直木賞作家が語る、辰野金吾の偉業とは。
『カーサ ブルータス』2020年4月号より
March 24, 2020 | Architecture, Culture | a wall newspaper | text_Housekeeper
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1. ちぐはぐさが微笑ましい、日本初の大型建築【日本銀行本店】
砂場でお城を作る子どものような人間味が出ていて好きです。建設当時はガラス屋根から1階まで光が降り注いでいたそう。金吾は宗教建築の手法を使ったんじゃないでしょうか。せっかく立派なドームなのになぜか奥にあり、目立たないのも矛盾しています…。写真提供:日本銀行
砂場でお城を作る子どものような人間味が出ていて好きです。建設当時はガラス屋根から1階まで光が降り注いでいたそう。金吾は宗教建築の手法を使ったんじゃないでしょうか。せっかく立派なドームなのになぜか奥にあり、目立たないのも矛盾しています…。写真提供:日本銀行

2. 人生をかけた悲願の集大成【東京駅丸の内駅舎(中央停車場)】
日銀よりドームが目立つしデザインもまとまっている。努力したのがよくわかります。金吾は日本で最初の建築家であり、最後の様式建築家でもある。その様式建築 “滅びの第一楽章” である東京駅はそれ以上古くならないからこそ、逆に新しいままなんでしょうね。(c) Aflo
日銀よりドームが目立つしデザインもまとまっている。努力したのがよくわかります。金吾は日本で最初の建築家であり、最後の様式建築家でもある。その様式建築 “滅びの第一楽章” である東京駅はそれ以上古くならないからこそ、逆に新しいままなんでしょうね。(c) Aflo

3. 珍しく素朴で、好感が持てる【浜寺公園駅 旧駅舎】
当時とても賑わったリゾート地の最寄り駅として建てられたのですが、金吾にとっては縁もゆかりもない地域の頼まれ仕事。その上それまでの重厚な大型建築と真逆のコンセプトです。だからなのか、構えすぎない普段着の金吾が表れていて一番好感が持てます。
当時とても賑わったリゾート地の最寄り駅として建てられたのですが、金吾にとっては縁もゆかりもない地域の頼まれ仕事。その上それまでの重厚な大型建築と真逆のコンセプトです。だからなのか、構えすぎない普段着の金吾が表れていて一番好感が持てます。

4. 実は和風じゃない、辰野式和風建築【奈良ホテル】
数少ない和風建築と言われていますが、よく見るとかなり洋風。玄関でいきなり現れる大階段は『タイタニック』さながら。紳士淑女が一番綺麗に見える舞台装置の機能を応用したのだと思います。古都奈良の風景と西洋の要素が馴染んでいるのが金吾の凄いところ。
数少ない和風建築と言われていますが、よく見るとかなり洋風。玄関でいきなり現れる大階段は『タイタニック』さながら。紳士淑女が一番綺麗に見える舞台装置の機能を応用したのだと思います。古都奈良の風景と西洋の要素が馴染んでいるのが金吾の凄いところ。

5. 弟子への挑戦心によって作られた?【武雄温泉新館 楼門】
最も金吾らしくない和風の建物。内部には十二支のうち4つの干支が(残りの8つは東京駅に描かれている)。金吾は弟子の伊東忠太に西洋志向を反発されていたので、俺でも和風建築ができるんだ! という挑戦心からこれを設計したんじゃないか、と予想してます。
最も金吾らしくない和風の建物。内部には十二支のうち4つの干支が(残りの8つは東京駅に描かれている)。金吾は弟子の伊東忠太に西洋志向を反発されていたので、俺でも和風建築ができるんだ! という挑戦心からこれを設計したんじゃないか、と予想してます。