新連載:ニッポンのお宝、お蔵出し|ラブリーなわんこに会いに行こう! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

新連載:ニッポンのお宝、お蔵出し|ラブリーなわんこに会いに行こう!

季節に応じて床の間の軸を替えるように絵や彫刻を愛でる。今回は円山応挙の《朝顔狗子図杉戸》を紹介します。

円山応挙《朝顔狗子図杉戸》(部分/1784年、東京国立博物館蔵)。杉の戸に犬と朝顔だけが描かれている。
円山応挙《朝顔狗子図杉戸》(部分/1784年、東京国立博物館蔵)。杉の戸に犬と朝顔だけが描かれている。
日本美術、特に絵画は傷みやすいため、西洋美術と違って限られた期間にしか公開されません。ルーヴル美術館の《モナ・リザ》のようにいつもそこにあるわけではないので、展示されるチャンスを逃さないようにしたいもの。本連載では、今見るべき日本美術の至宝をご紹介!

◾️今回のお宝:円山応挙《朝顔狗子図杉戸》
◾️お宝ポイント:カメラのない時代に、よくもここまで。子犬がかわいく見える瞬間を捉えた応挙の鋭い観察力。
◾️公開期間:2018年1月2日〜28日
◾️公開場所:〈東京国立博物館〉本館 特別1室・特別2室


なんてラブリー&キュートなの! 抱き上げて思いっきりモフりたい。思わずそう叫んでしまう愛らしさだ。5匹の子犬が戯れる《朝顔狗子図杉戸》は江戸時代の絵師、円山応挙によるもの。応挙のトレードマークのようになっているこのかわいいわんちゃんに、〈東京国立博物館〉で1月2日から開かれている『博物館に初もうで 犬と迎える新年』展で会える。

応挙は写生の名手として知られた。子供のころ先生に「実物をよく観察して描きましょう」と教えられた人もいるだろうが、そのお手本のような人物だ。彼が残した、動植物などをスケッチした「写生帖」の中にはぱっと見ると押し花かな? と思うぐらいリアルに描かれたものもある。
円山応挙《朝顔狗子図杉戸》(部分/1784年、東京国立博物館蔵)。感情移入を誘う描写。「わんちゃん楽しそうねえ」と、人間の赤ちゃんのように話しかけたくなってしまう。
応挙の実物第一主義は中国絵画の影響が強い。たとえば応挙が生まれる少し前に中国から沈南蘋(しんなんぴん)が来日している。対象の隅々まできっちりと描き込むリアリズムは当時の日本画壇に大きなインパクトを与えた。応挙もこの沈南蘋を始めとする中国絵画を手本としていたようだ。

が、中国絵画に比べるとなぜか、応挙の子犬は圧倒的にかわいい。《朝顔狗子図杉戸》の犬の毛はふわふわしていていかにも柔らかそうだ。なによりも応挙は子犬がかわいく見える瞬間を見逃さない。足を投げ出してぺたっと座る、他の犬に頭を載せる、後ろ足で顔をかく、短い足を一生懸命伸ばして歩く。動作がいちいちけなげで、愛らしい。
円山応挙《朝顔狗子図杉戸》(部分/1784年、東京国立博物館蔵)。垂れた耳に同じく垂れ気味のつぶらな瞳。小さな歯もちゃんと描きこまれている。
笑ったように見える口元なんてもう最高だ。体全体が丸っこく見えるポーズや角度を選んでいるのも、かわいさに拍車を掛ける。それにしてもカメラのない時代に、四六時中じっとしていることのない子犬をよくもここまで観察したものだと感心する。

この絵は愛知にある〈明眼院〉というお寺の書院の、廊下の引き戸に描かれたもの。犬と朝顔は戸の下の方に描かれている。実際に廊下を歩いて行くと足元で犬がじゃれているように見えたかもしれない。日本でも犬は縄文時代から生活を共にしていたと言われている。戌年の始まりに、ぜひとも愛でたい逸品だ。

『博物館に初もうで 犬と迎える新年』

〈東京国立博物館〉本館 特別1室・特別2室。

東京都台東区上野公園13-9
TEL 03 5777 8600。2018年1月2日〜28日。9時30分~17時(金・土曜は~21時)。月曜休(1月8日は開館、1月9日は閉館)。620円。