ARCHITECTURE
直木賞作家が語る、辰野金吾の偉業とは。
『カーサ ブルータス』2020年4月号より
March 24, 2020 | Architecture, Culture | a wall newspaper | text_Housekeeper
建築をこよなく愛する作家・門井慶喜さんに、新作の主人公である辰野金吾の見るべき名作を聞きました。
2018年、『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞した門井慶喜さん。ヴォーリズを描いた『屋根をかける人』や、共著『ぼくらの近代建築デラックス!』など、建築が舞台の作品を数多く発表しています。そして最新刊『東京、はじまる』の主人公に選んだのは、近代建築の父・辰野金吾。そんな建築好きの門井さんに、辰野金吾の魅力について聞きました。
── なぜ辰野金吾を主人公に?
門井 何もないところから何かを作る、その苦悩にとても共感できるからです。小説で一番大変なのは下書きで、ゼロから作る作業が一番時間と頭を使います。金吾が作った日本初の大型建築である日銀本店がまさにそれで、金吾にとっても、国家にとっても初めてのことでした。細かいところを見ると、デザインは不格好なまでに力が入っていてぎこちない。そういうものを見るにつけ、当時の金吾の試行錯誤が感じられて、何もない中でこれを完成するのがどれだけすごいことかと職業柄共感してしまいます。
── 建築を巡るとき、どんな視点を持っていますか?
門井 建築はストーリーの問題で、僕はそのストーリーは見る人が作ればいいって思うんです。美術や小説に比べて建築ファンの人口が少ないのは、ストーリーがわかりづらいからじゃないでしょうか。例えばレンブラントの絵を見れば、この人死にそうだ、ってすぐわかるでしょう。けれど建築はまず知識がないとわからない。もちろんあればより楽しめるのですが、それよりも建築家の人生や時代背景から、実はこうだったのかなとストーリーを作るとおもしろいです。
── 東京が舞台の作品を多く書かれている理由は?
門井 建築はいい作品があってもそれだけで終わってしまいがちです。しかし東京の建築は近代史と直結しているので、肉付けできるストーリーが豊富で小説として書きやすいからです。
── 他の建築家にはない金吾の人としての魅力は?
門井 甘えなかったこと。 今の時代の “好きなことを仕事にする” という考えは、彼には理解できないんじゃないかな。とにかく社会のためにやっていたから。主席卒業、国費留学までして必死に努力して、それがわかりやすく作品に出ている。つい応援したくなるんですよね。
── なぜ辰野金吾を主人公に?
門井 何もないところから何かを作る、その苦悩にとても共感できるからです。小説で一番大変なのは下書きで、ゼロから作る作業が一番時間と頭を使います。金吾が作った日本初の大型建築である日銀本店がまさにそれで、金吾にとっても、国家にとっても初めてのことでした。細かいところを見ると、デザインは不格好なまでに力が入っていてぎこちない。そういうものを見るにつけ、当時の金吾の試行錯誤が感じられて、何もない中でこれを完成するのがどれだけすごいことかと職業柄共感してしまいます。
── 建築を巡るとき、どんな視点を持っていますか?
門井 建築はストーリーの問題で、僕はそのストーリーは見る人が作ればいいって思うんです。美術や小説に比べて建築ファンの人口が少ないのは、ストーリーがわかりづらいからじゃないでしょうか。例えばレンブラントの絵を見れば、この人死にそうだ、ってすぐわかるでしょう。けれど建築はまず知識がないとわからない。もちろんあればより楽しめるのですが、それよりも建築家の人生や時代背景から、実はこうだったのかなとストーリーを作るとおもしろいです。
── 東京が舞台の作品を多く書かれている理由は?
門井 建築はいい作品があってもそれだけで終わってしまいがちです。しかし東京の建築は近代史と直結しているので、肉付けできるストーリーが豊富で小説として書きやすいからです。
── 他の建築家にはない金吾の人としての魅力は?
門井 甘えなかったこと。 今の時代の “好きなことを仕事にする” という考えは、彼には理解できないんじゃないかな。とにかく社会のためにやっていたから。主席卒業、国費留学までして必死に努力して、それがわかりやすく作品に出ている。つい応援したくなるんですよね。
語ってくれた人:門井慶喜(かどいよしのぶ)
1971年生まれ。2003年『キッドナッパーズ』でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。18年『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞。近代建築を巡る〈ブラカドイ〉主宰。
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