石川県・能登半島の先端で歴史と人が交わるアート『奥能登国際芸術祭2020+』へ。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

石川県・能登半島の先端で歴史と人が交わるアート『奥能登国際芸術祭2020+』へ。

能登半島のさらに奥、先端にある石川県珠洲市で開かれている『奥能登国際芸術祭2020+』。「さいはて」の地に「最先端」のアートが集います。静かな海と山に歴史が積層する、特別な場所で見る作品は格別です。今年登場した新作を中心にご紹介します。

石川直樹《奥能登半島/珠洲全景》。海辺に珠洲市の家や蔵から出てきた家具や家電が並べられている。人々の少し前の暮らしを思わせる。 photo_Naoki Ishikawa
北陸から佐渡島に向かって突き出しているような能登半島。かつて大陸から渡ってくる人や文化は能登半島に上陸し、ここから日本各地に拡散していった。また北海道から北陸、瀬戸内海を経て大阪・堺に物資を運ぶ北前船の寄港地としても栄えた。海路にかわって陸路が中心となった今では一見、「最涯(さいはて)」のように感じられるが、長い間日本列島の中でも最先端をいく地だったのだ。

ここで開かれる「奥能登国際芸術祭」は今回で2回目。2017年に開かれた1回目の作品の中には恒久設置されているものもあり、さらに充実したアート体験ができる。
メキシコの作家、カルロス・アモラレスの《黒い雲の家》。空き家の壁や床にびっしりと黒い蝶がとまっている。作家の祖母が亡くなったときの思い出が作品のインスピレーション源になっているという。 photo_Kichirō Okamura
カールステン・ニコライ《Autonomo》。テニスボール送球機から飛び出したボールが円盤や壁にあたって音をたてる。閉鎖された保育所で子どもたちが遊んでいた記憶が甦る。 photo_Kichirō Okamura
ディラン・カク《😂》。電車の来ない駅のホームに座ってスマホに夢中の猿。駅舎には絵はがきが並んで、珠洲のゆったりした時間の流れのようなコミュニケーションを、と呼びかける。 photo_Kichirō Okamura
その能登半島の、海沿いに作られた道を車で走っていくと山が近くに迫る。山林はきれいに手入れされていて、真っ直ぐに伸びた木が並ぶ。山の道沿いにはときどき小さな階段が現れ、上には祠や鳥居が見える。街中や、田や畑の奥にも神社が点在する。ここに住む人々が土地を大切に守ってきた証だ。
〈スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」〉より、南条嘉毅《余光の海》。珠洲の家々に残されていた器や民具が安部海太郎の音楽に合わせて歌い、踊るかのようなインスタレーション。 photo_Keizo Kioku
〈スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」〉には昔懐かしいブラウン管のテレビやオーディオの姿も見える。 photo_Keizo Kioku
〈スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」〉より、美術作家・鈴木泰人、建築家・本間智美、映像作家・水野祐介の 3 人組ユニット〈OBI〉による《ドリフターズ》。「ヨバレ」で使われた赤御膳などが整然と並ぶ。 photo_Keizo Kioku
〈スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」〉より、久野彩子《静かに佇む》。使われなくなった農具に、その由来や町の風景を思わせる金の細工が施される。 photo_Keizo Kioku
その歴史は山や神社だけでなく、人々の家の中にも眠っている。古い家々の蔵には家具や什器が大切にしまわれ、残されている。中には「ヨバレ」という風習で使われた立派な赤御膳なども。〈スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」〉では「珠洲の大蔵ざらえ」として、地域の人たちからさまざまな生活の道具を集め、道具が歌い踊るかのようなシアター状のミュージアムに仕立てた。周囲には久野彩子ら複数の異なる作家による小部屋があり、それぞれが長年働いてきた道具へオマージュを捧げている。構成には〈国立歴史民俗博物館〉の川村清志がアドバイザーとして参加した。既存のミュージアムとは違う形で珠洲の民俗文化を楽しめる。
石川直樹《奥能登半島/珠洲全景》展示風景。キリコ祭りや「あえのこと」などをとらえた写真が並ぶ。 photo_Kichirō Okamura
石川直樹作品。彼はここ5年ほど現地に通い、珠洲の人々の暮らしを見つめてきた。 photo_Kichirō Okamura
能登には「あえのこと」という神事がある。豊作を願って正月に田の神様を迎えてもてなすという行事だ。面白いのは「夫婦で来る」という田の神は目に見えない存在であること。田から神を迎え、御膳の料理を説明し、風呂に案内し、最後にまた田にお送りして豊作をお願いするという一連の儀式は、端から見ていると迎える人間がひとりで行っているように見える。
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