安藤忠雄の最新作、ついにオープン! パリの現代美術館〈ブルス・ドゥ・コメルス〉、その全貌にせまる。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

安藤忠雄の最新作、ついにオープン! パリの現代美術館〈ブルス・ドゥ・コメルス〉、その全貌にせまる。

待ちに待った安藤忠雄の新作。ピノー財団の現代美術コレクションを納めた美術館が、ようやくオープニングを迎えました。フランソワ・ピノーとの20年越しの数々の挑戦を経て、パリの中心部に完成したのは、過去と現代が対峙し、対話する、壮大なアートの殿堂です。

18世紀の建物の中には、安藤忠雄によるコンクリートの円形の空間「ロトンダ」が収められた。そのロトンダの周りには3フロアに渡り、展示室が展開されている。
〈ブルス・ドゥ・コメルス〉と言う名の円い建物が、パリの中心、レアール近くにある。18世紀には穀物取引場、1889年のパリ万博の際にガラスのドームが加えられ美しい姿に再構築されて、19世紀末からは商品取引所となっていたが、21世紀になって、デジタル化で役目を終えていた。そんな歴史的建造物がパリ市長からフランソワ・ピノーにオファーされたのは、2015年のことだ。グッチ、サンローラン、バレンシアガなどを抱える世界的ラグジュアリーグループ「ケリング」の創業者であるピノーは、半世紀に渡って、1万点以上の現代アートを収集してきていたが、パリで自らのコレクションを披露する美術館を開くことを夢見ていた。
〈ブルス・ドゥ・コメルス〉正面ファサード。1889年のパリ万博に際しての改造時に作られた、コリント風の円柱と、アリスティッド・クロワジーによる彫刻が華麗な入り口だ。
ピノーのパリでの美術館計画といえば、20年前に、セーヌ川の中州セガン島のプロジェクトが難航し中止になったというエピソードがある。この計画は安藤忠雄がコンペを勝ち取り設計を手掛けていたのだが、挫折を経たのち、安藤とピノーのペアは、ヴェネチアで〈パラッツォ・グラッシ〉と〈プンタ・デ・ラ・ドガーナ〉の2つの美術館を作り上げた。そしてようやく〈ブルス・ドゥ・コメルス〉で、パリ凱旋の夢が現実となったのだ。

本来なら昨年オープンを予定し、工事も終わったところでコロナ禍が襲い、何度も延期を余儀なくされていたが、昨秋来の美術館の一斉閉館がやっと解除になり、2021年5月22日、開館の日を迎えた。
レストランのある4階の窓から、安藤作のコンクリートのシリンダーを見下ろす。
コンクリートのシリンダーの外側に、各フロアをつなぐ階段がある。登って行くと、外側の歴史的建造物の装飾と、安藤独特の美しく静かなコンクリートが呼応する様子が、フロアごとに変化して行く。
穀物市場だった時代に、上りと下りがぶつからないようにと作られた、二重螺旋階段。照明は、デザイナーのロナン&エルワン・ブルレック兄弟によるもの。
円筒形の建物の、西洋の歴史的な装飾に満ちた巨大なドームの中の吹き抜けの空間にすっぽりと、安藤は鉄筋コンクリートの円筒を収めてみせた。高さ9m、直径29mの安藤の円の空間に入ると、大理石のように美しいシリンダーの内側は静謐に満ちている。頭上にはガラスのドームから注ぐ光の環が広がり、ドームを囲む天井画や、コンクリートの開口部から垣間見える外側の壁面の歴史的な装飾と対峙しつつ、対話しているようだ。安藤はインタビューに答えてこう語っている。

「私のミッションは、歴史的建造物に指定されているこの建物を直に介入することなく、美術館に変貌させることでした。同心円の構成をとり、新しいものと古いものとの間に活発な対話を成立させ、現代アートのための生命力に満ちた空間をつくる。過去・現在・未来の時間の糸をつなぎ、芸術とも対話する空間を作りたいと考えました」

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