
「デジタルカウンターの作品ばかり作っているような気がして、つまらなく感じていました。どこかにブレイクスルーする脱出口がないか、七転八倒していた」
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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